【完結】R-18乙女ゲームの主人公に転生しましたが、のし上がるつもりはありません。

柊木ほしな

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第1章*とんでもない専属メイド初日

1・なんでこうなった!

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 愛梨……もとい今はルーナである彼女が二度目の生を受けた場所は、何百年も続く大きな商家だった。
 王家とも繋がりがあるほどの家で、ルーナは16歳まで何不自由無く暮らしてきた。
 しかし不景気により経営が悪化し、王家に助けてもらう代わりに、ルーナはメイドとして働くことになったのだ。

 正直、その時点で嫌な予感はしていた。
 前世の記憶は年々思い出していて、メイドになった時にはもうすべてを思い出していたからだ。
 
 この世界は、ルーナが前世で大好きだったゲーム『MRL』の世界に酷似しすぎている。
 だからこそ、万が一にもゲームと同じことにならないようにと。余計なことをしないように、普通にメイドとして働いてきたというのに……。
 
 あれから二年。

(まじでなんでこうなった!!)

****

 ハイリ・ディティファンス・コンラート。
 またの名をパーフェクトプリンス。
 
 それがこの国、コンラート王国の第三王子である。

 常に笑みを絶やさず、何事もさらりとこなすため、貴族からも国民からも人気が高い。
 全女性国民の憧れの的だ。

 ……というのは表の顔で、実はドSの腹黒。
 しかも、ルーナはメイドになった初日から手をつけられる。

 前世で彼のルートをやった際、散々いじめられた覚えがあった。

『MRL』の物語は、ルーナが王子付きのメイドになるところから始まる。
 そこから自身の体を使って成り上がっていくのだが……。

(どうにかして専属メイドを辞退できないかな)

 勘弁して欲しい。
 あのゲームのような出来事が、実際に自分の身に降り掛かってくるなど真っ平ごめんだ。
 
 前世では、野心のある主人公のことをかっこいいと思っていたが、それが我が身となるとあの振る舞い方は到底できない。

(私は平和な人生を望む)

 大人向け乙女ゲームの主人公ゆえなのか、長い金の髪が美しい超絶美女に転生したものの(しかもボンキュッボン!)、中身は前世のままなのだ。
 ドラマティックな展開は結構。
 普通のメイドの立場で十分満足だ。
 だがしかし、一介のメイドの立場で上司からの指示を断れないのもまた事実。

(とりあえず従いつつ……どうにか辞退できないか方法を探そう)

 そう決意を固めた矢先、王子から呼び出された。

  ****

 王子の私室を訪ねると、彼は優雅に片足を組んでベッドに腰掛けていた。  
 
 王子の金の髪がさらりと揺れる。

「君が、僕の新しい専属?」

「はい、(不本意ですが)よろしくお願いします」

  不本意ながら頭を下げると、王子がニヤリと笑った。
  ……嫌な予感がする。
  始まって早々、ゲームの流れにきちんと沿ってしまっている。

(に、逃げなきゃ……)

  このままでは抱かれてしまう。

「へぇ、そっか。前の子が逃げてからしばらく専属いなかったんだよね」

 王子はベットから立ち上がると、つかつかとルーナの側まで近づいてきた。
 ぐっと腕を引っ張られ、唇が触れてしまいそうな距離まで顔が近付く。

「ストレスが溜まってるんだ……。付き合ってよ」

 王子はそう言うと、ルーナの唇を奪った。

 
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