風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-

Keitetsu003

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女を黙らせるにはこうするんだろ? 前編 朝乃宮千春SIDE

2/8 - BAD END - 怠慢

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 か、可愛ええええええええええええええええええええ!
 狸寝入り顔負け……ほんまに寝てもうた。
 よほど嫌やったんやろな……。

 けど、今の特訓でいろんな情報を得た。
 桜花ちゃんは他の子供と比べて、身体能力も頭脳も下。平均以下。
 特筆した才能は見当たらへん。要領が悪い。
 つまり、才能がない平凡以下の子。

 だからこそ、ウチは……安心して桜花ちゃんのそばにいられる。
 そう……安心できる……。

「堪忍な~桜花ちゃん」

 ウチはそっと桜花ちゃんの頭をなでる。
 すると……。

「……ママ~もうたべられないよ~」

 おやくそくぅううううううううううううううううううううううううう!
 ウチは何度も優しく頭をなでる。

 堪忍な、桜花ちゃん。でも、明日は期待してな。
 服もおもちゃも買ってあげるからな~。
 ウチはそっと部屋を出た。



 さてと……ウチはそそくさと部屋に入り……。

「明日……何を着ていこ……」

 ウチはクローゼットの服を見て、呆然としていた。
 で、デートって何を着ていけばええの? 相手の好みに合わせるべき? 自分らしく?
 それとも、グーグレ先生のAIが出した何のおもろみもない無難な服装にするべき?

 絶対に失敗しない服、とか書かれているサイトにあるデートコーデ?
 世代別や季節感のある、デート場所に合わせた服?

 可愛い系? 綺麗系? ナチュラル系? フェミニン系? エレガント系? キレカジ系? コンサバ系? トリート系? モード系? ボーイッシュ系? B系? ノームコア系?
 メイクは? 靴は? 髪型は? アクセは?

 そもそも、どこに連れてってくれるの? それに合わせんと浮かへん?
 わ~~~か~~~ら~~~へ~~~ん!

 政界の派閥パーティーや大統領の懇親パーティーには着ていく服なんて悩んだことないのに、一人の男の子とのデートに着ていく服が検討つかへん!

 そういえば、藤堂はん、着物が似合っていたって言ってなかった?
 せやったら、着物で……って、初デートに着物とか! チャレンジャーすぎひん!
 頭おかしいとかドン引きされへん?

 どないしよ! ああっ~~~~準備期間が短い! 短すぎる!
 こんな落とし穴があるやなんて知らへんかったぁあああああああああああああああ!
 せめて一日! もう一日あれば!
 あああああああああああ~~! もぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~!

 あかん! 落ち着き! 対策を考えるんや!
 ウチ、勘違いしてかも。

 デートは男がデートコースを決める。これは当然やと思っとった。
 ウチを楽しませようとしてくれる配慮と気遣い、ウチのことをどれだけ想ってくれるかが分かるのがデートやと思っとった。

 けど、いざ、デートとなると、主導権を相手に握られるのはいろいろと不都合があるわ。
 せっかく、最高のコーデや化粧、靴といったものを用意できても、デートコースにあってなければアウト。

 例えば、藤堂はんがウチが好きなグループのライブを考えていた場合、会場がオールスタンディングの場合は基本的にスカートはマナー違反って聞くし。
 それやと、ノームコアかストリートが無難やと思うんやけど……ウチ、普段は着てないし、意外性があるかもしれへんけど、なるべくなら着慣れた服がええっていうか、一番綺麗に思われる服がええかもって思うし気合いも入る。

 ウチ、指摘席でしかライブは見ないけど、デートの場合はそうも言われへん。
 ウチが会場に口出しして、VIP席とか用意したらスカートでも問題ないんやろうけど、誘った藤堂はんは絶対にドン引きか劣等感をもたれかねへん。
 個の主張が強いと嫌われるリスクが高い。それやと、デートはマイナスでしかない。デメリットの回避は当たり前。

 デートコース。
 この情報が必勝の最低条件。朝乃宮家は必ず勝たなければならない。
 敗北は死。
 決して大げさな表現やない!

 もし、コーデに失敗して周りから浮いたら、藤堂はんの評価も下げることになる!
 それは学校内や外での朝乃宮ブランドにも傷がつく!
 築き上げたモノが崩れるし、その後の交渉にも影響が出る!

 考え! 何が正解や!
 くっ! こんなことなら、デートの予習しとけばよかった!
 けど、相手がおらん!

 どうでもええ相手やったら、無難なコーデにするし、緊張感も違う。
 藤堂はんが相手やから悩むんや!

 藤堂はんはそこまで考えてない……男全般はそう思うとるけど、女は違う!
 逆に肩肘張るな、気楽に行こうって言われると、ウチはプライドが傷つく!
 少なくとも、ウチが失敗するのはあかん! 藤堂はんが失敗すれば、御の字。

 ウチは優しく、気にしてません、次期待してます、アナタとならどこでも楽しいです……とか、上から目線でマウントとれるし!
 それにこれからの力関係も影響する! 優位に立てる!

 あ、あかん……デート……舐めてた……これは戦いや……。

 ぴろ~~ん♪

「……」
『そこまで考えてるの、千春だけWWW』

 妹のあおりを気にしてる場合やない!
 こうなったら、リサーチや! 分からへんのなら、相手から情報を得て、対策すればええだけ!
 彼を知り己を知れば百戦殆からず、やで!

 そうと決まれば、即行動!
 藤堂はんのバイトが終わった後、一緒に家に帰るまでの時間が勝負。今なら余裕で藤堂はんのバイトが終わるのに間に合う!
 全く! 藤堂はんには困ったもんや。
 いきなり遊びに行くとか、ありえへん!

 ぴろ~~ん♪

「……」
『鬼かWWW』

 分かっとるわ! ただの八つ当たりや!
 ウチはすぐに用意をしてマンションを出た。



「……寒い」

 はぁ……失敗や……お風呂入ってメイク落とした後に外に出るやなんて、面倒すぎる……。
 吐く息が白くて、それだけでも憂鬱な寒さや……。
 はよ、迎えに行こ……。

「おい、朝乃宮。奇遇だな」
「……誰もいない夜道で女の子に声かけるやなんて野暮なお人やね、仙石はん」

 いきなり声をかけてきたのは、仙石和志とその取り巻き十人。
 面倒なことになった。
 ただの挨拶……。

「ちょうどいい。藤堂ぶっ殺す前にてめえを叩きのめす!」

 で終わるわけもなく、喧嘩を売ってきた。
 はぁ……面倒すぎる……。
 デートのことと藤堂はんを迎えに行くことしか考えてなかったから、戦闘には不向きな格好で外に出たのが失敗やった。このブーツでは思いっきり戦えへん。

 武器は木刀だけ。アレはあるけど、なるべくなら使いたくない。
 それでも、勝てなくはない。
 応援を呼ばれへん限りは……。

「ほんま、野暮なお人やね。女の子相手に複数人で襲いかかってくるやなんて」
「安心しろ、俺一人で……」
「見つけたぞ!」

 今度はなに?
 まるで出待ちしていたかのようにゾロゾロと男達が出てきた。
 赤いジャケット……もしかして……。

「俺達ツイてるな! 手間が省けた」
「俺達はレッド……」
「おい、いちいち名乗らなくてもいいだろうが。今から全員処刑するんだからな。特に朝乃宮、てめえは徹底的に叩きのめす!」
「前の雑魚達と同じだと思うなよ。今日はナンバーズもいるぜ。五人もな!」

 レッドアーミー……。
 はぁ……ウチの忠告、聞いてもらえへんかったみたいやね。それならもう……。

 ウチは頭を切り替える。
 レッドアーミーは実力者と数でウチを潰そうとしてる。
 ざっと見ただけで五十人はいる。流石に手持ちの武器では対応が難しい。

 せめて、『死作無蟲』があれば……。
 こうなったら……。

「仙石さん! どうします!」
「はき違えるな! 俺の敵はあくまで朝乃宮と藤堂だ! 邪魔するのなら両方ぶっ潰す! 応援を呼べ! 俺と朝乃宮の喧嘩を邪魔させるな!」
「応!」

 敵の敵は味方……ってわけにはいかなさそう……。
 逃げるのも、敵の数が多すぎて無理。背を向けるリスクが高い。

 子に連絡しても、今からやと期待出来そうにないわ……詰んでる……。
 これはウチの怠慢が招いたこと。普段なら絶対にしない凡ミス。

 藤堂はんに綺麗な姿を見て欲しくて、敵の対策を怠った。
 恋ってほんま、視野と警戒心が狭くなる。そのせいで、絶望的な状況にまで追い込まれた。

 どこまでやれるか分からへんけど、やるしかないわな……明日、デートやったのに……。
 ウチは仙石グループとレッドアーミーと強制的に喧嘩することになった。



「……す……は……のみ……だね……まで……とは」

 声が……聞こ……える。
 耳鳴りが……する……体が……まもと……に動か……せへん……。

 結局……全員と……戦う……羽目に……なって……もう……た……。なんとか……殲滅……できた……けど……代償が……大き……す……ぎ……ダメージが……大き……すぎ……る。
 これやと……明日ので……と……もう……無理……や……。
 たの……し……みに……して……た……のに……な……。

「……も……で……最大……を……排除……た……キミは……を……せた……それ……の……だ……」

 この……声……そっか……これは……ウチの……ミス……や……。
 さっさと……排除……すれ……ば……よか……った……。
 意識が……保て……へん……気配……は……一人……せやったら……最後の……力で……。

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」

 これ……が……最後……ウチの……切り札……あか……ん……もう……意識が……。
 強い……衝撃が……蹴ら……れて……る……耐え……ら……れ……へん……。

「……」

 藤堂……はん?
 それが最後に聞いた言葉やった……そして……二度と藤堂はんと一緒にいられなくなった……。



  - BAD END - 不意打ち


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 アドバイス


 千春が再起不能にまで傷つけられたのは、仙石グループとレッドアーミーを同時に相手してしまったことだ
 そして、千春が傷ついたことで、正道の未来にも大きな影響を与えてしまう結果となり、二人は永遠に別れてしまう事に

 この未来を回避するには朝乃宮がマンションから出ないことが必須条件となる
 それと、正道が無事にマンションに帰られるよう、仙石グループかレッドアーミー、どちらかを味方につける必要がある
 どちらを味方につける事が出来るのか? どうすれば、味方につくのか?
 それは千春が夕方見かけた、御堂への対応と、ある人物の協力、そして、正道がバイト先で仙石に質問された回答によって未来が変わるだろう


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