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第三十二話

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俺は廊下を歩き、昇降口から校舎を出た。

後ろから藍沢もついてくる。

「はっ…はっ…」

「…」

ずっと食糧もなく隠れていて体力が限界に近いのか、藍沢の足取りは遅い。

だが、俺は藍沢を助けるわけではなく、あくまで俺についてくる藍沢を黙認するだけだ。

俺は遅れている藍沢を放っておいて、どんどん進んでいく。

「…っ…はっ…はっ…」

藍沢も、俺に何もかも助けてもらえるとは思っていないのか、「待って」とは口にしなかった。

息を荒くしながら、歩く俺に必死についてきている。

『グギィ…』

『グゲゲ…』

やがてそんな俺たちの目の前に、モンスターが現れた。

緑色の醜悪な見た目。

ゴブリンだ。

だが、普通の個体ではない。

身長は大体人間の大人ほどもあった。

俺は鑑定スキルで、強さを測る。

名前:ゴブリン・リーダー
種族:モンスター
レベル:12
スキル:統率


どうやらゴブリンの上位種、ゴブリン・リーダーのようだ。

モンスターには、見た目が同じでも、個体によって大きさや強さが極端に違うことがある。

俺は通常の個体よりもレベルが高く、スキルなどを持っている個体を、上位種と呼ぶことにしていた。

目の前のゴブリン・リーダーは、群れを統率することのできるゴブリンの上位種だ。

「ひっ」

背後で藍沢が引き攣った悲鳴をあげる。

ゴブリン・リーダーの背後には、数匹のゴブリンがいて、ゴブリン・リーダーによって統率されているらしかった。

「ふむ…どうするか…」

一人の際はこの程度の数、どうとでもなるのだが、今は藍沢がいる。

ゴブリンたちは俺よりもまず、藍沢を狙うだろう。

事実、彼らのギョロついた目は、全てが藍沢に向けられていた。

「こういう時は…」

俺は地面から手頃なサイズに石を拾った。

「うおらぁ!」

そして腕を振りかぶり、ゴブリン・リーダーに目掛けて投擲する。

ズゴン…!!!

『ガ…!?』

ゴブリン・リーダーが大きく目を見開く。

そしてゆっくりと視線を下げて自らの胸にあいた大穴を確認した。

『グゲ…』

バタッとゴブリン・リーダーが倒れ伏した。

そのままピクリとも動かなくなる。

完全に絶命したようだ。

『ギーッ!!ギーッ!!!』

『ギャァアアアア!!!』

ゴブリン・リーダーが死んだことで統率の取れなくなったゴブリンたちが一斉に騒いて方々に散っていった。

「よし」

俺は作戦がうまく行ったことに満足する。

上位種が、ああして雑魚を束ねている場合は、まずは上位種から狙う。

すると雑魚は散り散りになって余計な戦闘をせずに済む。

今日までモンスターを狩ってきて培った教訓だった。

「す、すご…」

「ん?」

振り返ると、藍沢が、胸に穴の空いたゴブリン・リーダーの死体を見て、目を見開いていた。



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