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第六十六話

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「なかなかの速度と威力だね。でもその程度じゃ、僕のゴーレムは倒せないよ」

瞬時に生み出したゴーレムで俺の魔法を打ち消したブロンテが楽しくてたまらないと言うようにそう言った。

「もっと全力で来なよ。まさかこれが本気ってわけでもないんだろ?」

「…」

挑発のつもりなのだろうか。

わからないが、あからさまな手加減が必要ない相手でないことはわかった。

もっとも魔法に秀でた皇子と呼ばれるだけあって、ブロンテの実力は、他の魔術学院の生徒とは一線を画していた。

「ファイア・ボール」

俺は少し込める魔力を上乗せし、もう一度火球を放つ。

ビシュッ!!

「おお…?」

火球は鋭い音と主にブロンテのゴーレムを凹ませて、粉々に破壊する。

ブロンテが驚いたと言うように目を見開いた。

「すごいね…!!まさかこうも簡単に僕のゴーレムが破壊されるとは…!」

がっかりしたような素振りはない。

むしろブロンテは心の底から戦いを楽しんでいるようだった。

「だったらこれならどうかな?」

ブロンテが魔法を使う。

『『『ウゴォオオオオオ!!』』』

地面から三つの土塊が盛り上がり、ゴーレムの形を成す。

「行け…!!三体同時攻撃だ…!!一体一体が、さっきよりも強度が上だよ!!」

『『『ウゴオオオオオオ!!!』』』

ブロンテの命令を受けたゴーレム三体が、こちらに向けて突進してくる。

「ファイア・アロー…ホーミング」

俺は魔法で火矢を生み出し、魔力を込めて威力と強度を向上、さらに魔法を追撃モードに改変する。

「貫け」

生成した火矢を解放すると、こちらに向かってくる三体のゴーレム目がけて剛速で飛来する。

直後、鋭い音が三発同時に鳴り響き、胴体に穴の空いた三体が地面に倒れ伏した。

「な…」

ブロンテが目を見開いた。

先ほどまでの余裕の笑みが消え去り、驚きの表情となっている。

「今の…魔法は一体…?」

改変魔法を知らないのだろうか。

俺と倒れたゴーレムを交互に見ている。

「まるで火矢が意志を持ったように……僕のゴーレムたちを……相当な魔力を込めて作ったのだが…」

「そろそろ満足しましたか?」

皇族相手に本気を出すわけにもいかない。

怪我をさせてもまずいし、俺の目的はあくまでブロンテに勝つことではなく魔導祭で優勝すること。

俺はブロンテが満足したのなら、早々にこの戦いを切り上げたいと思っていた。

「くっ…ぼ、僕をみくびるなよ…まだまだ実力の半分も出していない…!!」

「…」

ムキになったのか、悔しげな表情でそう言うブロンテ。

「君の魔法の威力はわかった……だったら…もっと魔力を込めて、もっとゴーレムを作ればい
い…!!」

爆発的な魔力がブロンテの体から放たれる。 

どうやら魔法が得意の皇子様は、単に技量だけでなく体内魔力量もかなりのものらしい。

「うおおおおお!!!」

ブロンテが雄叫びをあげる。

「…」

あちこちで地面から土塊が盛り上がり、ゴーレムが生成される。


ブロンテは魔力の大部分を使い、早速勝負をかけてきたようだった。

「ははははは!!見ろ、僕の力を!!ゴーレムの軍勢…!!一体一体が、中級モンスター並みの強さを持つんだ…!!」

『『『『『ウゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』』』』』

ゴーレムの鳴き声があちこちで上がる。

俺を囲むようにして軽く百体を超えるゴーレムの軍勢が、迫ってきていた。

「行け…!!そこの男を…アリウス・エラトールを仕留めろ!!」

『『『『『ウゴゴゴゴオオオ!!!』』』』』

ブロンテの命令でゴーレムたちが一斉に突っ込んでくる。

「ライトニング・ソード」

俺は光の剣を手に、たった1人、ゴーレムの軍勢を迎え撃つ。


数分後。


「ほい」

『ウゴッ!?』

最後のゴーレムに俺はトドメを刺した。

図太い胴体に風穴を開けられたゴーレムが、ボロボロと崩れて土に戻る。

「終わりか?」

俺は周囲を見渡した。

そこらじゅうで倒れたゴーレムが土に還っていく。

ブロンテが大魔力を使って生み出したゴーレムの軍勢を、俺は5分とたたずに倒し切った。

ゴーレムの強さは、ブロンテ本人が言っていたようにせいぜいが中級モンスター程度だった。

一気に生み出したせいか、強度もそこまで硬いわけではなく、また、ゴーレムなのでそこまで素早い動きも出来ない。

俺はゴーレムたちの攻撃を避け、軍勢の間を縫うようにして戦い、結局一撃すらもらうことなく掃討することに成功した。

「嘘だ…僕の軍勢が…そんな…」

ご自慢のゴーレムの軍勢を全滅させられたブロンテは呆然としている。

「ふむ…」

俺はそんなブロンテを見据えながら、その実力に評価を下す。

「エレナよりは弱いな…」

元帝国魔道士団の魔法使いとまだ幼い皇族を比べるのは酷かもしれないが、俺は少しブロンテの実力にがっかりしていた。







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