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16話 ココセの下層ソロ攻略2
しおりを挟むフッと、目の前に現れたココセは、何事もなかったかのようにカメラの前で佇んでいる。
あたかもそこにずっといたかの様に。
<コメント>
■ん?
■は?
■へっ?
■あれ?どうなったんだ?
■マッドウルフに向かって行ったよな?
■確かマッドウルフに囲まれて・・・・・。
■ちょっ、ちょっと待って!!!
■あれ?マッドウルフの首がなくなっている。
■ココセちゃんが消えたと思ったら、マッドウルフの首がなくなっている!!!
■なくなってりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
コメントが混乱している。
マッドウルフが黒い灰となって消えていくのを撮っていると、その先からまたモンスターがやってきた。
眼が赤く、全身毛で覆われているモンスターが二体。もうお馴染みの『ウルグ』だ。
「あれ。また来ましたね・・・・・『ウルグ』です。」
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!間髪入れずに来た!!!
■別のモンスター来るのはぇぇな!!!
■ウルグだ!!!
■また来たw三週連続www
■皆勤賞wおめでとうwww
■ちょ、ちょっとまださっきの戦いが理解できてないけど、頑張って!!!
■ヨシ!ココセちゃん頑張れ!!!
■何が何だか分からんが、とにかく頑張れ!!!
カメラを隣にいるココセに向ける。
ココセがゆっくりと一歩前に出た瞬間。
消えた。
すぐ僕は、ウルグの方へとカメラを向ける。
見ると、ココセは先にある岩の上に佇み、手前にいる二体のウルグは、マッドウルフと同じ様に、首が飛んでいた。
<コメント>
■はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
■んんんんんんんんんんんんんん???
■はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ???
■なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ???
■今何したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
■また消えたぞ!!!
■ちょっ、ちょっと待って!!!
■全然分からんかった。
■分けがわからんw
■ココセちゃんが消えたと思ったらウルグの首が飛んでたwww
■首がなくなってりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■ソラ!説明求む!!!
更にコメントが混乱している。
そりゃそうだ。
アカリの時は、剣が速すぎて見えなかったが、どうやって戦っていたのかは分かる。
しかしココセの場合は彼女自身が見えない。
何をしたのかが全然分からない。
皆が混乱するのは当たり前だ。
「そうですね。僕も何をやったのか全然分かりません。ちょっとココセさんを呼んで聞いてみましょう。ココセさん!」
数十メートル先の岩の上で佇んでいたココセは、僕の声を聞くと、パッと消えて、撮影している僕の目の前に現れた。
「・・・・・何?」
「ココセさん。今、マッドウルフとウルグを相手に戦いましたけど、どうやって倒したのですか?」
「・・・・・マッドウルフは近づいて来た所を回り込んで斬っただけ。・・・・・ウルグは普通に真っすぐ行って斬っただけ。」
<コメント>
■斬っただけってwww
■意味わからねぇwww
■その斬った所が見えねぇwww
■回り込んだってwww
■真っすぐ行っただけってw
■全然見えねぇよwww
■マジで見えんかった。見えた奴いるか???
■見えん。
■目がいい方ですが、私も見えませんでした。
■ソラも見えんかったかw
■見えなかったでごわす!!!
「ハハハ。彼女はですね。とにかく『速い』んです!おそらくですけど、速さだけでいったら、この世で誰も敵わないと思います。」
そう。
ココセはとてつもなく『速い』。
速いのだ。
僕がまだ中学入りたての頃に、やっと出来るようになったから見せてあげると、湖の上を走ったのを見て、目が飛び出る程驚いたのは今でも鮮明に覚えている。
<コメント>
■速いってwww
■見えない速さってなにwww
■肉眼で捉えられないってwww
■どんだけ速いんだよwww
■速すぎwww
■意味が分からんw
■姿ごと消えたからなw
■こんな動きが出来る探索者見た事あるか?
■日本・・・・・いや世界のトップクランでもいないな。
■マジかwww
驚きのコメントがずっと流れている。
「う~ん。そうですね。それじゃココセさんに一回移動してもらいましょう。僕も真剣に見ます。皆さんも頑張って見てくださいね。ココセさん。ちょっと、向こうの岩の手前までモンスターと戦った時と同じ速さで移動してもらいますか?」
僕はココセの後ろへと行くと、カメラを固定させて、一挙手一投足を見逃さない様に、真剣に撮影する。
ココセは頷くと・・・・・消えた。
そして、岩の手前に現れる。
「ココセさん!こっちに同じ様に戻ってきてください!」
するとまた消えて、カメラの目の前に現れる。
・・・・・うん。見えない。
僕はカメラを覗き込む。
<コメント>
■まじかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■だめだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■見えねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■見えないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■視力いいんだよ?私!視力いいんだけど見えないぃぃぃぃぃぃ!!!
■同業の俺でも見えんかった・・・・・。
■だめだ見えない、マジでへこむ・・・・・。
■同業者が落ち込んでて草。
■いや、マジで速すぎwww
■ココセちゃん凄い!!!
■ココセちゃん好き!!!
■ココセちゃん可愛い!!!
いい反応だ。
ココセの凄さを目の当たりにして皆驚いている。
僕達は探索を開始しながら、一階層から二階層へと進み、隣で歩くココセにカメラを向けながら言う。
「ココセさん。出来たらでいいんですけど、次にモンスターと戦う時は、もう少し速さを抑えてくれると助かります。もちろん、危険がない程度に。あと、倒した時に何かコメントもらえると嬉しいです。」
「・・・・・分かった。」
ズズズズズズンッッッッッッッ!!!!!
その時、地震の様な大きな揺れが発生した。
僕達は立ち止まると、揺れが収まるのを待つ。
暫くすると揺れが収まった。
僕は二階層の洞窟をぐるっと撮影する。
「これは・・・・・『揺れ』ですね。」
世界で9ヶ所ある内の8ヶ所のダンジョンで共通してたまに発生する『揺れ』。
この『揺れ』が発生すると、どういう構造になっているのか分かってないが、決まってモンスターが沸く。
探索者協会や日本ギルドでは、この『揺れ』が起きた時は、危険な為、撤退が推奨されている。
<コメント>
■おい!この『揺れ』はヤバくないか?
■えっ?ヤバいって???
■ただの地震でしょ???
■あぁ、一般の人は知らないよな。これはダンジョン特有の『揺れ』で、たまに起こるんだけど、『揺れ』が収まった後に決まって、多くのモンスターが沸くんだ。
■おいおいおい。それってヤバくねぇか?
■ヤバいんだよ!だから『揺れ』が起きたら、すぐに撤退するのが良しとされてる!
■ソラ!どうすんの???
■ソラ!撤退した方がいいんじゃね???
■ソラ!撤退だ!!!
■ココセちゃん!逃げた方がいいよ!!!
すると、先の天井の方から、黒いモノが次々とやってくる。
見ると、格好はコウモリに近い。しかし、大きさは110cm位ある。目が赤く、鋭い牙が見える。
それが無数にこちらへと飛んできている。
そして三階層から二階層へ上がって来たのか、魚人の『ディープ』が大勢向かって来ている。
その群れをカメラでズームする。
「あれは『バイア』ですね。あと『ディープ』もいます。」
<コメント>
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!めっちゃ来てる!!!
■何あれ!コウモリ???でかすぎだろ!!!
■めっちゃ飛んでる!キモッ!!!
■あれはバイアだ!噛まれたら血を吸われるし、簡単に肉を削がれるぞ!!!
■噛まれたら、暫くは病気になって入院したな。やな事思い出したわ。
■あんなに大群。ヤバいだろ!!!
■しかもディープもいるし!!!
■数が多すぎ!!!逃げろ!!!
■逃げて!!!
■ソラ!!!
■ココセちゃん!!!
■逃げるでごわす!!!
凄い勢いでコメントが流れる。
大群を撮影しながらココセに聞く。
「どう?平気?」
「・・・・・ん。」
そう言うと、スッと消えた。
数十メートル先の大群の前にココセは現れると、そのまま両腰にぶら下げているダガーを抜き、空中に飛んでいるバイアめがけてもの凄い早さでジャンプする。
数匹のバイアをダガーで切り裂くと、そのまま洞窟の天井まで行き、足で蹴って方向を変えて、また数匹のバイアを狩っていく。
地上へと着地する瞬間に横へ蹴って、今度は数匹のディープの首を斬りつける。
上に、斜めに、横に、下に。
近くで見たら絶対に目で追えない速さで大群を切り裂いて行く。
まさに縦横無尽。
バイアも、ディープも、ココセの速さに全然ついて行けずに、死骸だけが積み上げられていく。
カメラを回しながら言う。
「ココセさんの動き、何とか見えますね。皆が見える様に、少しスピードを抑えてくれているみたいです。」
<コメント>
■いやいやいやいやwww
■抑えてるってwww
■あんな大群相手にか???
■意味が分からんwww
■確かに何とか見えるけど。
■いや、あんなの速すぎでしょw
■何かピンボールゲームみたいになってるんですけど???
■もう凄すぎて言葉にならんわ。
僕はカメラを少しアップにする。
次々とバイアが斬られて地面へと落ちていく。
ボトボトと。
その光景を見て思わず口にする。
「・・・・・何か雨みたいですね。」
<コメント>
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
■雨じゃねぇよ。
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