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第39話 閑話 温泉宿にて
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時は少し遡り、温泉街でミナ達が泊まったホテルでの深夜の出来事。
ミナの部屋の前には、シャロン、アリシア、マリーの変態3人衆がコッソリ集まっていた。ドアノブには「起こさないで下さい」の札が下がっているが、そんなことを気にする変態さん達ではない。
変態1号ことシャロンがマスターキーを取り出す。彼女の実家が経営しているホテルだ。マスターキーを手に入れることなど造作も無い。
「行きますわよ。アリシアさん、手筈通りに」
シャロンが声を潜めて囁く。
「オッケーで~す」
変態2号ことアリシアが囁き返す。その間、変態3号ことマリーは辺りを警戒する。シャロンは音がしないよう慎重にキーを回す。カチリと小さい音がしてロックが外れる。ソーっと扉を開ける。
「「「 っ! 」」」
室内に入った瞬間、変態さん達が声にならない悲鳴を上げた。仄かに灯りが点っていたからだ。まだ起きている!? 変態さん達が戦慄していると、規則正しい寝息が聞こえて来た。
足を忍ばせてベッドに近付く。すると枕元にあるブックライトが点っていて、すぐ近くに本が開いたまま置いてある。どうやら本を読みながら寝落ちしたようだ。変態さん達は安堵した。
『サイレント』
アリシアは手筈通り、ミナが寝ているベッドの周りに遮音結界を張った。
「ふぅ~ もう普通に話しても大丈夫ですよ~」
「ご苦労様でした。ではまずは天使の寝顔を拝見」
シャロンはヨダレを溢さんばかりの恍惚とした顔で、ミナの寝顔を覗き込む。
「しゃ、シャロン様、近過ぎです!」
息か掛かる距離まで近付いてしまったら、遮音結界を張った意味が無い。アリシアは慌ててシャロンを引っ張る。
「あら、私としたことが、ごめんあそばせ」
「シャロン様! ありました!」
それまで無言で何かを探していたマリーが興奮している。ミナのカバンの中にお目当てのモノを見付けたようだ。
「まだ濡れています!」
それはミナの使用済みの水着だった。マリーは貴重な宝物を扱うように水着を取り出す。
「「 おぉ~! 」」
シャロンとアリシアが興奮して寄って来る。シャロンが受け取りしげしげと眺めた後、ハタと気付く。ブラの紐が切れたこの水着はもう着れない。ということは、
これ、貰ってもいいんじゃね?
シャロンがそっと懐に仕舞おうとした腕をアリシアとマリーがガシッと掴む。
「シャロン様、抜け駆けは禁止ですよ」
「シャロン様、一人占めは許せません」
「お黙りっ! 小娘どもっ!」
変態さん達が仲間割れを始めた。
「う~ん...ムニャムニャ...」
「「「 っ! 」」」
いくら遮音結界を張っていても声が高過ぎたのか、ミナが目覚めた。慌てた変態さん達はそれぞれベッドの下に潜り込んだり、カーテンの裏に隠れたり、クローゼットの中に隠れたりした。
「あれ? 灯り点けっ放しで寝ちゃったのか...うぅ、トイレ、トイレ」
ミナがトイレに立ったのを見た変態さん達は、光の速さでミナの部屋を後にした。シャロンはミナの水着を握り締めたまま...
◇◇◇
変態さん達がミナの部屋を抜け出した直後、アルベルトはコッソリとミナの部屋に向かっていた。夜這いを掛けるためだ。昼間見たミナの肢体が忘れられず、この時間まで悶々と過ごしていたがもう限界だった。
婚約者であるシャロンにバレたら殺されるだろうが、今のアルベルトは理性よりもオスの本能で動いていた。バレたらバレたでその時はその時だとばかりに開き直ってもいた。もう少しでミナの部屋に着くというその時、
「「 あっ... 」」
向こうからやって来るエリオットと目が合い、お互い呆けた声を漏らす。
「えっ?」
更にその奥からシルベスターがビックリしたような顔を覗かしていた。その時、ミナの部屋から、バタン、ジャーっという音がした。ミナがトイレから出た音である。
「「「 っ! 」」」
てっきり寝ていると思ったミナがまだ起きていることに慌てた3人は、取り敢えず一番近いアルベルトの部屋に向かった。部屋に入った途端、アルベルトに非難が集中する。
「見損ないましたよ殿下、婚約者が居る身でありながら、堂々と浮気しようだなんて」
「シャロン様に悪いと思わないんですか?」
「お、お前らだって夜這いしようとしてたじゃないか!」
「僕達はまだ婚約者居ませんけど?」
「そうですよ、殿下はシャロン様と乳繰り合っていればいいじゃないですか」
「そうそう、あんなに魅力的な婚約者がいらっしゃるんですから。僕は全く興味ありませんけど」
「ボクもです。微塵も興味がありません」
「お前ら、何気に酷くないか!?」
その後もなんやかやとギャアギャア騒ぎながら、男同士の夜は更けていったとさ。
◇◇◇
一方その頃、シャロンの部屋に集まった変態さん達はと言うと、戦利品であるミナの水着を前にして見苦しい争いを繰り広げていた。
「ミナ・オークションを開催しますわ!」
「ブーブーッ! そんなのシャロン様の1人勝ちに決まってるじゃないですかっ!」
「権力の横暴は許せませんっ! 革命を起こしますよ!?」
「お黙りっ! 小童どもっ!」
「ジャンケンで決めればいいじゃないですかっ!」
「いいえ、ここはやっぱり阿弥陀籤がいいと思います!」
「それじゃ私から最初の金額をスタートするわね。う~ん...やっぱり最初は無難に100万ペイルから行こうかしら?」
「全然無難じゃないし! 最初から学生に払える金額じゃないし! 私達の意見をまるっと無視してるし! もうどっから突っ込んだらいいんだかっ!」
「アリシアさん、もうこの人無視して私達で山分けしましょう!」
「いいねマリーさん、そうしよう! ビキニだから2つに分けられるしね!」
「待たんかいこらっ! 勝手に決めてんじゃねぇ!」
「マリーさんは上と下どっちが良い?」
「私は出来れば下が欲しいです」
「あら、私も下が欲しいからジャンケンしよっか?」
「いえ、ここはやはり阿弥陀籤で」
「聞けやお前らぁ~!」
変態さん達の賑やかな夜はまだまだ続く。
◇◇◇
次の日、ちょうど昼食の時間を見計らってミナはソーっと部屋を出た。キョロキョロと辺りを見回す。
「右良し、左良し、良し、いざ行かん!」
そう、せっかく温泉に来たんだから心ゆくまでゆっくり浸かりたいと思ったのだ。変態どもに邪魔されることなく、男子どもにラッキースケベを提供することもなく、ただのんびりと。
「ハァ~ 極楽極楽~♪」
誰も居ない大浴場をたっぷりと堪能した。そして湯上がりと言えば定番の、
「ゴクゴク、プハァ~ やっぱり湯上がりはこれだよね~♪」
コーヒー牛乳を一気飲みしたり、マッサージチェアに揺られたりと、思う存分温泉気分を満喫した。
「さて、名残惜しいけど、そろそろ戻るかな」
そろそろ昼食が終わってみんなも動き出す頃だろう。誰とも顔を合わせたくないので部屋に戻ることにした。
「み、ミナっ!? 風呂に入ってたのか!?」
そう思ってたのに、いきなり男性陣と廊下で遭遇した。途端に3人とも顔が赤くなる。ミナも気不味くなって目を反らす。と、そこで自分の格好に気付いた。前世で言う所の浴衣に似たバスローブ姿は、自分で言うのもなんだが扇情的かも知れない。
「え、えぇ、まあ...それじゃ失礼しますね...」
そう言って脇をすり抜けようとしたが、普通の女子ならちょうど良いサイズのバスローブも、ミナにとっては丈が長い。引き摺るように歩いていたらコケた。
「ミギャッ!」
コケた拍子にバスローブがめくれ上がってミナの太股が顕に。胸元もヤバい感じに肌蹴た。
「「「 ブッホォォォッ! 」」」
色々と溜まっていた男性陣が鼻血を高々と吹き上げた。
「イヤァァァッッッ!!!」
そして今日もミナの悲鳴が轟くのだった。
ミナの部屋の前には、シャロン、アリシア、マリーの変態3人衆がコッソリ集まっていた。ドアノブには「起こさないで下さい」の札が下がっているが、そんなことを気にする変態さん達ではない。
変態1号ことシャロンがマスターキーを取り出す。彼女の実家が経営しているホテルだ。マスターキーを手に入れることなど造作も無い。
「行きますわよ。アリシアさん、手筈通りに」
シャロンが声を潜めて囁く。
「オッケーで~す」
変態2号ことアリシアが囁き返す。その間、変態3号ことマリーは辺りを警戒する。シャロンは音がしないよう慎重にキーを回す。カチリと小さい音がしてロックが外れる。ソーっと扉を開ける。
「「「 っ! 」」」
室内に入った瞬間、変態さん達が声にならない悲鳴を上げた。仄かに灯りが点っていたからだ。まだ起きている!? 変態さん達が戦慄していると、規則正しい寝息が聞こえて来た。
足を忍ばせてベッドに近付く。すると枕元にあるブックライトが点っていて、すぐ近くに本が開いたまま置いてある。どうやら本を読みながら寝落ちしたようだ。変態さん達は安堵した。
『サイレント』
アリシアは手筈通り、ミナが寝ているベッドの周りに遮音結界を張った。
「ふぅ~ もう普通に話しても大丈夫ですよ~」
「ご苦労様でした。ではまずは天使の寝顔を拝見」
シャロンはヨダレを溢さんばかりの恍惚とした顔で、ミナの寝顔を覗き込む。
「しゃ、シャロン様、近過ぎです!」
息か掛かる距離まで近付いてしまったら、遮音結界を張った意味が無い。アリシアは慌ててシャロンを引っ張る。
「あら、私としたことが、ごめんあそばせ」
「シャロン様! ありました!」
それまで無言で何かを探していたマリーが興奮している。ミナのカバンの中にお目当てのモノを見付けたようだ。
「まだ濡れています!」
それはミナの使用済みの水着だった。マリーは貴重な宝物を扱うように水着を取り出す。
「「 おぉ~! 」」
シャロンとアリシアが興奮して寄って来る。シャロンが受け取りしげしげと眺めた後、ハタと気付く。ブラの紐が切れたこの水着はもう着れない。ということは、
これ、貰ってもいいんじゃね?
シャロンがそっと懐に仕舞おうとした腕をアリシアとマリーがガシッと掴む。
「シャロン様、抜け駆けは禁止ですよ」
「シャロン様、一人占めは許せません」
「お黙りっ! 小娘どもっ!」
変態さん達が仲間割れを始めた。
「う~ん...ムニャムニャ...」
「「「 っ! 」」」
いくら遮音結界を張っていても声が高過ぎたのか、ミナが目覚めた。慌てた変態さん達はそれぞれベッドの下に潜り込んだり、カーテンの裏に隠れたり、クローゼットの中に隠れたりした。
「あれ? 灯り点けっ放しで寝ちゃったのか...うぅ、トイレ、トイレ」
ミナがトイレに立ったのを見た変態さん達は、光の速さでミナの部屋を後にした。シャロンはミナの水着を握り締めたまま...
◇◇◇
変態さん達がミナの部屋を抜け出した直後、アルベルトはコッソリとミナの部屋に向かっていた。夜這いを掛けるためだ。昼間見たミナの肢体が忘れられず、この時間まで悶々と過ごしていたがもう限界だった。
婚約者であるシャロンにバレたら殺されるだろうが、今のアルベルトは理性よりもオスの本能で動いていた。バレたらバレたでその時はその時だとばかりに開き直ってもいた。もう少しでミナの部屋に着くというその時、
「「 あっ... 」」
向こうからやって来るエリオットと目が合い、お互い呆けた声を漏らす。
「えっ?」
更にその奥からシルベスターがビックリしたような顔を覗かしていた。その時、ミナの部屋から、バタン、ジャーっという音がした。ミナがトイレから出た音である。
「「「 っ! 」」」
てっきり寝ていると思ったミナがまだ起きていることに慌てた3人は、取り敢えず一番近いアルベルトの部屋に向かった。部屋に入った途端、アルベルトに非難が集中する。
「見損ないましたよ殿下、婚約者が居る身でありながら、堂々と浮気しようだなんて」
「シャロン様に悪いと思わないんですか?」
「お、お前らだって夜這いしようとしてたじゃないか!」
「僕達はまだ婚約者居ませんけど?」
「そうですよ、殿下はシャロン様と乳繰り合っていればいいじゃないですか」
「そうそう、あんなに魅力的な婚約者がいらっしゃるんですから。僕は全く興味ありませんけど」
「ボクもです。微塵も興味がありません」
「お前ら、何気に酷くないか!?」
その後もなんやかやとギャアギャア騒ぎながら、男同士の夜は更けていったとさ。
◇◇◇
一方その頃、シャロンの部屋に集まった変態さん達はと言うと、戦利品であるミナの水着を前にして見苦しい争いを繰り広げていた。
「ミナ・オークションを開催しますわ!」
「ブーブーッ! そんなのシャロン様の1人勝ちに決まってるじゃないですかっ!」
「権力の横暴は許せませんっ! 革命を起こしますよ!?」
「お黙りっ! 小童どもっ!」
「ジャンケンで決めればいいじゃないですかっ!」
「いいえ、ここはやっぱり阿弥陀籤がいいと思います!」
「それじゃ私から最初の金額をスタートするわね。う~ん...やっぱり最初は無難に100万ペイルから行こうかしら?」
「全然無難じゃないし! 最初から学生に払える金額じゃないし! 私達の意見をまるっと無視してるし! もうどっから突っ込んだらいいんだかっ!」
「アリシアさん、もうこの人無視して私達で山分けしましょう!」
「いいねマリーさん、そうしよう! ビキニだから2つに分けられるしね!」
「待たんかいこらっ! 勝手に決めてんじゃねぇ!」
「マリーさんは上と下どっちが良い?」
「私は出来れば下が欲しいです」
「あら、私も下が欲しいからジャンケンしよっか?」
「いえ、ここはやはり阿弥陀籤で」
「聞けやお前らぁ~!」
変態さん達の賑やかな夜はまだまだ続く。
◇◇◇
次の日、ちょうど昼食の時間を見計らってミナはソーっと部屋を出た。キョロキョロと辺りを見回す。
「右良し、左良し、良し、いざ行かん!」
そう、せっかく温泉に来たんだから心ゆくまでゆっくり浸かりたいと思ったのだ。変態どもに邪魔されることなく、男子どもにラッキースケベを提供することもなく、ただのんびりと。
「ハァ~ 極楽極楽~♪」
誰も居ない大浴場をたっぷりと堪能した。そして湯上がりと言えば定番の、
「ゴクゴク、プハァ~ やっぱり湯上がりはこれだよね~♪」
コーヒー牛乳を一気飲みしたり、マッサージチェアに揺られたりと、思う存分温泉気分を満喫した。
「さて、名残惜しいけど、そろそろ戻るかな」
そろそろ昼食が終わってみんなも動き出す頃だろう。誰とも顔を合わせたくないので部屋に戻ることにした。
「み、ミナっ!? 風呂に入ってたのか!?」
そう思ってたのに、いきなり男性陣と廊下で遭遇した。途端に3人とも顔が赤くなる。ミナも気不味くなって目を反らす。と、そこで自分の格好に気付いた。前世で言う所の浴衣に似たバスローブ姿は、自分で言うのもなんだが扇情的かも知れない。
「え、えぇ、まあ...それじゃ失礼しますね...」
そう言って脇をすり抜けようとしたが、普通の女子ならちょうど良いサイズのバスローブも、ミナにとっては丈が長い。引き摺るように歩いていたらコケた。
「ミギャッ!」
コケた拍子にバスローブがめくれ上がってミナの太股が顕に。胸元もヤバい感じに肌蹴た。
「「「 ブッホォォォッ! 」」」
色々と溜まっていた男性陣が鼻血を高々と吹き上げた。
「イヤァァァッッッ!!!」
そして今日もミナの悲鳴が轟くのだった。
応援ありがとうございます!
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