絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

文字の大きさ
132 / 291

闘いを求める声

しおりを挟む
 その後、ジャンゴさんと契約魔法を交わし、秘密を守ってもらうように伝えた。バステンさんにも同じように交わすらしい。

 いやー、よかったよかった。とりあえず一人優秀そうな人材を確保できたぞ。彼はいったんジャンゴさんの方で世話をして、体力が回復次第僕に引き渡してくれるらしい。値段もほぼ無料みたいなものだ。

「では、今後は傷病奴隷を中心に集めれば宜しいですね?」

「ええ、お願いします」

 僕の浄火スキルを知ったジャンゴさんの食いつきっぷりはすごかった。とりあえず、有能だけど病気などで実力を発揮できない人材を積極的に集めてもらうように頼んだ。ジャンゴさんは安く仕入れた商品を高値で売り、僕は市場より安値でハイスキル人材を確保できる。うーん、悪魔だな。たぶん人の道はずれているんだろうなぁ……。

 あとは契約を紙にまとめて資料にしてもらうのを待つだけか。ゴドーさんの奥さんの浄火、これなら早くできそうだな。よかった。

 契約を紙にまとめてもらっている間、ジャンゴさんと世間話をする。流石、商人なだけあって話題が豊富だ。フレイムベアの毛皮の噂についても当然知っていたし、卸した人物についてなんとなく心当たりがあります、と探りを入れられた。いやぁ、やっぱり本職は違うね。シルビアも本気出せばこのくらいできるのかな。いや、難しいか。ポテンシャルはあっても、ジャンゴさんには経験がある。才覚については、言うまでもないだろう。

 ショタ奴隷が用意してくれたお菓子とお茶を摘まむ。うまいなこれ。僕もプリンとか作るべきなんだろうか。でも、残念ながら作り方を知らない。お菓子の作り方なんて普通知らないよ。まぁ、自分で試すくらいはやってみるか。

「そう言えば、少し気になったんですが。バステンさんは重症化している割に手厚く看護されているように見えましたが、ジャンゴさんの知り合いだったんですか?」

「ああ、それはですね」

 雑談の合間に、ふと、気になっていたことを訊いてみた。僕の勝手なイメージなんだけど、助かる見込みの無い、奴隷をずっと看病するのってどうも奴隷商人らしくないな、と思っていた。こういう言い方は嫌なんだけど、固定費がかかり続ける在庫ってことなんだよね。商人として、真っ先に切り捨てるものだと思っていた。

「以前、当商会は大変有能な用心棒を雇っている、と言った件を覚えていますか?」

「あー、はい。うっすらとですが」

 ああ、そう言えばそんな話をちらっとした気がする。確かそれが強みだ、とか言っていたね。デイライトの近隣は盗賊とかモンスターがいるから物騒で、人を輸送しなくてはいけない奴隷商人にとっては、一番気を遣わなきゃいけない。だったかな? でもジャンゴさんは、その用心棒のおかげでリスクをかなり低減できるって話だったはずだ。

「その用心棒が奴隷輸送の道中で、どうやら拾ったらしいのです。あの奴隷……バステンは無一文の上ぼろぼろの状態でモンスターを切り伏せ、彷徨っていたそうです。その腕を見込んで、現地で雇い入れたようでして。しかし、ご存じの通り途中で病に倒れました。あまりにも苦しむものですから、途中で『止めを刺してやったらどうか』と言ったんですが、『最後まで足掻けば何か変わるかもしれない』と用心棒に言われ、まだ話すことのできたバステンも了承した上で、奴隷として契約を交わし、ここまで連れてきた次第です。治療代も用心棒が出しているんですよ」

 バステンさん、そういう経緯だったのね。その用心棒、めっちゃいいやつだな。

 ただ、気になる点が一つ。

「え、用心棒が雇ったって。ジャンゴさんは関知していないんですか?」

 自分の商隊なんでしょ? そんな勝手な事させていいのかな。

「その用心棒には全幅の信頼を置いております。私なんぞ、旅の上ではただの大きな荷物に過ぎませんから。仕入れで各国を旅する時は、彼女の判断に全て従っていますよ」

 ブルンブルン、とたるんだ顎肉を揺らてし答えた。同じ肉でも、マイアの肉とは有り難さに天と地ほどの差がある。

 用心棒って、たぶん従業員だよね? 自分より立場が下の人間の言うことを素直に聞いて、全権を与えているあたり、ジャンゴさんの有能さが際立つな。プロに任せて後ろでどっしり構えるのってけっこう難しいと思うよ? 基本的に上に立つ管理者って、自分で何でも管理したがって、すべてをコントロールしないと不安で夜も寝られないって人種が多いからな。だから組織の力を活かせないで、いろんな場所で管理者の命令と許可が必要になって機能不全に陥る、なんてよくある話だ。だからジャンゴさんみたいに、自分の仕事領域とそれ以外をきっちり線引きできている、つまり管理者が職能分化を理解している組織って強いんじゃないかな。うーん、投資ってこういう組織にすべきなんだろうな。めちゃくちゃためになる。

「ん? 『彼女』ですか?」

「ええ、そうですよ。ああ、そう言えば特に話していませんでしたね。当商会の女用心棒ニステルは元闘奴です。遠い西方の国のコロシアムで名を馳せた伝説的チャンピオンなんですよ」

 はー、女用心棒で元闘奴か。しかもチャンピオンときたか。めっちゃ強そうやん。こってり搾られたいね。あと、コロシアムなんてあるのね。あらやだ野蛮。

「へー、チャンピオンですか。やはりお強いので?」

「それはもう。彼女が属していたコロシアムは『人魔混合型』と言って、人対魔獣の組み合わせが盛んだったコロシアムです。さらに一対多、多対一の形式でしたから。派手な闘いは観客を魅了し、一大産業になっています。その中で長年チャンピオンをキープして、とうとう半ば形骸化していた『解放闘奴』の切符も手にしましたからね。かのコロシアムではいまだに彼女の伝説は語り継がれ、チャンピオンの席は永久欠番になっているようです。タネズ様もお強いと聞き及んでいますが、彼女ほどではないでしょう。冒険者のランクにはあまり詳しくないですが、ニステルはBランクに匹敵するそうですよ?」

 Bランク! それはすごいな。今まで聞いた中で一番強そうな人だ。いや、獣人かな? わからないけど。

 それにしても、ジャンゴさんめっちゃ楽しそうにしゃべるじゃん。意外と格闘技とか好きなのかな? だいぶ興奮している。少し前までの彼なら、顧客を暗に弱いなんて言わなかっただろうし。あ、別に全然不快じゃないよ? 僕が弱いのは事実だし。

「当商会には他商会を上回る強みをいくつも持っているつもりですが、一番は彼女の存在です。有り難いことに後継の育成も率先してやってくれています。おかげで商隊の輸送力は例年上昇しています。いやはや、頭が上がりません」

 それはすごいな。なんでそんなスーパー人材がジャンゴさんのところにいるのか気になるけど。どうやって知り合ったんだろう。やっぱコネかな?

「素晴らしい人材ですね。それだけの人材を雇い続けるのは大変でしょう」

「それが……毎年多額の報酬を提示するのですが『そんなものはいらない』と突っぱねられてしまうんですよ。いくらかの生活費は受け取ってくれるんですが。それだけです」

 ジャンゴさんが苦笑気味に言う。

 ふーん、どうしてだろう。誇り高いから、かな? ちょっと違う気もする。

「信念のある方のようですね?」 

「そのようです。どうやら目的があるみたいなんですが。教えてくれません。私としてはその目的を叶えてやっていつまでもここにいて欲しいのですが……。この前、『全部アタシが好きでやっていることだから、過度な報酬はいらないね。いざ出て行くっていう時に、金で縛られたくないんだ』と言われましたよ。いやはや、根っからの自由人とは扱いにくものです。気が気でありません」

 根っからの自由人か。かっこいいな。そういう人物には憧れる。自分の腕っぷしで道を切り開いて、闘奴の身から自由人へ……。うん、ロマンだな。そりゃ人気出るよ。活躍を描いた本でも出されてそうだ。

「旦那様、資料の準備が完了しました」

 おっちゃん奴隷が分厚い資料の束を持ってきた。そんな新人OLみたいな資料の持ち方しないでくれ。

「うむ、うむ」

 ジャンゴさんは機嫌良さそうにおっちゃん奴隷の尻を揉みしだく。おげぇ、これさえなければほぼ完ぺきなんだけどな。

「それでは、タネズ様。こちらお受け取り下さい」

「確かに受け取りました」

 内容はチラ見しただけだけど大丈夫だろう。あとでシルビア辺りにでも確認してもらおう。

 ジャンゴさんたち送られ、商館を出ようとすると急にサンドリアから契約者チャンネルで話しかけられた。

『ケイ、どうする? 誘われてるよ?』

 ワッツ? 誰に? 美人のお姉さん? おっちゃん奴隷は勘弁な。

『どういうこと?』

『え、えっと……さっきの地下室から『闘い』を求める気配がする』

 なにその少年漫画みたいなふわっとした回答。そういうのはベステルタがやるもんだと思っていたけど。

『ごめん、サンドリアもそういうの分かるの?』

『わ、分かるよ。ベス姉さんほどじゃないけど、あたしも一応亜人だし、そういう気配には人間よりずっと敏感だよ……』

 た、たしかに暴走サンドリアの闘志たるや凄まじかったからな。

 しょんぼりしてしまった。あかん。

『ご、ごめんね。サンドリアって僕の中では、妹みたいな位置づけだから、そういう印象無かったんだよ』

『い、いもうと……。そ、それなら仕方ないのかな?』

 えへへ、とはにかむ雰囲気が伝わる。あぶねえ。サンドリア泣かしたらお姉様方に何されるか分かったもんじゃない。ていうかベス姉さんって呼ぶようになったのね。尊い。

 正直『闘いを求める気配』とかやり過ごしたくてたまらないんだけどなぁ。

 でも、アセンブラのこともあるし、不確定要素は排除しておきたい。一応行ってみるか……。気が乗らないけど。フランチェスカを出せるようにしておこう。

「タネズ様、どちらへ?」

 急に方向を変えた僕をいぶかしむようにジャンゴさんが言う。

「……きょ、強者が僕を呼んでいます」

 苦し紛れに言葉を捻り出した僕を、おっちゃん奴隷がものすごく怪しそうに見てくるのが印象的だった。たぶん、今日一日でおっちゃん奴隷にだいぶ不信感持たれたよなぁ。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

処理中です...