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祝祭の影
手紙
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夜は、思考を深くする。
宿舎の一室。
灯りは落とされ、卓の上に置かれた簡易ランプだけが、円を描くように影を落としていた。
シンは椅子に背を預け、腕を組んで天井を見上げている。
「……改めて整理しようか」
静けさを破ったのは、サラだった。
彼女はテーブルに地図とメモを並べ、ひとつずつ指で押さえていく。
「祭り前後で、内部情報が複数回漏えい。
設置されていたのは軍事規格の魔力無効化の魔道具。
しかも、騎士団が過去に使っていた型」
「現場対応は異様に早かった」
ミオが短く続ける。
「騎士団と影裁の合同調査。。
連携が取れすぎている。。
――“初動”とは思えない」
「魔道具の出所についても、話が曖昧だ」
ローレンスは椅子を反対向きにして、背もたれに顎を乗せていた。
「倉庫から流れたって話だったが、記録がきれいすぎる。
俺が街で聞いた噂とも微妙に食い違ってる。」
シンは黙って聞いていた。
彼の脳裏には、いくつもの“顔”が浮かんでは消えていく。
リア・トルー・トゥゼン。
真っ直ぐな視線。迷いのない指示。
部下を守ろうとする姿勢。
――善性は、疑いようがない。
だが。
(騎士団だ)
それだけで、胸の奥が冷える。
過去に刻まれた記憶が、理屈とは無関係に疼く。
「……シン?」
サラが名を呼ぶ。
「何か、引っかかってる?」
「……引っかかりだらけだ」
シンは視線を落とし、低く答えた。
「ただ、まだ線になってない」
その時だった。
コン、という軽い音。
扉の下から、一通の封筒が滑り込んでくる。
「……手紙?」
サラが拾い上げる。
封には、見覚えのある筆跡。
「サクラ先生からだ」
空気が、わずかに張り詰めた。
シンは無言で封を切る。
中身は、短い文だけだった。
『シュバルツ・タイガーベルトが王都に入った』
一行。
それだけで、十分すぎるほどだった。
「……シュバルツ?」
ミオが眉をひそめる。
「テロ組織レイヴン・ブレイヴの……五光核、序列第二位」
「なんでサクラ先生が知ってるんだ?」
ローレンスが素直な疑問を口にする。
「しかも、“来た”じゃなくて“入った”って」
サラも気づいていた。
情報の精度が、異常に高い。
「……考えるのは後だ」
シンは手紙を畳み、立ち上がった。
「まずは、リアだ」
全員が、彼を見る。
「魔道具の出所。
騎士団の動き。
そして、セバスチャンの件」
名前を口にした瞬間、室内の空気が一段冷えた。
「俺は――」
シンは一拍、言葉を切る。
「騎士団を、信用してない」
それは告白に近かった。
「だからこそ、直接聞く。
嘘があるなら、そこで見抜く」
沈黙。
誰も反対しなかった。
⸻
夜の庁舎。
執務室の扉の前に立ち、シンは一度だけ呼吸を整える。
ノック。
「……入れ」
リア・トルー・トゥゼンの声。
扉を開けると、彼女は机に向かい、書類を整理していた。
「影裁の執行官か。
何か、進展は?」
その声は、いつも通り落ち着いている。
シンは一歩、踏み出した。
「ひとつ、聞きたい」
リアの視線が上がる。
「魔力無効化魔道具――
本当に、あれは“旧騎士団倉庫”から流れたものか?」
空気が、止まった。
リアはすぐには答えない。
だが、その沈黙こそが――
シンにとって、十分な答えだった。
疑念は、もう引き返せないところまで来ている。
物語は、ここから加速する。
宿舎の一室。
灯りは落とされ、卓の上に置かれた簡易ランプだけが、円を描くように影を落としていた。
シンは椅子に背を預け、腕を組んで天井を見上げている。
「……改めて整理しようか」
静けさを破ったのは、サラだった。
彼女はテーブルに地図とメモを並べ、ひとつずつ指で押さえていく。
「祭り前後で、内部情報が複数回漏えい。
設置されていたのは軍事規格の魔力無効化の魔道具。
しかも、騎士団が過去に使っていた型」
「現場対応は異様に早かった」
ミオが短く続ける。
「騎士団と影裁の合同調査。。
連携が取れすぎている。。
――“初動”とは思えない」
「魔道具の出所についても、話が曖昧だ」
ローレンスは椅子を反対向きにして、背もたれに顎を乗せていた。
「倉庫から流れたって話だったが、記録がきれいすぎる。
俺が街で聞いた噂とも微妙に食い違ってる。」
シンは黙って聞いていた。
彼の脳裏には、いくつもの“顔”が浮かんでは消えていく。
リア・トルー・トゥゼン。
真っ直ぐな視線。迷いのない指示。
部下を守ろうとする姿勢。
――善性は、疑いようがない。
だが。
(騎士団だ)
それだけで、胸の奥が冷える。
過去に刻まれた記憶が、理屈とは無関係に疼く。
「……シン?」
サラが名を呼ぶ。
「何か、引っかかってる?」
「……引っかかりだらけだ」
シンは視線を落とし、低く答えた。
「ただ、まだ線になってない」
その時だった。
コン、という軽い音。
扉の下から、一通の封筒が滑り込んでくる。
「……手紙?」
サラが拾い上げる。
封には、見覚えのある筆跡。
「サクラ先生からだ」
空気が、わずかに張り詰めた。
シンは無言で封を切る。
中身は、短い文だけだった。
『シュバルツ・タイガーベルトが王都に入った』
一行。
それだけで、十分すぎるほどだった。
「……シュバルツ?」
ミオが眉をひそめる。
「テロ組織レイヴン・ブレイヴの……五光核、序列第二位」
「なんでサクラ先生が知ってるんだ?」
ローレンスが素直な疑問を口にする。
「しかも、“来た”じゃなくて“入った”って」
サラも気づいていた。
情報の精度が、異常に高い。
「……考えるのは後だ」
シンは手紙を畳み、立ち上がった。
「まずは、リアだ」
全員が、彼を見る。
「魔道具の出所。
騎士団の動き。
そして、セバスチャンの件」
名前を口にした瞬間、室内の空気が一段冷えた。
「俺は――」
シンは一拍、言葉を切る。
「騎士団を、信用してない」
それは告白に近かった。
「だからこそ、直接聞く。
嘘があるなら、そこで見抜く」
沈黙。
誰も反対しなかった。
⸻
夜の庁舎。
執務室の扉の前に立ち、シンは一度だけ呼吸を整える。
ノック。
「……入れ」
リア・トルー・トゥゼンの声。
扉を開けると、彼女は机に向かい、書類を整理していた。
「影裁の執行官か。
何か、進展は?」
その声は、いつも通り落ち着いている。
シンは一歩、踏み出した。
「ひとつ、聞きたい」
リアの視線が上がる。
「魔力無効化魔道具――
本当に、あれは“旧騎士団倉庫”から流れたものか?」
空気が、止まった。
リアはすぐには答えない。
だが、その沈黙こそが――
シンにとって、十分な答えだった。
疑念は、もう引き返せないところまで来ている。
物語は、ここから加速する。
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