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第136話 ちみっことエルフの里 その3

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 アタシ達を取り囲んだ何者かの中から、リーダーらしき者が弓を構えた姿勢で現れた。

「えっ!? エルフ!?」

 アタシは思わず叫んでいた。だって物語や映画で見たエルフの姿そのままだったから。長い金髪に先が尖った大きな耳。彫像のように整った顔に弓を構えた姿は、紛うことなきエルフに思えた。

「ミナお嬢様...」

 マリーがアタシを庇うようにレイピアを抜いて前に出る。

「貴様ら何者だ!? 何故我らが聖域を侵す!?」

 聖域!? ここはエルフの聖地ってことか!? いずれにしてもこのままでは話にならないので、アタシはマリーの肩に手を置いて後ろに下がらせ前に出た。

「お騒がせして申し訳ありません。私達は単なる旅行者です。敵対するつもりはありませんので、武器を下げて頂けませんか?」

「旅行者だと!? ウソを吐くな! ただの旅行者に我々の結界が破れるものか! 何が目的でこの地にやって来た!? 正直に言え!」

 う~ん...困ったな...話が通じないよ...どうしよう...

「そう言われましても...私達は本当に空の旅を楽しんでいただけなんですが...」

「なに!? 空の旅だと!?」

「はい、今はこんなに小さくなっちゃってますけど、このナギは水竜なんで大きくなれます。私達二人を乗せて飛べるくらいに。ナギは私達を乗せて飛んでいたんですが、ここの上空に差し掛かった辺りで、急にナギが小さくなってしまってそのまま墜落しちゃったんですよ」

 アタシはナギを良く見えるように掲げながら説明した。ナギは申し訳なさそうに「キュイ...」と小さく鳴いた。
 
「......」

 エルフのリーダーらしき人は、黙ってナギのことを穴が空くほどじっと見詰めている。やがて構えていた弓を下げて、

「...信じられんが、ウソを吐いてる感じもしない。我々では判断がつかん。長老の判断を仰ぐので我々の里まで一緒に来て貰おう」

 そう言われてマリーが一瞬剣呑な雰囲気になったが、アタシはポンポンとマリーの背中を叩いて宥める。ここは大人しく従っておこう。


◇◇◇


 エルフのリーダーらしき人に連れられた先にあったエルフの里は、所々にログハウスが点在していて、前世のリゾート地にあるキャンプ場を思わせるような場所だった。

 里の人達から好奇の視線を浴びながら、里の奥の方にある一際大きなログハウスに案内された。

「長老、不審者を連れて来ました」

 不審者ちゃうし...長老と呼ばれた人は、長い白髪を靡かせたお婆ちゃんだった。その人はアタシを見るなり体を震わせながら、いきなり跪いた。何事!?

「おぉっ! ようこそおいで下さいました! 竜の巫女様!」

 えっ!? 誰が!? なんだって!?
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