絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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過労死コースじゃん!

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「朝ごはんですよ~!」

 ルーナを見送っていったん部屋に戻り、シルビアの尻枕を揉みしだきながらまどろんでいると、セラミナの元気一杯な声が教会に響き渡った。

 この人、何度起こしても起きなかったな。声かけて揺すっても、お尻さすってもおっぱい揉んでも、不機嫌そうな声出して寝返り打つだけだった。それどころか裏拳や肘鉄が襲ってくるので、途中で断念した。

「シルビア、朝ごはんだって」

「んんぅ~~」

「おーい」

「ん、んゆゆぅ……? あれ、ケイおはよ……ふわぁ」

「おー、やっと起きた。もう朝ごはんだって」

「朝ごはん……? 朝ごはん……!? もうそんな時間!?!?」

 シルビアの寝ぼけ眼がくわっと覚醒しガバっと跳ね起きる。すると超スピードで身支度をし始めた。

「なんで起こしてくれなかったのよ!!!」

 鬼の形相で怒る蒼の花嫁。理不尽すぎる。

「いや起こしたよ何度も。でも君、一向に起きなかったんだ」

「私が寝覚め悪いの知ってるでしょ! 今度からは何してもいいから起こして! お尻揉んでもおっぱい揉んでもいいから!」

「それ二つともやったけどだめだったんだよ」

「勝手に触るなっ!」

 すぽーんっと枕を投げてくる。

 どっちすか……。

「もうちょっとしたら行くから先食べてて……あっ」

 声を荒げてたシルビアは不意にぴくんと内股になり、動きが止まった。

「どうしたの? 大丈夫? またずれした?」

「違う! あー、もう! ケイのせいだからね、昨日あんなに突くから……っ、あんな、あんな……っ」

 シルビアは顔を次第に紅潮させ、わなわなと震えると黙り込んでしまった。

 触らぬ神に祟りなし。

 爆発する前に退散しよう。

ーー

「あれ? シルビア様は?」

「起きるのが遅くなっちゃったみたいだから、もう少ししたら来るよ」

 セラミナが不思議そうに聞いてきたので答えると、すでに席に着いていたアルフィンがにやにやと笑っていた。

「ふふふ……その様子だと、昨日はお楽しだったようだね?」

「おっさんみたいなこと言うなよ。そしてお楽しみだったよ」

「それはよかった。じゃあ背中を押して上げたボクに感謝してくれたまえ」

 そして彼女は当然のように僕の隣に座ってくる。

「おめー昨日はあんな醜態晒してた癖によぉ……」

「ボクは奴隷だからね。醜態さらして御主人様の嗜虐心を満たすまでが仕事さ」

 事も無げに言い切る。くそう、そう言われると何も言えないな。

「仕事ね。じゃあ嗜虐心満たしまくるからね。逃げないでね」

「おお、怖い。御主人様、スレイブチョーカーのスイッチ、オフにする時はちゃんと言ってね。あれ試してみたけど、けっこうやばかったからさ。一日中オンにしたあとにオフにしたら、ボクとんでもないことになっちゃうよ?」

「お前いつもとんでもないことになってんな」

 アルフィンは期待に満ちた眼差しで僕を見てくる。つまりこれは「オフにしろ、オフにした自分の姿を見ろ」と言外に言っているわけだ。

「はぁ。時間が取れるかは分からないけど、機会があったら君の醜態を拝ませてもらうよ」

「そうこなくちゃ。御主人様は奴隷のことをきちんと管理しなくちゃいけないんだからね。怠ってはだめだよ」

 甘い声で腕を絡めてくるユニセックス生意気奴隷。一丁前にいい匂いさせやがってよお。

「使徒様、ザルドたちも揃いましたのでそろそろ朝食にいたしましょう。アルフィン、席に戻りなさい、ね?」

「はいはい」

 ふんわりとした優しい声でカリンが言うと、アルフィンも擦り寄るのを止めて大人しくなった。さすがはカリンだ。

「ししょー、おはようございます! ひん!」
「おはようなんだぜ!」
「おはようございます……あれ、お姉様は……?」

 ザルド、リーノウ、バルデの三人組も朝から元気いっぱいだ。てか、そう言えばベステルタとプテュエラの姿が見えないな。

『ベス、おはよう。もう朝ごはんだよ』

『おはよう、ケイ。もうそんな時間なのね。ごめんなさい、今修行していて何かが掴めそうなの。もう少ししたら行くわ』

『りょうかーい……プテュエラ、おはよう。朝ごはんだよ』

『む? そうだったか。すまん、今行こう。召喚してくれるか?』

『うい』

 プテュエラを召喚すると、彼女は控えめにダークアクションを決めて参上した。

「殲滅の風鷲、参上」

「「「ふおおおおおおおお!!!」」」

 例のごとく、子供たちは大興奮だ。

 しかし、今日はプラスアルファでもう一人。

「……か、かっこいい」

 ユリオが目を輝かせながら、プテュエラの登場シーンを眺めていた。

「ご、御主人様。そちらの方はもしや」

「あ、紹介がまだだったね。彼女は亜人のプテュエラで、僕の契約者の一人だよ」

 ユリオとは反対に、イレーナたち大人組はプテュエラの持つ覇気みたいのにやられてしまい、顔を青くしていた。

「ふむ? 新しいジオスの子か?」

「そうだよ。こっちの二人がミゲルとイレーナ。で、こっちの美少女がセラミナで、こっちの賢そうなのがユリオ。優しくしてあげてね」

「ふむ、心得た。皆、よろしく頼むぞ」

 ばっさばっさと羽を揺らし、微笑むプテュエラ。イレーナとミゲルはその笑顔を見てやっと安心したようだ。

「び、美少女……美少女……」

 セラミナはなんかぶつぶつ言って放心している。

「ひん? 新しい子?」
「新入りか? 新入りか?」
「お姉様のかっこよさに気付くとは……見る目がある」
「え? え?」

 ユリオはザルドたちにわちゃわちゃと囲まれ、なんだか愉快なことになっていた。

 うむ。みんな元気そうでよかった。これぞ朝食だ。


 そのあと、カリンがジオスと僕に祈りを捧げ朝食が始まったあたりで、シルビアが少し息を切らして合流した。

「シルビア、遅いですよ」

「ご、ごめん……って。別に必ずみんなで食べなきゃいけない訳じゃ……」

「何を今更。私たちはジオス教徒、いわば信仰を依り代にした家族なのですよ? 家族はなるべくみんなで食卓を囲むものです。見なさい、新しく入ったアルフィンですらちゃんと時間通りに来て使徒様と交流されていたのに。貴方は何をやってるんですか」

「ぐ、ぐぬぬ」

 カリンのお説教がシルビアをぐぬらせた。

「ぷっ。シルビア、だめだねえ。昨夜はよっぽどお楽しみだったと見える」

「ち、ちがうし!」

 からかい上手のアルフィンがシルビアをムキにさせる。

「だいたいアルフィンあんたねぇ……ってうまぁ……何この朝ごはん……」

「……ふーん、やるね」

 口喧嘩が、テーブルの上に並べられた香ばしい朝食によってあっさりと中断された。

 二人が黙々と朝食を食べている。

(そんなに美味しいのか) 

 僕がそう思っていると、ミゲルがおもむろに口を開く。

「……今朝の献立はダイオークのベーコン風塩ソテー、シャイバードのウーブルイェ《炒り卵》、豆と根菜のスープ、それと窯焼きのパンだ」

 ぶっきらぼうで、仏頂面。

 でもその無愛想なのがミゲルの味だ。料理に籠めた手間と敬意が、皿の上から雄弁に語りかけてくる。

 まずベーコン風のダイオーク肉を口に運ぶ。

「……これは……」

 驚きに目を見開く。外はカリッと香ばしく、中はしっとり柔らかい。ダイオーク肉の旨味が、塩とハーブの香りとともに広がり、続けて食べたシャイバードの卵の黄身が舌の上で溶け合った。

 くううぅ。うまい。

「……うぅ。朝から幸せなんだけど。ダイオークってこんなに美味しくなるのか……ていうかパンもめちゃくちゃ美味しい」

 そうこぼすと、テーブルの端で黙々と片付けをしていたミゲルが、不意に口を開いた。

「ダイオーク肉は、昨夜のうちに塩揉みしてハーブに浸けたあと吊るした。今回はあくまでベーコン風だが、ちゃんと時間をかければもっともっとうまくなる。御主人様、燻製小屋を建てたいんだが、いいだろうか? すでにパン窯は作ったんだが……」

「カリン、いいかな?」

「もちろんでございます」
 
 カリンはすでにベーコン風ソテーを平らげており、真剣な表情で頷いた。この美味しさの前には首を縦に振るしかないよね。

「というわけだからいいよ。やっちゃって」

「……わかった」

 ミゲルはしっかりと頷く。愛想はないけど、彼なら素晴らしい仕事を果たしてくれる、という確信がある。いやー、アンクーン子爵だっけ? 彼には感謝だね。

 その隣で、セラミナが誇らしげに胸を張る。

「パンは、お母さんが朝一番で焼いたんです!」

 その控えめに主張するJKっぱいをつんつんしたい。

「イレーナ、このパンめちゃくちゃうまいよ」

「ふふ、ありがとうございます。パン焼きは唯一主人よりうまくできるんです」

 イレーナが柔らかく微笑みながら言う。

「……俺もパン焼きに集中すればお前より美味いものを作ることはできるぞ」

「もー、お父さん! 御主人様の前で張り合わないの!」

 セラミナが憮然とするミゲルの腰に抱きついてなだめた。こんな娘さんいたら父親冥利に尽きるだろうなあ。

「ていうかミゲルはパン窯も燻製小屋も作れるんだね。すごいな」

「……俺は大抵の料理道具、施設なら自作できる。道具がないなら作るだけだ。鍋も、包丁も、窯も。そうやって生きてきた」

 ミゲルはパンを一切れ手に取り、焼き色を確かめるように見つめながらぽつりとつぶやいた。

 料理人でもあり、職人でもあるんだね。根っからの仕事人なんだな。

「……御主人様。スラムの人足たちがやってくるのは昼からであってるか?」
 
 ふとミゲルが尋ねてくる。

「シルビア、その認識でいい?」

「……っ! うっ、ぐっ……」

「勢いよく食べるからですよ。ほら、お水飲んでください」

 バクバク朝ごはん食ってたシルビアが、喉にベーコンを詰まらせてむせ、カリンに背中をさすられていた。アルフィンはけたけた笑って馬鹿にしながらも、布巾で水をとってあげていた。

「んぐぐ……ふぅ。ええ、その認識で構わないわ」

 何が構わないわ、だよ。澄ました顔してそれで爆食いしてむせたことはチャラにならないぞ。

「だそうだけど、ミゲル。どうかした?」

「いや、今後の飯の献立を考えていてな。御主人様、彼らには朝昼晩の三食用意する、という話だったな?」

「うん、そうだね」

 シルビアとスラム側でまとまっていた話だとそうなる。給金はそこまで多くなくていいから、とにかく衣食住、特に食と住むところが欲しいらしい。

「となると、必要な食材も、食材費も多くなっていくだろう。御主人様、肉の貯蔵は充分か?」

 大丈夫だ、問題ない……だと違う作品か。

「御主人様は在庫がパンパンと言っていたが、あの様子ならいずれ尽きる。計画的に買っていったほうがいい」

 む、そうか。食糧庫だけみたらそういう印象になるよね。ミゲルには魔法の鞄のこと話してなかった。

「あ、その件なんだけど。ほんとにパンパンなんだよ。食糧庫には入れてないだけで」

「……食糧庫に入れないでどこにいれるんだ?」

 不思議そうな顔のミゲル。うん、それはその通りだ。

「えーっとね、僕は魔法の鞄を持ってるんだな。んで、この鞄はとても貴重でものすごい容量があるんだ。しかも時間の流れも限りなく遅い。だから、こっちに狩りたてほやほやのダイオーク肉やら何やら色々入ってるって訳」

「………………………ふぅぅぅぅぅぅっ…………………わかった」 

 ミゲルは黙りこくったあと、盛大な溜息をついて達観した瞳になった。隣ではセラミナとユリオが驚きつつも、父の様子を見て笑っている。 

「ちなみにダイオークの肉はあとどれだけ残っているんだ? 」

「うーん、正確に数えたことはないんだよね。とりあえず百頭くらいかな?」 

「ひ、ひゃく」

 ミゲルが口をあんぐり開けると、セラミナとユリオは耐えきれずにプーッと吹き出した。イレーナも笑っている。

「セラミナ、そんなに面白い?」

「え、あ、はい。すみません御主人様の前で……。そのお父さんはめったに驚いたり、表情を崩したりしないんです」

「そんな父が、御主人様と話してると、いっつも驚いていて……。それが新鮮なので、姉と笑ってたんです」

 そういうことか、なるほどね。ミゲルの方を見ると苦々しい顔をしている。

「……コホン。御主人様。オーク一頭から取れる肉の量は相当な量だ。ダイオークともなると、体格に優れる分、さらに取れるだろう。俺の見立てだと、これから来る三十人ほどの人員であれば三食たっぷり食わせても数は三日はまかなえる。内蔵も使えばさらに持つ。それが百頭ともなれば、当分はダイオークの肉だけで過ごせるはずだ」

 え、ダイオーク一頭でそんなにまかなえるのか。いや……でもダイオーク一頭で牛一頭無いくらいのサイズ感だもんな。ならいけるのか。

 うーん。ダイオーク、どうしよっかな。いや、この際ダークエイプとかマスキュラスの素材もぜんぶ解体しちゃいたい。鞄の奥底に死蔵してあるだけなんて非経済的だし。
 商業ギルドに頼んでぜんぶ解体してもらうかな。トップのアーサーさんには鞄のことも、絶死の森についても話してあるし、話通しやすそうなんだよな。
 でも、市場に貴重なダイオークの素材が流れることになるのがなー。なんか勘付かれたりしないだろうか。なるべく時が来るまでは目立たずにいたい。考えすぎかな?

「ちなみにミゲルってダイオークとか魔獣の解体ってできるの?」

「できるにはできるが……」

 彼は家族の方をちらっと見た。イレーナがこくりと頷く。え、なんだそのアイコンタクト。

「御主人様。ダイオーク一頭となると、どんなに速く捌いても半日はかかる。その他に料理の仕込みもあることを考えたら、かなり厳しい。しかし、御主人様の命令ならもちろん従う」

 覚悟を決めた表情のミゲルとイレーナ。反対にセラミナとユリオは不安そうな表情を浮かべている。

(……三日に一回、朝から仕事をしながら半日かかる解体をやるって……過労死コースじゃん!)

 僕は慌てて撤回する。

「わーっ、待て待て。今の無し。そんな命令出すつもりないから。ミゲルを使い潰す命令なんて出すつもりないよ」

「……ならよかった」

 彼は心底ほっとしたような様子で溜息をついた。セラミナたちも安心したように力を抜いている。

(……この感じだと貴族に無茶な要求されまくってたんだろうなあ)

 やだやだ。封建社会ってこわいわぁ。

「ミゲル。君たち家族がどんな風に今まで過ごしてきたのか僕は知らない。でもね、僕のところに来てくれた以上、僕には君たち家族を幸せにする義務があると思っている」

「幸せにする、義務?」

 ミゲルはピンと来ていない様子で繰り返す。

「うん。君たちは奴隷で、僕に買われた。僕は君たちの命を買った。確かに君たちにとって僕は上位者なんだろうけど、僕は君たちが必要で買ったんだ。そこに金銭のやりとりはあったけど、情だってある。
 ……うまく、伝えられるか分からないけどさ。君たち家族の人生を預かった以上、僕には君たちの生活を守って、できるだけ良い環境を用意する義務があると思ってるんだ」

「……そんなこと、奴隷じゃなかった時にも言われなかったな」

 ミゲルはポツリと呟いた。

「まあ、僕の考え方はおかしいのかもしれないけどさ。その方がなんというか、お互い楽しいでしょ? だから僕が変なこと言ってたら、ミゲルから注意してくれると助かるな」

「……ふっ、奴隷が主人を注意か。は、はは」

 ミゲルは鼻で笑ったが、その表情にはどこか柔らかなものが混じっていた。
 燃え残りの炭火のような目が、わずかに灯った。

「……わかった。変なこと言っていたら教えよう、御主人様。貴方には俺の料理を長く食べてほしいからな」

「うん、よろしく」
 
 そんな僕たちのやりとりを、
 
 アルフィンは「ふーん?」とにやにや顔で眺め、

 シルビアは「はあ、まあケイらしいか」と苦笑し、

 カリンは……何やら猛烈な勢いでメモを取っている。

「……カリン? 何してるの?」

「はい。今のお言葉を記録しておこうかと。後に編纂し、下着に刺繍します」

 わァ……イかれてる……。

 ダイオークのベーコン風ソテーを食べながら僕は考えをまとめていく。

(やっぱ今日は商業ギルドに行って、素材を軒並み解体してもらおう。で、帰りに冒険者ギルドによってシャールちゃんいないか確認しようかな)

 うん、こんな感じで動くか。 

 
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