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最終章
最終話 ネリネ
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「ごちそうさまでした!」
「……」
「……」
「……なによ、剛、パパ。私の顔に何かついてる?」
いつもと変わらない朝。
剛とパパが私の顔をジッと見つめてくる。何が言いたいのかは分かるけど、私はあえて無視した。
「いや……別に……」
「うん……別に」
「そう……」
私は朝食のお皿を台所へ持っていく。台所でママにお皿を渡すと……。
「ほのか」
「なに、ママ?」
「……背、伸びた?」
私は苦笑しつつ、その場を離れた。
「いってきます!」
勢いよくドアを開け、外に出るけど……さむぅ!
青島祭が終わって、熱気が冷めたせいもあって、外はとても寒い。マフラーかコートを夭死した方がいいかも。
でも、学校指定のコートって可愛くないんだよね。よっちーや詩織はどうするのか、きいてみよう。
私はふと空を見上げた。
雲一つない快晴で、こういう天気を小春日和っていうらしいよ。春って文字がついているのにね。
獅子王さんはどうしてるのかな? 遠く離れていても、同じ空の下にいるから繋がっているよね?
私は昨日の事を思い出していた。
青島祭の翌日、振替休日で私は久しぶりに目覚ましをつけずに惰眠をむさぼっていたんだけど、先輩から獅子王さんがニューヨークに行ってしまうことを聞かされた。
先輩のおかげで獅子王さんと出会う事は出来たけど、引き留めることはかなわなくて、結局、ニューヨークに行ってしまった。
そして……。
「……やだな。もう、吹っ切ったと思ったのに」
私はぐしぐしとこみ上げてくる涙を拭った。
そう、私は先輩と別れた。私からフッてあげたんですけどね。
その後、私は先輩と一緒に青島に戻って、そのまま別れた。先輩は何か言いたげな顔をしていたけど、家に着いたらもう限界。
私はすぐに自分の部屋に戻って泣いた。
泣いて、泣いて、一日中泣いた。
でも、そのおかげで気分はスッキリ。完全に吹っ切れた。
ごめん、嘘。まだ、先輩の事を考えると胸の奥がいたい。
けど、後悔はしていない。私の決断は間違っていなかったと思っている。
先輩はいつも、私のことを助けてくれた。だから、今度は私が先輩を解き放つ番。これでよかったの。
自己満足かもしれない。きっと、理解してもらえないのかもしれない。でも、それでもいい。
だって、これは私の恋だから。
あっという間の二ヶ月だったよね。
ハーレム騒動から始まって、同性愛、失恋、青島祭……いろんなイベントが押し寄せてきた。
その間、私はモブではなく、メインキャラだったと思う。
特に同性愛問題からは主人公ってカンジ。この私がだよ? 腐女子で何の取り柄もない私が物語の主人公になれた。
人生って本当に不思議。
今、急に思い出したんだけど、私、高校受験の一日前に青島中央神社でお願いしたんだっけ。
素敵な恋ができますように。
イケメンパラダイス学園のようなイケメン三十人に囲まれた空前絶後な物語のヒロインになりたいって。
イケメンパラダイス学園は、当時私が夢中になっていたドラマのお話で、男子校に女の子が性別を偽って潜り込むお話。
受験前なのに、何をお願いしているのって自分でもツッコミを入れたかったお願いだけど、叶っちゃった。
もしかして、受験で頑張っている私のために、神様がそのお願いを叶えてくれたのかな? それはないか。そもそも、神社に神様っているんだっけ?
「おはよう、ほのか」
「おっす、ほのか」
「るりかに明日香? どったの、朝から」
気がつくと、るりかと明日香が私の家の前まで来ていた。
二人は私の顔色を窺うように心配げに見つめてくる。
ああ、なるほど。そういうこと。
「ありがとね、るりか、明日香。私は大丈夫だから」
そう、これだけは言える。
もう、大丈夫だから……。
一度失恋した経験があるからかもしれないけど、今度の失恋は私が納得した形で終わらせたから、一度目に比べたらたいしたことはなかった。一日泣いたのはご勘弁を。
だから、笑顔でVサインする。もう、これ以上、親友に心配かけたくないから。
「……ほのか……あんた、成長したわね」
「嬉しいし……やだ……目に汗が……」
「だから、あんたらは私のママンか! その上から目線がムカつく!」
私はべえっと舌を出しながら、二人の輪の中に入っていく。
こうして、私はいつもの日常に戻った。
私の物語はこれでおしまい。
モブの私がヒロインになって、恋をして、漫画やドラマのような物語を体験した貴重な時間。
かけがえのない時間。
最後はハッピーエンドにならなかったけど、でも、頑張った方だよね?
だって、先生や風紀委員に立ち向かったんだよ? 勝ったんだよ? これってよくよく考えたらすごくない? まあ、みんなの助力があったからなんだけどね。
それと、先輩……。
私は一番最愛の人の顔を思い浮かべる。
今はまだ少し辛いけど、きっと、いい思い出になれると信じている。だって、先輩との恋は本当に楽しくて、せつなくて、私の退屈な毎日をキラキラさせてくれた素敵な恋だから……もう、後ろを振り向かない。
先輩、沢山の素敵な思い出、ありがとうございました。
私達はゆっくりと通学路を歩いていく。
暖かなお日様のひかりが、私達を照らしてくれていた。
ーHONOKA END?ー
「……」
「……」
「……なによ、剛、パパ。私の顔に何かついてる?」
いつもと変わらない朝。
剛とパパが私の顔をジッと見つめてくる。何が言いたいのかは分かるけど、私はあえて無視した。
「いや……別に……」
「うん……別に」
「そう……」
私は朝食のお皿を台所へ持っていく。台所でママにお皿を渡すと……。
「ほのか」
「なに、ママ?」
「……背、伸びた?」
私は苦笑しつつ、その場を離れた。
「いってきます!」
勢いよくドアを開け、外に出るけど……さむぅ!
青島祭が終わって、熱気が冷めたせいもあって、外はとても寒い。マフラーかコートを夭死した方がいいかも。
でも、学校指定のコートって可愛くないんだよね。よっちーや詩織はどうするのか、きいてみよう。
私はふと空を見上げた。
雲一つない快晴で、こういう天気を小春日和っていうらしいよ。春って文字がついているのにね。
獅子王さんはどうしてるのかな? 遠く離れていても、同じ空の下にいるから繋がっているよね?
私は昨日の事を思い出していた。
青島祭の翌日、振替休日で私は久しぶりに目覚ましをつけずに惰眠をむさぼっていたんだけど、先輩から獅子王さんがニューヨークに行ってしまうことを聞かされた。
先輩のおかげで獅子王さんと出会う事は出来たけど、引き留めることはかなわなくて、結局、ニューヨークに行ってしまった。
そして……。
「……やだな。もう、吹っ切ったと思ったのに」
私はぐしぐしとこみ上げてくる涙を拭った。
そう、私は先輩と別れた。私からフッてあげたんですけどね。
その後、私は先輩と一緒に青島に戻って、そのまま別れた。先輩は何か言いたげな顔をしていたけど、家に着いたらもう限界。
私はすぐに自分の部屋に戻って泣いた。
泣いて、泣いて、一日中泣いた。
でも、そのおかげで気分はスッキリ。完全に吹っ切れた。
ごめん、嘘。まだ、先輩の事を考えると胸の奥がいたい。
けど、後悔はしていない。私の決断は間違っていなかったと思っている。
先輩はいつも、私のことを助けてくれた。だから、今度は私が先輩を解き放つ番。これでよかったの。
自己満足かもしれない。きっと、理解してもらえないのかもしれない。でも、それでもいい。
だって、これは私の恋だから。
あっという間の二ヶ月だったよね。
ハーレム騒動から始まって、同性愛、失恋、青島祭……いろんなイベントが押し寄せてきた。
その間、私はモブではなく、メインキャラだったと思う。
特に同性愛問題からは主人公ってカンジ。この私がだよ? 腐女子で何の取り柄もない私が物語の主人公になれた。
人生って本当に不思議。
今、急に思い出したんだけど、私、高校受験の一日前に青島中央神社でお願いしたんだっけ。
素敵な恋ができますように。
イケメンパラダイス学園のようなイケメン三十人に囲まれた空前絶後な物語のヒロインになりたいって。
イケメンパラダイス学園は、当時私が夢中になっていたドラマのお話で、男子校に女の子が性別を偽って潜り込むお話。
受験前なのに、何をお願いしているのって自分でもツッコミを入れたかったお願いだけど、叶っちゃった。
もしかして、受験で頑張っている私のために、神様がそのお願いを叶えてくれたのかな? それはないか。そもそも、神社に神様っているんだっけ?
「おはよう、ほのか」
「おっす、ほのか」
「るりかに明日香? どったの、朝から」
気がつくと、るりかと明日香が私の家の前まで来ていた。
二人は私の顔色を窺うように心配げに見つめてくる。
ああ、なるほど。そういうこと。
「ありがとね、るりか、明日香。私は大丈夫だから」
そう、これだけは言える。
もう、大丈夫だから……。
一度失恋した経験があるからかもしれないけど、今度の失恋は私が納得した形で終わらせたから、一度目に比べたらたいしたことはなかった。一日泣いたのはご勘弁を。
だから、笑顔でVサインする。もう、これ以上、親友に心配かけたくないから。
「……ほのか……あんた、成長したわね」
「嬉しいし……やだ……目に汗が……」
「だから、あんたらは私のママンか! その上から目線がムカつく!」
私はべえっと舌を出しながら、二人の輪の中に入っていく。
こうして、私はいつもの日常に戻った。
私の物語はこれでおしまい。
モブの私がヒロインになって、恋をして、漫画やドラマのような物語を体験した貴重な時間。
かけがえのない時間。
最後はハッピーエンドにならなかったけど、でも、頑張った方だよね?
だって、先生や風紀委員に立ち向かったんだよ? 勝ったんだよ? これってよくよく考えたらすごくない? まあ、みんなの助力があったからなんだけどね。
それと、先輩……。
私は一番最愛の人の顔を思い浮かべる。
今はまだ少し辛いけど、きっと、いい思い出になれると信じている。だって、先輩との恋は本当に楽しくて、せつなくて、私の退屈な毎日をキラキラさせてくれた素敵な恋だから……もう、後ろを振り向かない。
先輩、沢山の素敵な思い出、ありがとうございました。
私達はゆっくりと通学路を歩いていく。
暖かなお日様のひかりが、私達を照らしてくれていた。
ーHONOKA END?ー
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