そして誰も要らなくなった...

真理亜

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第4話 そして誰も...

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 誰も答えてくれないので、仕方なくリアナは続けた。

「殿下、先程仰った婚約破棄の件ですが、謹んでお受け致しますわ。そちらの彼女と末永くお幸せに」 

 するとセシルの顔に喜色が戻って来た。明らかにハニートラップに引っ掛かったというのに、懲りない男である。

「そ、そうか。その...色々と済まなかった...許して欲しい...」

「えぇ、お二人の愛の深さに免じて許して差し上げますわ」

「ありがとう...」

「それにしても殿下はこれから大変ですわよ?」

「分かっている...批判は甘んじて受けるつもりだ...」

「そうですか。獄中で愛を育むのは大変でしょうが、頑張って下さいませ」

「えっ? 獄中?」

「えぇ、当然でございましょう? 公爵令嬢たる私を陥れようとしたのですから、そちらの彼女さんは刑務所行きですわよ」

「で、でもさっき許すって...」

「それはこの茶番劇に関してのみです。騙されていた殿下を罪に問うことはしませんが、そちらの彼女さんはしっかり罪を償って貰いますわよ。王族と公爵家を騙そうとしたのですから当然の報いですわね」

「そ、そんなぁ...」

 セシルの顔は蒼白になってしまった。

「それとそちらの彼女さんの実家は男爵家でしたっけ? 公爵家に楯突いたんですもの、取り潰しになるのは間違いありませんわね」

 すると今度はアニエスの顔も蒼白になった。

「平民に落ちた罪人を変わらず愛するなんて、殿下もお優しい方ですわね」

 リアナは皮肉混じりに嗤った。

「り、リアナ、ちょっと待ってくれ! 僕はこの女を愛してなんかいないんだ!」

 さっきまで傍らに寄り添っていたアニエスを突き飛ばしながらセシルが叫ぶ。

「きゃああ!」

 突き飛ばされたアニエスが床に倒れ込んだ。アニエスが罪人に、しかも平民に落とされると聞いて保身に走ったのだろう。本当に最低な男である。

「本当に愛してるのは君なんだ! この女に騙されてハッキリと分かった! 婚約を継続してくれ!」

「お断り致しますわ。あなたは要りません」

 リアナはハッキリと断言した。


~fin.~



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