乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

真理亜

文字の大きさ
61 / 176

第61話 ミナの日常 その3

しおりを挟む
 学園祭が近付いてきた。


 その準備をするため学園中が慌ただしくなっている。ウチのクラスも例外ではなく、衣装の仮縫いやメニュー決めやらで忙しくなっていた。

 かく言うアタシもついこの間採寸された。ウチのクラスの催し物であるアニマル喫茶のウエイトレスの衣装を作るためだ。非常に不本意ながらも、クラスの女子全員が参加すると言われて逃げられなかった。
 
 まぁ仕方無い。恥ずかしいけどみんなでやれば怖くない...といいな。ただなるべくならあんまり知り合いには見られたくはないなぁ。仲間達とか。あと特に身内とか。

 一応家族に招待状は送ったけど、まぁ王都から遠いし両親は来ないだろう。来るとしても弟くらいかな。アイツ最近、生意気になってきたから、アタシの格好見たら揶揄ってくるだろうなぁ。そしたらシメるけどな!


◇◇◇  


 今日、訓練はお休み。殿下とシャロン様が公務で不在だからだ。残ったメンバーだけでやれないことはないけど、せっかくだから休みを取ろうってことになった。まぁ疲れが溜まってる人も居るしね。

 そんな訳で今日の放課後は、久し振りに街へ繰り出してスイーツでも食べようって話になった。いつもの四人組と一緒に街へ来ている。お目当ては今、街で一番人気のスイーツのお店だ。行列が出来るくらい大人気のお店と聞いてやって来た。早速列に並ぶ。

 最近になってアタシの警備体制が緩和された。それまでは外出する度に申請が必要だったが、それはもうしなくて良くなった。精霊の加護に加えて神獣まで側に居るアタシに、ちょっかい出そうなんて輩はそうそう居ないだろうとの判断だとか。まぁ確かに誰が来ても返り討ちに合って終わりだろうね。

 店に入る前、店員の女の子にナギのことを説明した。飲食店だと普通はペット禁止だからね。神獣と聞かされた女の子は最初ビックリしていた。まぁ当然だよね。初めて見たんだから。その後は「可愛い!」を連発して上機嫌でアタシ達を席に案内してくれた。

 注文したスイーツはどれも絶品だった。さすがに一番人気だけのことはある。ナギも全員から「あ~ん♪」攻撃を受けてご機嫌だ。そんな中、騒ぎが起こった。

 店の前で騒いでる男がいる。やたら布の少ないドレスを着た、娼婦みたいな女を侍らせている。

「いつまで待たせるんだ! この俺様を誰だと思ってる!」

 どうやら貴族らしい。この店は貴族街に近い所にあるから、貴族が来店しても不思議ではないだろう。だが少し待たされたくらいで騒ぐなんて大人気ない。いくら貴族でもこういう態度は戴けない。詰め寄られたのは、さっきアタシ達を案内してくれた女の子だ。可哀想に涙目になってしまった。

 仕方無い、ここはアタシが貴族の端くれとしてビシッと一言...ってあれ?

「な、ナギ!?」

 いつの間にかナギが、女の子を庇うように、男との間に割って入っていた。しかも人間サイズの大きさになって...

「キュイ~!」

 いつもより低い声で騒ぐ男を威嚇すると、

「ヒイイイッ! お、お助け~!」

「ちょ、ちょっと! 置いてかないでよ~!」

 男は女に目もくれず一目散に逃げて行ったとさ。

「ナギ...あなたもしかして自由に体のサイズを変えられるの?」

 女の子が涙を流してお礼を言ったり、四人組が「ナギちゃん、すご~い!」「体がフリーサイズ!」と称賛してたりしているが、アタシはそんなことよりもナギの変化に目を奪われていた。

「キュイ~♪」

 ナギが得意気に鳴く。なんだか誇らしそうだ。確かに凄い能力だと思う。だがアタシが一番気になったのは...

「ねぇ、ナギ。あなたちょっと太ったよね?」

 そう、お腹がぽっちゃりしている。

「きゅ、キュイ!?」

 ナギは慌てて首を横に振っているが、お腹に触るとたぷたぷしてる。そりゃそうだろうな。あれだけ食っちゃ寝してたらそうなるわ。アタシ達が汗水垂らして訓練してる時だって丸くなって寝てるし。

「明日からダイエットしようか♪」  

「キュイ~...」

 悲し気に鳴くが、ここは心を鬼にする。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

処理中です...