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家族はみんな自分でいっぱい。お爺さまと伯父様がいて良かったです。

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 私は、シャノン・フランメ。フランメ伯爵家の次女。

 妻至上主義の茶髪で青眼の父ステリーとナルシストで自分と自分に似た長女三女が大好きな金髪碧眼の母アンジェラと。
 派手好きで浪費癖のある姉キャンディーとまだ幼いけどやはり派手好きな妹エイミー。

 その真ん中の次女の私は、白に近い真っ直ぐな銀髪で淡い紫色の瞳で彼女たちに言わせると地味らしい。
 一応言わせて貰うと母たちが顔が濃すぎるだけで、私は至って普通のまぁまぁ、そこそこ?可愛いねぇっと言ってもらえる程度である。
 
 こんな感じなので家にいると家族たちは自分に夢中で人に構う事がないので、気に入らなくていじめるとそういったことはない。
 だけど、使用人たちがそんな扱いの娘を見ていれば軽んじても良いと勘違いしたりも一時期あって。

 専属メイドがついていたので被害は無かったのだけど、元々冷めていた私はさらに無表情になっていったらしい。
 5歳になった頃、心配したメイドのナナが家令と執事に相談して、元々祖父ダニエルに使えていた家令が祖父に報告を入れた。

 私が本を読んで過ごしていると聞いた祖父は、伯父の仕事を教える言う名目でたびたび預かることを提案し、私に興味を特に持っていない両親は「そうですか」っと軽く納得したらしい。
 完全に引き離すのはまだ早いだろうという配慮だったが、のちに養子にしても文句が出なかっただろうなと祖父がボヤいていた。
 姉が一時「ズルい!」とか騒いでいたけど、勉強をしてるだけって言ったら、勉強嫌いな姉は文句を言わなくなった。

 その後、祖父の家で家庭教師を付けてもらって教育を受け、伯父には仕事のついでに領地周りに連れていってもらったり。
 ナナに報告だけして家を連日空けても、両親は「そう」と流してくれるので、祖父の家に行ったり、祖父の家に近い街で変装してでたりした。

 伯父のジェイドは父の兄でグランデ侯爵家を祖父から継ぎ、植物を研究しつつ、領地の農業を発展させている。
 早くに妻を亡くし、子がいなかったためにちょっと行き遅れ気味の令嬢や出戻った元夫人、未亡人など全方位から狙われる程度に優良物件なチョイ渋オジなんだけど、研究の邪魔をされるのは不快だって全く相手にしない。でも「それが良い」って頬を染められてて。
 たしかにカッコいいんだけど、ほっとくと髪も髭も伸び放題で研究室からずっと出てこないんだぞーって言いたい。
 祖父も一部の女性に人気。ロマンスグレーで貫禄があって素敵なんだって。

 祖父も伯父も大好きだから、顔や地位が目当ての人になんてあげませんよーだ。
 祖母フローラは私が産まれてすぐくらいに亡くなってる。私の髪や瞳、雰囲気は祖母に似てるから父にあまり好まれないのかもって、伯父は言ってた。私は母の顔より祖母の顔のが好きだから今はラッキーって思ってる。

 同じ血筋なのに父の評判だけイマイチなのは嫁がいるからだけではない気がする。
 祖父と伯父はキリッとした感じで父は良くも悪くもお坊ちゃんって感じ。決して不細工とかじゃないのに何か残念感。
 まぁ私もあの家族の中では残念扱い。ほほほ!いいけど。

 もう一つ困ったのが子供なのにあまりに冷めてて達観している私を心配して、祖父が魔女や魔導師に診てもらおうとあちこち連れてった事。神官だと何か見つかったら神殿に保護か軟禁されちゃうからって。そしてとある村の祈祷師のお婆さんに、
「この子の魂はそれなりに年を重ねているから心配ない。渡り人じゃ。そうさなぁ渡り人にしては特殊な役割はなさそうじゃが・・・違う世界の記憶がこの世界に混ざるだけでも面白い変化か起こるじゃろうて。自由に好きにさせてやるのがええの。神だの何のと利用されんように守っておやりな」
 って、何かさらっと言われた。夢の中で見てた世界がどうも本当に体験してた事らしい。ふーん。

 この世界じゃない世界がよく分からないけど、そのでの記憶が残っているから私は冷めてても心配ないんだって。
 もしそうじゃなかったらあの家族の中で耐えられなかったから、記憶を持っててお祖父様に会えて良かったな。

「何か悩んだり迷ったりしたらまたおいない」
 お婆さんは目尻のシワを深めて笑ってくれた。

 祖父は私の頭を撫でてくれて、
「渡り人は贈り人や転生者とも言われる人のことだ。発見されたら神殿や王家に報告義務がある。だが報告すれば将来の自由が無くなるからシャロンは今日のことは誰にも言ってはいけないよ」
 神官に頼んだり神殿に行かなかったのは、多分予想していた部分があるんだな。祖父に報告しないと罪になるのでは?って聞いたら、
「家族から引き離して神使や神子として利用するか、王家に嫁がされる。それを望む者も多いがわしはそれが幸せになれるとは思わんよ」
 そう言って、村から帰る馬車で道中ずっと抱っこしてくれた。


 家での暮らしは、祖父がテコ入れしてくれてからは使用人に嫌な思いさせられた事もないし、ナナが可愛がってくれるから他のメイドも結構良くしてくれて今は居心地は悪くない。
 ちょっと困ってるのはたまに遭遇する姉が、
「あんた相変わらず地味ね~!これ着なさいよ」
 ってドレスをくれるんだけど姉のドレスはリボンとレースにパフスリーブって典型的な令嬢ドレスでピンク、オレンジ、赤、花柄って言うド派手さ。無理!
 善意でくれても似合もしないドレスは着れないよ。
 シンプルラインで水色や薄紫が好きなので流行りに乗れないとか言われちゃうけど好みくらいほっといて欲しいの!
 まぁそのあと妹が「姉様!ズルい!それ私が目を付けてたのに!!」って大騒ぎするんで優しい姉のふりでこれ幸いとあげちゃってる。お直ししないと着れなくない?

 今のところお茶会やお付き合いのパーティは母が自分と長女三女がチヤホヤされれば満足なので、前日にそっと気配を消して祖父の元に逃亡。
 たまに祖父や伯父の付き合いのパーティに好みのドレスで参加してて。幻扱いになってはいないのでフランメ家の面目も保てているはず。

 

 街歩きをしまくったので顔見知りが出来て、ちょっとだけバイトをするようになった。
 平民は10歳くらいからなりたい職業の見習いになってお仕事するんだって。私はずっと街には出ていられないから、仕事をするとかは考えてなかったんだけど、13歳の時に知り合った友達のデニーと買い食いしてた時に美味しいもの作れるようになりたいなって呟いたら、そのままデニーの両親のパン屋さんに連れてっいってくれて雇ってあげてと頼んでくれた。
 料理屋さんは酒を出すところが多いからお前はダメだけどパン屋ならいけるだろって。
 職業としては無理だろうけどお手伝いくらいならいいだろうって。多分着てるものや仕草でそれなりの家の子供っていうのはバレてたんだろうけど、大らかなご両親は受け入れてくれた。
 初めて作ったパンは持ち帰らせてもらえて祖父と伯父にあげたらちょっと泣かれた。
 
 この頃には前の世界の記憶が何となく理解できて、以前の自分について思い出してきて。
 試してみたい事とか出てきたけど、目立つことはしないって祖父との約束なのでグランデ侯爵家で伯父の研究室の中だけ変わったことをしても良いってことになった。伯父も気づいちゃってたらしい。
  
 街歩きの時はおさげの三つ編みでそばかす書いてデコ出し。
 街のパン屋さんは笑顔が大事!近隣のおばちゃんおじちゃんが可愛がってくれた。
 家族といる時は長めの前髪下ろしてふわっと何となく顔が見える程度にして後ろに一本無造作三つ編み。
 あくまでも地味で通してフランメの娘としての印象は極力残さない。

 祖父はグランデに養子に入ってはどうかって言うけど、貴族として残ると渡り人ってバレたら大変だから、グランデの領地で平民になるか、どこかの街でパン屋さんとか何かやってみるのもありかもしれない。

 両親が全く気にしないのに調子に乗って頻繁に留守にしていたら姉と妹がうるさくなっちゃったけど、基本おしゃれと優良物件《タマノコシ》探しの方が大事な人種なので「はいはい」って流す。

 私が15歳になった時、姉キャンディー18歳、妹エイミー10歳。
 両親がなかなか決まらない姉の結婚に焦り出してフランメ家で頻繁にパーティを開くようになってしまった。
 地味でも引き立て役になれるだろうって絶対に出るようにって両親に言われてしまった。エイミーもお人形みたいに可愛いから客寄せになるって言い出して。キャンディーの婚約者探しならエイミーは幼すぎるだろうに同席させるなんて無茶が過ぎると思ったけど、私の意見なんか聞きはしないんだろうなって流した。
 パーティはある程度顔出してさっさと部屋に戻ればいいか。





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