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19巻
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今日もアースとして「ワンモア・フリーライフ・オンライン」にログインした自分――田中大地は、魔王領の街デコンドで数日ぶりに『ブルーカラー』のメンバーと再会した。
「よう、アース。随分と魔王城に逗留していたようだが、体は治ったのか?」
まずはレイジがこう声をかけてきた。
「やっと、ね。今回も色々無茶をやったせいで、付与された各種バッドステータスがかなりひどかったから、回復するまでに随分時間がかかってしまったよ……何せ回復魔法とかは効かないから、自然治癒するまで我慢するしかないし」
「それにしても、随分と時間がかかったね? バッドステータスがそこまで長引くというのは、いくら何でもちょっと滅茶苦茶なんじゃないの?」
自分の返事に対するロナちゃんの感想も、確かに理解できる。普通のゲームであれば、数日かけてやっと回復するバッドステータスなど滅多にない。
あるゲームには敗北ペナルティというものがあって、二日間ぐらいステータスの最大値から一割から二割ぐらいを引かれた気もするが……これはちょっと珍しい例だろう。
「今回はそれだけ無茶をしたってことだから……特に戦闘終了後のアレがね」
今回のバッドステータスの主な原因は、《黄龍玉》の四連続使用だからなぁ。命を救うためとはいえ、かなりの無茶をしたわけで……あの四人にも、変な後遺症が出てないといいなぁ。例えば髪の毛が金髪に変わっちゃうとか。
「変身関連は予想外の能力を得られることがありますからね。一般的なワーウルフでも、プレイヤー次第で色々と変化していくみたいです。中には、攻撃を得意とするワーウルフでありながら回復を得意とするタイプになった人もいる、なんて噂も聞いています。『ワンモア』は、本当に今までの常識が通用しない世界です」
カザミネが頷きながら言う。
そうか、ワーウルフ一つとっても、そんな風に変化、というか進化していくのか。それを繰り返せば、プレイヤー一人ひとりの変身がオンリーワンになる可能性もありそうだな。
「それでも、あんな頭おかしいレベルの変身を二つも持っているアース君って、やっぱり変よね」
ノーラ、それはないんじゃないか? かといって反論もしにくいなぁ。確かに、ブッとんだ性能を持っている変身、というのは事実だから。と、そういえば……
「ところで話が変わるんだが、ツヴァイ、ミリー、あとエリザの姿が見えないけど、あの三人はどうしたんだ?」
『ブルーカラー』のいつものメンバーの中で、彼らだけがこの場にいない。まさか痴情の縺れとかが発生したか? いやいや、それはないよな?
「あ、その三人は他のギルメンとダンジョンに潜ってるよ。最近、ギルメンの一部が魔王城のダンジョンでもやっていけるレベルになったから、しばらくの間そっちの面倒を見ることになってるの。メンバー全体の底上げをしっかりやっていかないと、いつまで経っても進歩できないから」
と、ロナちゃんが教えてくれた。それならばいいのだが。
さてと、そろそろ自分も行動を開始するか。
「あーそうだ。レイジ、今はもうこれといって自分の手を借りたいクエストとかはないんだな?」
そう確認を取ると、レイジはゆっくりと頷く。まあ、この前のようなデカいクエストがそうそう転がっているわけもないか。
「分かった、それじゃ傭兵契約は一旦終わりってことでいいかな? 炭の一件で自分に絡んできてた連中は魔王領から追放されたから、もうソロでいても問題ないだろうし」
ダンジョンで得られるという新しい素材は気になるが、ここのところ戦ってばかりだったから、ちょっとこの辺で方向性を変えたくなった。特に、魔王領の街は各種商店や宿屋といった重要な行動拠点しかチェックできてない。それだけで街を見終わったとするのは、さすがにもったいないだろう。
「そうか、アースがそう言うのであれば、こちらは構わない。だが、何かあったら遠慮なんかせずにすぐ呼んでくれよ?」
自分はレイジの言葉に頷き、握手を交わす。
「参考までに聞いておきたいのですが、アースさんはこれからどうするのです?」
カザミネからの質問には素直に、久しぶりに街を見て回るつもりだと教えておく。カザミネも「それなら確かにソロのほうが気楽ですね」と納得してくれた。
もちろん知り合いと会話を交わしながら散策するのも楽しいものだが、今は一人でゆっくりしたい気分なのだ。
「じゃ、またね。何かあったらすぐ呼んでよ!」
そんなノーラの言葉を最後に、『ブルーカラー』のメンバーとは別れた。
さてと、戦闘はしばらくお休みしてのんびりしよう。その理由としては、ステータス上からバッドステータスが消えこそしたものの、《黄龍玉》四連続使用の影響は、きっと分かりづらい部分に眠っているんじゃないかと、自分は見ている。
もしその影響が、戦闘中に鎌首をもたげて襲い掛かってきたら、目も当てられない。何せ「ワンモア」だからなぁ、そういったことを平然とやってくる可能性も十分に考慮しないと。
そうして街を歩くこと数十分。人通りはそこそこ多く、道の左右にあるお店からの呼び込みの声も賑やかだ。適当に買い食いをしながら、散策を楽しんでいたのだが……
活気に溢れた街の中、ある店の前でそこの主らしき魔族の男性が腕を組み、両眼を閉じて苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。そんな表情なもんだから、お客さんは一人もいない。
呼び込みの声一つ上げないで、この人は何やってるんだろう? これでは商売にならないだろうに……
「すみません、具合でも悪いのでしょうか?」
そう話しかけてみても、反応はない。死んでる……ってわけではないよな。唸り声も聞こえてくるし……
「すみません、よろしいでしょうか!?」
ちょっと声のボリュームを上げて話しかけてみて、ようやく男性は反応を見せた。
「お、おお。どうしたんだい?」
こちらの声の大きさに驚いたのか、少々慌てたような声色で返事してきた。まあいい、とにかく先程の表情について聞いてみよう。
「随分と暗い表情と難しい表情という二つを同時に浮かべていらっしゃったもので、どこか体の具合でも悪いのではと心配になって、声をかけさせていただいたのですが」
すると男性は、はあっと息を吐き出した後に、その理由を教えてくれた。
「そうか、すまないね。体の調子が悪いんじゃないんだ。うちはある肉を専門で扱ってるんだが、いよいよ店を畳まなきゃいけないかと考えているうちにね……」
やっぱり店主さんだったか。
それにしても、店を畳む、か。まあ商売が立ち行かなくなったら、そうするしかないよな。そして何か他の形で再出発する。もちろん、こんな言葉一つで表現できるような容易いことではないが。
「──ちょうどいい、魔族じゃない人にも試してもらいたかったんだ。これを食ってみてくれないか? もちろんお代はいただかない」
と、店主さんは皿に載せたお肉を出してきた。それならば遠慮なく、と香りを確かめてから口に入れる。
うん、豚肉っぽい味だな。ビミョーに違うみたいだが、大体九割ぐらいは同じ味である。
だが……この肉、硬い。噛むのにいちいちかなりあごに力を入れないといけない。その上、妙に噛み切れない。まるでゴムを噛んでいるような気分になってくる。何だこれは。
「あー、やっぱりダメか……表情で分かるよ。その肉は、ピジャグという動物の肉でな、繁殖のさせやすさから、数年前まで魔族の口にする肉と言えば、それだったんだ」
自分が必死で口の中の肉と格闘していると、店主さんはそう語り始めた。ふむ、これがねえ……
もうちょっと突っ込んだ話を聞いてみようか。それに、この肉にも興味が湧いてきた。試してみる価値があるかもしれない。
「まあ数年前のことは、どうあがいたって数年前のことなんだよな……とにかく今は、いくつもの要素があって、ピジャグ肉の需要ががた減りになってしまっている状態だ」
店主さんはそう言ってため息をつく。ふむ、どんな時代であっても、栄枯盛衰は起こりうるものではあるが。
「見たところ、何が原因なのか知りたいって感じか? 一つ目の大きい理由は、他の家畜の肉を手に入れやすくなったからだ。具体的に言うと、ビーランフの肉だな。ビーランフは今まで繁殖させるのが難しく、食べられるのは相応の金持ちぐらいだったんだが……多少質は落ちるが繁殖に成功した所がいくつか出てきてな。今では、肉と言えばビーランフの肉ってことになっちまってる。味はピジャグだって負けちゃいねえんだが、食べやすさの差で完敗だ。あっちは普通に噛み切れるからな」
自分も時々宿屋で食事をとったし、魔王城でも供されたが、出された料理の肉を噛み切れないということは今まで一回もなかった。つまり、これまで自分が口にしてきた肉は全てピジャグ以外だったわけか。
「二つ目の理由は、魔王様の作り出された魔道具にある。ほら、お前さんも外からの訪問者であれば、首にかけているだろう? アレのおかげで、今まで獲りに行くのが難しかった街の外に生息している各種獣の肉が、それなりに街中で流通するようになった。もちろんだからって魔王様のことを悪く言うつもりは全くないけれども、ピジャグの肉が追いやられる一因になってしまったのは間違いないな」
魔王領の厳しい寒さから守ってくれる効果のあるこのペンダント形の魔道具は、魔力の総量で魔族に劣る他の種族でも使える。それを魔族の人が身につければ、より魔力に余裕が生まれる。そうなれば、街の外までモンスターを狩りに行くことも容易くなるか。
そして、そちらの肉のほうがピジャグより上物であれば、ピジャグを食べるという選択肢はますます隅っこに追いやられる。
生きているうちに食事をすることができる回数は限られている、だからこそ、一回一回の食事で美味しい物を口にしたいと考えるのも自然な話である。
「細かい理由は他にもいくつかあるが……とにかく、味はそこそこ良いものの、硬すぎる、噛み切れない、という難点を抱えているピジャグの肉は、今ではほぼ見向きもされなくなっちまってな……味を懐かしむ老齢の方がたまに買っていくぐらいなんだ」
うーん、硬さや噛み切りにくさが料理にする上で大きくマイナスなのは事実だからなぁ。どんな料理だって、味を楽しめて満腹感を得られるに越したことはない。噛むこと自体が目的のガムじゃないんだから。
逆にそこが解消されれば、このピジャグの肉も十分美味しい料理にできるのは、間違いないのだけれど。
「言っておくが、調理法も色々と試しているからな? その上で焼いて出したんだ。特に、煮たり蒸したりすると、水気を吸い上げて風船のように膨らんでしまう。硬さや噛み切れなさは消えるが、肉の味は薄まって気持ち悪いし、歯ごたえがぶよぶよで最悪だ。伝説の魔物、スライムを口にしたような気分になる」
ああ、やっぱりその辺は試しているのね。というか、伝説の魔物、スライムって……そう言われれば、今までスライム系統のモンスターって一回も出遭った記憶がないな。Wikiにも載っていないし、ゲームのスレのコメント欄で「ワンモア」では出てきてないねーなんて話はあったっけ? 後でもう一回確認しておこう。
「お話を伺う限りでは、なかなかの難物のようですね。しかし、先程味見させていただいた上でお話を聞いておりましたが、この肉をこのまま埋もれさせてしまうのはあまりに惜しい、というのが自分の素直な感想です。少し生肉を売っていただけないでしょうか? 何となく、挑戦したくなりまして」
この自分の申し出に、店主さんは頭をポリポリとかきながら──
「それは構わないが……本当に難物だぞ、こいつは。お金を捨てるような結果になってもいいと言うのであれば売ろう。キロ一〇〇グローでいいぞ、このまま放っておけば、どうせいつかはダメになって捨てるしかなくなってしまうからな……だったら、生まれ変われる可能性に賭けたほうがまだ救いがある」
一キロで一〇〇グローって、完全に捨て値じゃないですか。今はもうそれぐらい見向きもされない食材なのですか。
ふむ、ふむむむむむ。つまりこれは、「どれだけ魔改造しても何の問題もない」ということになるな。そう、かつてのラビットホーンの温水ハーブ仕立てステーキのように。
ただ、今回のお肉は普通に煮たり蒸したりしてもダメだと教えてもらっているから、更なる手を考えなければならないな。だが、どんな食材だって使い道はあるはずだ。ある国では不味いとされるウナギが日本では人気がありすぎて、絶滅の危機に陥っているという例があるではないか。
「ではとりあえず五キロほどいただけますか? それとは別にお願いがあるのですが、もしそれなりに良さそうな料理が出来上がったら、試食をしていただきたいのです。自分では上手く出来たと思ったものでも、他の方が確認するといくつも抜けが見つかることはよくありますから」
魔改造しすぎて、自分以外の人が食べても不味い料理が完成しては意味がない。そのために、まずは魔族の方に味見をしてもらって、好みの味であるかそうではないか、助言をもらいたい。作る、味見、助言をもらう。その繰り返しで、この難物を文字通り調理してやりたい。
「そりゃ構わないが──そうだな。確かに俺は、この魔王領から外に出たことはない。それどころか、この街から外に出たこと自体、数えるくらいしかない。もしかすると、この難物も外から来た人にとっては何とかできる手段を持っている可能性がある、か。もし試作品が出来たら、いつでも持ってきてくれ。必ず試食して、その上で不満点や問題点があれば誤魔化さずに言わせてもらう。そうしてピジャグに新しい可能性がないと判明するそのときまでは、この店を閉めないことも約束する。何でもいい、出来上がったらじゃんじゃん持ってきてほしい」
握手を交わして、契約は成立、と。
早速譲ってもらった五キロのピジャグの肉をアイテムボックスに入れて、室内で調理ができる宿屋を探した。
宿屋はあっさり見つかった。しかも、何で調理をしたいのかと宿屋のご主人に聞かれ、ピジャグの肉を美味しく食べられるようにできないか色々と試してみたい、と答えたら、代金が半額になった。
どうやらここのご主人はピジャグ肉のファンらしいが、やはりあの噛み切れなさと硬さという要らん要素を兼ね備えてしまっているために、普段はあまり口に入れる気がしないとのこと。
「味が多少落ちてもいいから、もうちょい食いやすくなれば文句はないんですけどねぇ。ビーランフの肉も悪くはないんですがね、私は味ならばピジャグの肉のほうが好きなんですよ。もしいい料理が出来たら、ぜひ試食させてもらいたいですね」
ということで、代金半額の代わりに、試作品が出来たらこちらの宿屋のご主人にも試食をしてもらうことになった。こういうのは試してくれる人数が多いほうがいい。よりデータが取れるからね。
さて、そんな予想外なところからも期待がかかった、ピジャグの肉の新しい調理方法だが……まずはダメになると言われた、煮る方法と蒸す方法をやってみた。もちろん使うピジャグの肉は最少限。あくまでどうなってしまうのかを確かめるためで、実験に近い。一度は自分の目で見ておかないと、分からないこともあるからね。
そして五分後。どちらの調理法でも、お肉は野球ボールみたいにまん丸く膨らんでいた。事前に話を聞いていなければ、なぁにこれ?と言いたくなるくらいの変貌っぷりである。
食べ物を粗末にするわけにはいかないので、ちょっとした焼肉のたれを調合して食べてみた。その感想は……
(うーんと、なんだろう。完全に味の抜けたガムを、数枚一気に口に入れて噛んでるような触感……ただ、以前食べたときのような硬さも噛み切れなさもないな。おそらく、煮る、という調理法自体は正解に一番近いのではないだろうか。ただ、何でこう膨らんでしまうのか。そこが解明できればきっと形になりそうだな……何か、似たような現象に心当たりはないだろうか?)
膨らむものと言えば、風船が真っ先に思い浮かぶ。食べ物なら餅か。しかしなぁ……風船は空気を抜けばしぼむし、餅の膨張も一時的なものでしかない。だが、このピジャグの肉は冷めるまで放置しても全く縮まない。本当にどういう肉なんだ?
とはいえ、今度は焼いたり炒めたりしてみると、どんなに細かく切っても硬くなるわなかなか噛み切れないわと、やはりゴムのようになってしまう。だからやはり、煮るという手段しかないようだ。
(まあ膨らむ大きさが最小限に収まれば、もっとましになるんだろうけど。何かヒントはないかな……膨らむ大きさ? 膨張率? 待てよ、そうだ、浸透圧ってものがあるじゃないか! もしかすると……お酒とか、何かしらのタレやソースでもいい、その手の濃度が高いもので煮れば、この肉だってこんなボールのように膨張することはないんじゃないのか?)
そもそも料理において、タレや調理酒、ソースというのは基本中の基本だ。手に入るものを全部試してみる価値はある。よし、その辺を攻めてみよう。
2
それから数日かけて、魔王領で気軽に手に入るお酒類やジュース類を偏見なしで全部試してみた。酒類だけでなくジュースも試したのは、コーラでスペアリブを煮るという手を知っていたからだ。
ちなみに、魔王領で気軽に手に入る物に限定したのにも、もちろん理由がある。それは、今後あのお店が店を畳まずに済む未来を作りたかったからである。
もし他の国から取り寄せないといけない材料を使って料理を完成させた場合、運送費や手間がバカにならず、コストが跳ね上がってしまう。
一部の人しか口にできない高級品では、ピジャグの肉を見直すきっかけになりにくい。なるべく多くの人が、気軽な金額で口にできるものにしなければ……
そうして色々試した結果、ようやく一品だけ、膨らまず、硬くならずに仕上げられた。味のほうも、試作品と考えればまあまあ、か?
【ピジャグのレッドエキス煮込み】
ピジャグの肉をレッドエキスで煮込んだ一品。
ピジャグの肉の欠点をほぼ打ち消した一品ではあるが、物足りない点がいくつかあるのも
否めない。
製作評価:4
製作評価はまだ低いのだが、大きく一歩前進したと言っていい品である。
煮込むのに使ったレッドエキスというのは、魔王領で販売されている中で『一番の安物』の赤ワインである。まさか一番の安物が一番マッチするとは予想外だったが、コストを抑えたい自分としては非常にありがたかった。
だがこの料理、やはりピジャグ肉の美味しさを完全に引き出しているとは言いがたい出来でもある。
煮込んでいるうちに、肉の旨みがレッドエキスの中に逃げ出してしまうらしいことに加えて、レッドエキスが肉に染み込みすぎるらしく、赤ワインの味がちょっと前に強く出すぎるのだ。
とはいっても、他の試作品だと評価が1とか2ばっかりの不味いものしか出来上がらなかったので、レッドエキスで煮込むという方針自体は変更できない可能性が高い。
(この問題さえ解決できれば……ピジャグの肉はもっと美味しく食べられるようになる。現実世界の豚肉の柔らかさと噛み切りやすさに近くなってきた。まずは普通に食べられるという点をクリアできたのは大きい。あとは、いかにピジャグの肉の味を生かすかなんだが)
そう考えつつ、実は、魔族の皆さんに食材をお酒で煮て食べる方法が受け入れられるのか、という問題があった。
ここは、宿屋のご主人と肉屋の店主さんに食べてもらって、感想を聞いたほうがいいな。もしこのやり方を嫌がられるとしたら、また一から出直しになってしまう、二度手間にしないために、しっかりと確認しておこう。
「すみません、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
まずは宿屋のご主人に声をかけ、【ピジャグのレッドエキス煮込み】を口にしてもらう。もちろん、お酒を使って煮込んだことは事前に伝えた。
さて、どんな感想が返ってくるか……
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