乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

真理亜

文字の大きさ
97 / 176

第97話 ちみっこと隣国の王子 その8

しおりを挟む
 物陰からじっとこちらを見詰めるあの視線には見覚えがある。

 出会った頃のシルベスターにそっくりだ。あれってやっぱり某RPGよろしく「仲間に入りたそうにしている」んだろうなぁ...仕方ない。一肌脱ぎますか。アタシにも多少の負い目があるしね。

「あ、すいません。ちょっとお花を摘みに。オホホホ」

 さりげなく席を外す...つもりが、ちょっとあざと過ぎたのか、みんなからの視線が痛い。ま、まぁ気にしないでおこう。ここで「じゃあ私も」とか言われなくて良かったよ。

 王子にチラッと目をやりながら、わざと人気の無い場所に向かう。付いて来ているのを確認してからやおら振り向く。

「今日は制服なんですね?」

「...気付いてたのか...」

「そりゃあ、王子は目立ちますから」

 主に猫耳と尻尾がね。ちなみにズボンってどうなってんだろ? 尻尾を通す穴が開いてんのかな?

「元に戻ったようでなによりです。それで? 私になにかご用でしょうか?」

「あ、あぁ、その...悪かった...」

「へっ!?」

「初対面でいきなり暴言を吐いたことを謝りたい。済まなかった...」

「あぁ、はいはい、あの時の。いいんですよ、もう気にしてません」

 猫耳が完全に垂れ下がってるもんね。本当に申し訳なく思っているんだろうから。

「...そう言って貰えると助かる」

「じゃあ私はこれで」

「あ、ちょっと待ってくれ...」

「まだなにか?」

 午後の授業始まっちゃうから早くして。

「その...頼みがあるんだ。俺様はもっと強くなりたい。協力してくれないか?」

「なんで私に?」

 意味が分からん。

「アルベルトから聞いた。お前が...ミナがみんなを強くしたんだって」

「いやいやそんな、買いかぶり過ぎですよ。強くなったのは、みんながそれぞれ地道に努力した結果であって、私は何もしてないですよ?」

 まぁ、みんなが精霊と契約した時には、多少なりとも貢献したかも知れないけどさ。それだってみんなが自分達の力で試練を乗り越えたって前提があった訳だし、私はキッカケになっただけなんだよね。そしてその後、みんなが強くなったのは、間違いなく努力したからこそなんだよ。

「だが今現在、ミナがみんなのリーダーなんだろ?」

「えぇ、まぁ、それは...」

 戦闘の時限定だけどね。普段は殿下がリーダーだし。

「そのリーダーとしての目線で俺様を鍛えて欲しい」

「...なんでそんなに強くなりたいんです?」

「このままじゃダメなんだ...」

「というと?」

「アリシアより強くならないと、俺様はアリシアの番になれない」

「はっ!?」

 コイツ、何言ってんだ?

「俺様がアリシアより強くなったら、アリシアは番になってくれるはずなんだ! 頼む! そのために協力してくれ!」

 これは面倒なことになって来た...アタシは頭を抱えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...