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第61話 ミナの日常 その3

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 学園祭が近付いてきた。


 その準備をするため学園中が慌ただしくなっている。ウチのクラスも例外ではなく、衣装の仮縫いやメニュー決めやらで忙しくなっていた。

 かく言うアタシもついこの間採寸された。ウチのクラスの催し物であるアニマル喫茶のウエイトレスの衣装を作るためだ。非常に不本意ながらも、クラスの女子全員が参加すると言われて逃げられなかった。
 
 まぁ仕方無い。恥ずかしいけどみんなでやれば怖くない...といいな。ただなるべくならあんまり知り合いには見られたくはないなぁ。仲間達とか。あと特に身内とか。

 一応家族に招待状は送ったけど、まぁ王都から遠いし両親は来ないだろう。来るとしても弟くらいかな。アイツ最近、生意気になってきたから、アタシの格好見たら揶揄ってくるだろうなぁ。そしたらシメるけどな!


◇◇◇  


 今日、訓練はお休み。殿下とシャロン様が公務で不在だからだ。残ったメンバーだけでやれないことはないけど、せっかくだから休みを取ろうってことになった。まぁ疲れが溜まってる人も居るしね。

 そんな訳で今日の放課後は、久し振りに街へ繰り出してスイーツでも食べようって話になった。いつもの四人組と一緒に街へ来ている。お目当ては今、街で一番人気のスイーツのお店だ。行列が出来るくらい大人気のお店と聞いてやって来た。早速列に並ぶ。

 最近になってアタシの警備体制が緩和された。それまでは外出する度に申請が必要だったが、それはもうしなくて良くなった。精霊の加護に加えて神獣まで側に居るアタシに、ちょっかい出そうなんて輩はそうそう居ないだろうとの判断だとか。まぁ確かに誰が来ても返り討ちに合って終わりだろうね。

 店に入る前、店員の女の子にナギのことを説明した。飲食店だと普通はペット禁止だからね。神獣と聞かされた女の子は最初ビックリしていた。まぁ当然だよね。初めて見たんだから。その後は「可愛い!」を連発して上機嫌でアタシ達を席に案内してくれた。

 注文したスイーツはどれも絶品だった。さすがに一番人気だけのことはある。ナギも全員から「あ~ん♪」攻撃を受けてご機嫌だ。そんな中、騒ぎが起こった。

 店の前で騒いでる男がいる。やたら布の少ないドレスを着た、娼婦みたいな女を侍らせている。

「いつまで待たせるんだ! この俺様を誰だと思ってる!」

 どうやら貴族らしい。この店は貴族街に近い所にあるから、貴族が来店しても不思議ではないだろう。だが少し待たされたくらいで騒ぐなんて大人気ない。いくら貴族でもこういう態度は戴けない。詰め寄られたのは、さっきアタシ達を案内してくれた女の子だ。可哀想に涙目になってしまった。

 仕方無い、ここはアタシが貴族の端くれとしてビシッと一言...ってあれ?

「な、ナギ!?」

 いつの間にかナギが、女の子を庇うように、男との間に割って入っていた。しかも人間サイズの大きさになって...

「キュイ~!」

 いつもより低い声で騒ぐ男を威嚇すると、

「ヒイイイッ! お、お助け~!」

「ちょ、ちょっと! 置いてかないでよ~!」

 男は女に目もくれず一目散に逃げて行ったとさ。

「ナギ...あなたもしかして自由に体のサイズを変えられるの?」

 女の子が涙を流してお礼を言ったり、四人組が「ナギちゃん、すご~い!」「体がフリーサイズ!」と称賛してたりしているが、アタシはそんなことよりもナギの変化に目を奪われていた。

「キュイ~♪」

 ナギが得意気に鳴く。なんだか誇らしそうだ。確かに凄い能力だと思う。だがアタシが一番気になったのは...

「ねぇ、ナギ。あなたちょっと太ったよね?」

 そう、お腹がぽっちゃりしている。

「きゅ、キュイ!?」

 ナギは慌てて首を横に振っているが、お腹に触るとたぷたぷしてる。そりゃそうだろうな。あれだけ食っちゃ寝してたらそうなるわ。アタシ達が汗水垂らして訓練してる時だって丸くなって寝てるし。

「明日からダイエットしようか♪」  

「キュイ~...」

 悲し気に鳴くが、ここは心を鬼にする。



 
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