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 今日は聖女の仕事として、視察というか巡礼というか、とにかく地方を訪れている。

 王都から馬車で3日、神殿に多額の寄付をしてくれた貴族の領地に赴き、御礼と祝福を述べるというお仕事だ。神殿のお金儲けに加担しているような気がして非常に不本意なのだが、先立つものが無ければ神殿としての活動も聖女としての活動も出来なくなるので仕方ない。

 聖女は神殿の広告塔としての意味合いもあるので、こういった仕事も断る訳にはいかないのだ。それは分かっているのだが、面倒なことには変わり無い。

「聖女様! ようこそお越し下さいました!」

『歓迎! 聖女様』と書かれた派手な横断幕と共に出迎えてくれたのは、これまた派手な金ピカに彩られた衣装が目に眩しい、この領地の領主である伯爵様だ。成金趣味にも程がある。

 その周りには領地の住民達が小旗を降って歓迎ムードを盛り上げている。

「ささっ! お疲れでございましょう! 我が屋敷にてお休み下さい!」

 そう言ってオープンタイプの馬車に誘う。私は集まってくれた住民達に向かって手を振りながら、馬車に乗って伯爵邸に向かう。まるでパレードをしているようだ。とても恥ずかしい。

 伯爵邸はこれまた金ピカに彩られていて目に痛い。私は速攻帰りたくなった。
 
「聖女様、我が屋敷へようこそお越し下さいました。こちらは我が家の嫡男のカールです。聖女様のお世話をさせたいと思っております」

「聖女様、カールと申します。よろしくお願い致します」

「聖女を務めております、リタと申します。よろしくお願い致します」

 そう言って紹介されたカール様は、なんというかとても嫌な目で私を見て来た。思わず心の声を拾う。

『フフフッ! 中々良い女じゃねぇか! 唆るぜい! 聖女がやって来るなんてチャンスはそうそうないからな! 絶対モノにするぜい! 二人っきりになったら既成事実まっしぐらじゃい!』

 なるほど...ここまで聖女に対して不敬なのは初めてかも知れないな。さて、このクズをどうやって料理してやろうか...

「聖女様、我が屋敷の庭園は自慢じゃないですが、それはそれは見事なものなのです。よろしかったらご案内したいと思いますが如何でしょうか?」

 早速仕掛けて来たな。だがそうは問屋が卸さない。

「申し訳ありませんが、長旅で疲れておりますので、お部屋で休ませて頂きたいと存じます」

「そうですか...」

 フウッ...この伯爵邸には2日滞在することになっている。

 この後、どんな手を使ってくるのか、私はちょっと不安になって来た。
 
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