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30話 スピカの下層ソロ攻略4
しおりを挟む吐く息が白い。
周りの温度が急激に下がった証拠だ。
でも、徐々に元の暖かさに戻っていくのを感じる。
僕は凍ったギガンテスの足元まで来ると、カメラと一緒に見上げる。
「近くまで来ましたが、これはでかい!さすが巨人ですね!しかも見てください。カッチカチになってますよ!」
カメラと一緒に見上げていた僕は、足元の位置まで戻すと、手で叩いて見せた。
カンッと、硬い物があたる音がする。
<コメント>
■ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■巨人が凍ったぞ!嘘だろ???
■ほとんど一瞬だ!どんだけの冷気を発生させたんだよ!!!
■カッチカチ!カッチカチじゃん!!!
■スピカちゃんすげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■ギガンテスが何もさせてもらえなかったなwww
■スピカちゃんの魔法って、どんだけ強力なんだよwww
■炎系だけじゃなくて、氷系も使えるんですね!他にはどんな系統が使えるんですか?
■流石世界一でごわす!!!
凍っていたギガンテスは、徐々に黒い灰へと変わっていった。
ギガンテスを撮影していた僕に、スピカが近寄ってコメントを覗き込む。
「フフッ。まぁこんなものかな。モンスターが巨大だろうが何だろうが、私には関係ないわ。ん?他にも使える系統の魔法?そうね・・・・・色々あるわ。でも内緒。その方が今後もソラのチャンネルを観てもらう時に、楽しみが増えるでしょ♪」
スピカは、カメラに向かってちょっとだけ屈み、人差し指を立てながら笑顔を見せて答える。
<コメント>
■スピカちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
■いやマジで可愛いんだが!!!!!
■ドキドキが止まらない!!!
■好き好き好き好き好きぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■これからも絶対観る!いや観させてください!!!
■チャンネル登録しました!!!
■リーダーに観ろと言われて観ましたが、スピカちゃんのファンになりました!!!
■私も!!!
■俺も!!!
■同業者のファンが増殖してるwww
■同業者から見ても凄いんだろうなwww
延々とコメントが流れている。
スピカが視聴者コメントによく反応するから、とても受けがいい。
視聴者数を見ると、なんと90万を超えていた。
マジか!
これは大台いくかも!
歩きながらニコニコしていると、スピカが隣で不思議そうに尋ねる。
「ソラどうしたの?嬉しそうな顔をして。」
「ムフフフフ・・・・・うん?聞いちゃう?ねぇ聞いちゃうんだ?なんとね!視聴者数が90万人超えてるんだ!凄くない?あっ!皆さんのおかげですから!ありがとうございます!移動時間にはこれからも出来るだけ答えますからね!」
<コメント>
■おぉ!やったな!!!
■おめでとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■おめ!!!
■ソラ!おめ!!!
■ソラのキモイ笑いw まぁ嬉しいよな!!!
■90万突破おめ!!!
■祝!90万!!!
■これ100万いくんじゃね?
■いやいくだろ!今もどんどん増えていってるからな!
■スピカちゃんのスリーサイズ教えて!
■スピカちゃんの好きな物は何ですか?
■最初からずっと気になってましたけど、レベル0って何ですか?
■あっ、それ俺も気になってた。スピカちゃんがレベル0にもっとも近いとかなんとか。
■そう言われてみれば。たしか探索者のレベルは最高で7だったよな?
祝福コメントが大量に流れる。同時に質問コメントも変わらず流れていた。
「皆さん、祝福コメントありがとうございます!あと【レベル0】ですか?それはですね。探索者の方は知っていると思いますが、公式では、最高レベルは7ですけど、実はその上があるんですよね。」
レベル6。レベル7。下層以降を探索できる実力を持っていると認められた者。
このレベルに達する探索者は、『超人』と呼ばれている。
【レベル0】。
曰く、『人外』。
全世界で認定されている者は、今現在三名のみ。
どんな兵器を使っても、敵わないとされている。
だからこそ、認定されたその三名の報酬は、けた違いに凄まじい。
それぞれの国が大事に抱え込んでいるとの噂だ。
認定基準は、『【深層】の支配者をソロで倒す』事。
それを達成出来た者のみが、『レベル0』へとなれる。
ただ、まずそこまで行く事すら『レベル7』でも非常に困難で、過去【深層】の支配者の所まで行けた者は、『レベル0』の三名を除いて、世界で二チームのみとされている。ちなみに、日本にあるこのダンジョンの【深層】の最奥、支配者がいる所まで行けた者はまだいない。
「・・・・・という事ですね。スピカさんの魔法は探索者の中ではとても有名ですから、実力的に次はスピカさんではないかと言われているんです。」
<コメント>
■へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■レベル7の上があったんだ!!!
■全然知らんかったwww
■人外ってwww
■どんだけ凄いんだよwww
■一般人が知らないのは当然だ。公式で発表されてないからな。まぁ、俺達探索者の中では常識だけど。
■あの人達はもう人間じゃないね。
■この世界の軍隊じゃ、まず敵わないだろうな。
■その凄い人達に近いと言われているスピカちゃんwww
■スピカちゃんって、やっぱ凄いんだな!!!
■ツンツンしてて、可愛くて、最強の魔法使い。萌え条件全て揃ってる!もう言う事なしでございます!!!
■ツンデレ属性持ちのスピカちゃん最高!!!
「ちょっと!ツンデレじゃないって言ってるでしょ!」
スピカがカメラを覗きながら文句を言っている。
ずっとコメントを見ながら歩いていたせいか、結構距離も進み、もうすぐ目的地に着きそうな時、それは現れた。
岩が所々にある、広いダンジョンの通路の真ん中に、一体のモンスターが座っている。
その周りには、他のモンスターのドロップ品や、探索者の人骨などが転がっていた。
僕達を見ると、ゆっくりと立ち上がる。
体長は大人の人間位。全身ローブで覆われていて、顔が見えない。目だけが光ってこちらを見ている。
そして、片手には大きな杖を持っている。
「珍しいですね・・・・・『スペクト』が現れました。」
<コメント>
■スペクトだと???!!!
■下層最強格の一匹!!!
■滅多に遭遇しないモンスターだがヤバイ!!!あれはヤバいぞ!!!
■下層までで確認されている、唯一魔法を使うモンスターだ!!!
■大規模魔法も撃ってくるから、クランが壊滅したって話はよく聞くぞ!!!
■仲間が大勢やられている相手だ!!!
■見かけたらレベル6でも撤退が推奨されている!!!
■そんなに強いの?大丈夫なの???
■下層最強の魔法使い 対 世界最強の魔法使い!!!マジかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■こんな対戦が観れるの?マジで???
■凄い!凄い!凄い!凄い!!!マジ興奮する!!!
■これ!どんなにお金払っても、まず観れないぞ!!!!!
■スピカちゃん!頑張って!!!
■スピカ!頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!燃えるわぁぁぁぁぁぁ!!!
■燃えるでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
僕はスペクトから、隣にいるスピカへとカメラを移す。
スピカはニヤリと笑った。
あっ。これは・・・・・・・。
「ねぇソラ。ちょっと危ないから、岩の影に下がってて。」
そう言うと、スペクトの方へと歩き始めた。
僕は、斜め後ろにある大きな岩の後ろへと隠れて、スピカとモンスターを撮り続ける。
徐々に距離が縮まる。
最初に動いたのはスペクトだった。
杖を掲げると、何かを呟く。
すると頭上に炎の玉が、無数に浮かび上がった。
スペクトは杖をそのまま振ると、一斉に炎の玉がスピカめがけて襲い掛かる。
それを見てスピカは止まると、右手を前に出して呟く。
瞬時に炎の玉が現れると、同じ様に飛んでいき、スペクトの炎の玉に衝突していった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!
粉塵が舞い、火花が弾ける。
すぐにスペクトは、今度は大量の氷の刃を出現させ、スピカへと攻撃する。
同じ様にスピカは、氷の刃を出して、向かってくる刃に衝突させる。
今度は、周りの岩を魔法で砕き、その大量の岩で攻撃する。
同じ様にスピカは、周りの岩を魔法で砕き、向かってくる岩に衝突させる。
とどめに作り上げた光る球体。それをスピカの足元めがけて落とす。
スピカは瞬時に右手に光る球体を出すと、その球体に衝突させた。
ドンッ!ドンッ!ドンッッッッッッッッッッッ!!!ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!
炎。氷。岩。そして爆破。
スペクトは、あらゆる属性魔法を間髪入れずに放った。
それを迎え撃つスピカ。
魔法と魔法の衝突が激しすぎて、ダンジョンが揺れる。
なるべく全ての戦いが映る様に、調整しながら撮影している僕は呟く。
「何て言っていいか分かりませんが・・・・・凄いですね。」
<コメント>
■あぁ。・・・・・しか言えん。
■・・・・・見入っちゃうよ。
■・・・・・凄いとしか言えんわ。
■・・・・・・・。
■ごめん!集中させてくれ!!!
■こんな戦い滅多に観れないから、集中させて!!!
■ごめん!ちょっと黙っててくれ!!!
■静かに!!!
■シャーラップ!!!
スペクトは焦っていた。
どんな敵も、自分の持つ魔法に抗える者などいなかった。
しかし、目の前の敵は、いとも簡単に自分の魔法を打ち消してくる。
ほぼ無詠唱で。
しかも、わざと自分より少しだけ強力にしてぶつけている。
初めてだった。
ここまで圧倒的に力の差を感じたのは。
今はどうやって逃げるかだけを考えていた。
魔法がぶつかり合うその光景は凄まじかった。
観る分だと、こんなに凄いエンターテイメントはないだろう。
カメラをスピカにズームする。
少し笑っていた。
「やっぱり。・・・・・スピカさんちょっと遊んでますね。」
<コメント>
■はっ?
■へっ?
■ほっ?
■何言ってるの?
■遊んでる?
■意味が分からん。
■どういう事???
■はい???
■今何て???
僕は少しだけ引いて、スペクトとスピカが映る様にしてから叫ぶ。
「スピカさん!・・・・・・・遊ばない!!!」
すると、スピカが一瞬止まった。
それを見たスペクトは、同じ様に魔法を止めると、すぐさま後ろを振り返り、一気に駆けだした。
スピカの右手が光る。
右腕を前に出して、走っているスペクトに向かって呟く。
「花火・・・・・・・花雷(はならい)。」
バンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
雷の様な音と共に、強い光がスペクトに落ち・・・・・そして弾けた。
バラバラに弾け飛びながら、黒い灰となっていく。
その様子を撮影しながら、スピカへとズームする。
スピカは僕の方へと振り向くと、いたずらっ子の様な笑顔で舌をペロッとだした。
<コメント>
■ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■スピカちゃん強すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■遊んでたの?ねぇ遊んでたの???
■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■全然相手になってなかったのねwww
■遊んでたってwww
■やっぱり魔法は迫力あるな!!!
■迫力ありすぎ!!!サイコぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■スピカちゃん可愛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■ドキドキする!!!その笑顔にドキドキするぅぅぅぅ!!!
「まったく。スピカさんは。・・・・・おわっ!あでっ!」
僕は遊んでいたスピカにため息をつくと、カメラをスピカに向けながら歩こうとして、岩の破片につまずいて転んでしまった。
「いてててて。今日はよく転ぶなぁ。」
ダンジョン自体が硬いから、転んだだけでも結構危険だ。当たり所が悪いと、ケガをしたりする事があるのだが、僕はそこまで痛くはない。いつもドジな僕は、何故か転ぶ瞬間に、優しい空気の様な物が体を包んで衝撃を和らげてくれるのだ。
何とか、カメラは無事に防いだ。
撮影しながらだと足元に注意がいかないから、気を付けないといけない。
いい経験だと思う事にしよう。
立ち上がろうとすると、スピカが真っ青になってこっちに走ってくる。
近づくと屈んで、心配そうに僕を見て言う。
「ねぇ、大丈夫?傷は?ケガはしてない?」
「あぁ。ちょっとつまずいただけさ。心配してくれてありがとう。」
すると、美しい白い肌を真っ赤にさせて、後ろを向く。
「べっ別に、ソラの心配なんてしてないんだから!・・・・・・はっ!ちょ、ちょっと!今のツンデレじゃないからね!」
<コメント>
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
■ツンデレ頂きました。=50,000円
同じコメントとスパチャが凄いことになった。
「さて!目的地に到着です!」
僕は【ゲート】のある空洞を映す。
スペクトの戦いの後は、すぐに目的地へと着いた。
「では最後に。恒例のコメントの中から質問をしますね!」
コメントがもの凄く流れる。
「スピカさん!視聴者さんからの最後の質問です!魔法使いになろうとしたのは何でですか?」
スピカにカメラをアップにして映す。
-------------小さい頃---------------
「スピカ!昨日のアニメ見た?魔法って凄いね!見てみたいなぁ。」
「・・・・・ねぇソラ。魔法見たいの?」
「うん!」
「そっそう。・・・・・ならしょうがないから、私がなってあげる!」
「ホントに?」
「その代わり、もしなれたらいっぱい褒めてね!」
「もちろん!」
----------------------------------
少しだけ上を向いて考えて、フッと思い出す。
スピカはカメラに向かって、今日一番の笑顔で答えた。
「魔法が見たかったからよ。」
<コメント>
■うひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!=50,000円
■ぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!=50,000円
■きゃわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!=50,000円
■可愛すぎて死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!=50,000円
■マジヤバイ!マジヤバイぃぃぃぃ!!!=50,000円
■貴方の可愛さに参りました。=50,000円
■もう逝く!むしろいっちゃいました!!!=50,000円
■ずっと付いていきます!!!=40,000円
■勉強になりました!!!=40,000円
■ありがとうございます!!!=40,000円
■チャンネル登録しました!=30,000円
■僕も!!!=10,000円
■私も!!!=10,000円
「さて皆さん!どうだったでしょうか!長い時間ご視聴頂きありがとうございました!!!これにて【星空】メンバーの下層ソロ攻略も終了です!来週は、お知らせもあるので、僕だけの雑談ライブ動画となります!攻略じゃないので、お暇な人だけ是非ご視聴ください!最後に、気に入ってくれた方はチャンネル登録をお願いしますね!!!・・・・・それではさようなら!!!『空ちゃんねる』また来週ぅぅぅぅぅ!!!」
エンディング曲を絡ませながら配信を終了させた。
「スピカ!お疲れ様!とても良かったよ!」
僕は水筒をスピカに渡して、屈んで撤収作業を始める。
すると、背中にスピカが抱き着いてくる。
柔らかい感触が、ダイレクトに背中から伝わって来た。
おっふ。
何故か女性陣の時は、いつも最後にサービスタイムがやってくる。・・・・・嬉しい限りだ。
でも煩悩を消さないと。
「ねぇソラ。それじゃ終わった事だし、最初に言った通り、今日は家でゆっくりしよ♪♪♪」
「そうだね。ニコルさんにも久々に会いたいし、早く行こうか!」
僕は、撤収作業を終えると、スピカと一緒にダンジョンを後にした。
帰りも危ないからと、ずっと手を握って戻った。
何故か、危なくないダンジョンを出てからもな!
まぁ、こんな可愛い親友に手を握られて断る男などいないけどね。
応援ありがとうございます!
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