乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

第166話 ちみっこと新しい生活 その３

「これはこれはシャロン様。ようこそお越し下さいました」

　出迎えてくれたのは、この店の女主人のようだった。派手ではないが洗練されたとてもお洒落なドレスを着ている。

　落ち着いたお上品な佇まいはとても平民とは思えない。どこかの貴族の奥様といったところか。

「この方に合う服を上から下まで選んで下さる?」

　そう言ってシャロン様がウインディを指差すと、

「畏まりました」

　どこからともなくお針子と思われる女の子達が現れ、

「さぁ、お嬢様。こちらにどうぞ」

　と言ってウインディを奥に連れて行ってしまった。これから全身を採寸されるのだろう。

「皆様はこちらにてごゆりとお待ち下さいませ」

　女主人は応接室のような所にアタシ達を案内した。豪華なソファーにテーブル、家具も一目で高級品と分かる一品で纏められている。

　しばらくすると、お茶とケーキが運ばれて来た。シャロン様は慣れた様子で寛いでいるが、庶民派のアタシとしては気が気ではない。

「あ、あの...シャロン様...この店ってやっぱり相当お高いんじゃ...」

「ミナさん、あなたもそろそろこのくらいのステータスに慣れておきなさいな。確かに庶民感覚じゃお高いかも知れませんが、あなたは既にこの店程度だったら常連になれるくらい稼いでいらっしゃるでしょ?」

「そ、それはそうなんですが...」

　前世が庶民だし、今世でも一応貴族とはいえ平凡な家庭に育った身としては、そんな簡単に慣れたり出来ない訳よ。この上流階級のステータスってもんに関してはね。

　しばらくすると、疲れ切った様子のウインディが戻って来た。

「な、なぁ、この拷問のような仕打ちはまだ続くのか...全身を弄り捲られて我はもう疲労困憊なんだが...」

　なんだかこの短時間でゲッソリ窶れたような...うん、気持ちは良く分かる...ご愁傷様...

「拷問だなんて人聞きの悪い。それに採寸が終わったならこれからが本番ですのよ?」

　シャロン様の言葉通り、お店の従業員らしき女の人達がドレスから下着、靴からアクセサリーに至るまで、様々な品物を大量に運び込んで来た。

「さぁ、これからジャンジャン試着して行きますわよ?」

　ウインディが真っ青な顔になった。


◇◇◇


「つ、疲れた...」

　ウインディがグッタリしている。ちなみに今は、沢山選んだ内のドレスの一着を身に纏っている。

　緑の髪に薄い青のドレスは良く映えていて、どこかの貴族令嬢と言われてもおかしくない格好だ。

「人間として暮らすというのは大変なものなのだな...」

　ウインディがしみじみと遠い目をして語った。

　本当にお疲れ様...