悪役令嬢の末路

ラプラス

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燃えて、なくなれ【9】

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 森で暮らし始めて1年が経った。
 その日、木々がざわめいていて、私は木の声に導かれるまま森の中を走ると、布に包まれた何かを見つけた。
 はもぞもぞと動いていて、恐る恐る布を取ると、そこには小さい人がいた。

 「これは、人?」
 『あら、懐かしい。リィナも昔はこんなにちっちゃかったのよ』
 「私が?」
 『ええ。あの時は本当、苦労したわ。眠ったと思ったらすぐに泣いて起きちゃうし、赤ちゃんなんて初めて育てたから…。でも、今こうやって立派に育ってくれて嬉しいわ』
 「…私のこと、いつも見守ってくれて、今まで育ててくれて、ありがとう」
 『どういたしまして。…でもこの子の親はどこに行っちゃったのかしら?もし、居ないのなら、このままにしておけないわね』
 「ええ。…こんなに、かわいいのに」


 赤ちゃんに触れると、頭の中に映像が流れ込んできた。
 悲しく思えるのは、この子の気持ちなのかしら。

 『どうして私を見てくれないのよ!産みたくもない子どもを産んだのに!』
 『知らねえよ!お前が勝手に産んだんだろ!』

 『お嬢様、ごめんなさい。だけど、きっとこの家に居ても幸せにはなれないから…。ごめんなさい』

 言い争う両親。ご飯を与えられない。抱きしめてもらうことも、微笑みかけてもらうこともない。その境遇を哀れに思った侍女が、この森に彼女を置いて去っていったようだ。


 「この子は、ここに置いていかれたのね…」
 『見えたのね』
 「ええ。ねえ、私が、この子を育ててあげられないかしら。私が森に育てられたように、この子を…」
 『きっと、できるわ。わからなかったら、私が教えてあげる。一緒に育てましょう、この子を』


 そうして、新しい家族が増えた。


**********

 「リスト!父上は最近よくお前を呼び出しているようだが、何かあったのか?」

 領主城の廊下で、久しぶりにリストを見かけたカルロスは声をかけた。しかし、なんだかそっけない態度に寂しさを覚えた。

 「いや、何でもないよ。ただいつものようにお使いを頼まれるだけさ」
 「そうか、なにかあったらすぐに言うんだぞ」
 「ああ。わかってるさ、じゃあな!」

 リストは短く返事をして、すぐに踵を返してしまう。
 リストはカルロスから見えなくなった途端、壁にもたれかかった。

 「全てはお前のためなんだ。許してくれ」

 気持ちを切り替えた後、領主の部屋へと向かった。


**********

 場所は変わり、領主の部屋

 「領主様、ご指示の通り兵を集め、ビスマルク領にて訓練を受けております。ただ、兵の訓練完了には3年掛かるかと。また、前回の領主会で賛成を得られなかった領主には、指示通りの物を贈っておきました」
 「リストよ、よくやった。しかし、ビスマルク領主に言っておけ、訓練に3年は長いと、2年以内に身につけさせろ」
 「はっ!」
 「以上だ、下がれ」
 「失礼致します」
 「全く、どいつもこいつも使えぬ者ばかりだ、だが、もうすぐあの森と魔女が手に入る。あの2つを手に入れさえすれば、私は神になったも同然。私を顎で使う王ですら敬服するだろう。森という大いなる恵と、その管理者である魔女、手に入れるのが楽しみだ」
 

 
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