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祝祭の影
激動
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リア・トルー・トゥゼンの執務室。
夜の静けさの中、シンは一枚の紙を机の上に置いた。
「これは?」
リアが視線を落とす。
「合同調査の際、騎士団が提出した現場図だ」
シンは淡々と続ける。
「魔力無効化魔道具の設置位置。
騎士団の初動展開。
撤退経路」
指でなぞる。
「全部、“あなたが指揮した区域”と一致している」
リアは黙っている。
「さらに、これ」
次に置いたのは、別の報告書。
「セバスチャン・ディンの最終行動記録。
死亡時刻の三十分前――
影裁に接触しようとしていた」
空気が、重くなる。
「彼は何に気づいた?」
シンは視線を上げた。
「現場に、あなたの痕跡が一切なかったことだ」
リアの瞳が、わずかに揺れる。
「部隊長が、あれだけの騒ぎの現場に来ていない。
足跡も、魔力反応も、残っていない」
一拍。
「“最初から、いなかった”」
沈黙。
それが、答えだった。
「内部協力者のコードネーム――ハミング」
シンは、静かに告げる。
「それが、あなたの名前だ」
リアは、しばらく何も言わなかった。
やがて、小さく息を吐く。
「……なるほど」
微笑む。
それは、部隊長のものではなかった。
「そこまで辿り着いたか、影裁」
否定は、なかった。
⸻
――回想。
薄暗い路地。
セバスチャン・ディンは、息を切らして走っていた。
(確信……した)
現場に残るはずの、一つの痕跡。
それは、なかった。
(部隊長が……来ていない)
だからこそ、すべてが成立する。
「……影裁に、知らせなければ……」
その時。
「セバスチャン」
背後から、声。
振り返った瞬間――
喉元に、冷たい感触。
「すまない」
リアの声だった。
「気づいてしまった以上、君は危険だ」
短い一閃。
痛みすら、なかった。
セバスチャンの視界は、ゆっくりと暗転していく。
(……リア、様……)
最後に見たのは、
悲しそうに目を伏せる、彼女の顔だった。
⸻
「……なぜだ」
シンの声は、低く震えていた。
「なぜ、レイヴン・ブレイヴに加担した?」
リアは、目を閉じる。
「理由は、単純だ」
そして、語り始めた。
「騎士団は、腐っている。
権威を守るためなら、民も、真実も切り捨てる」
「……」
「私は、それを内部から正すつもりだった」
だが、と彼女は続ける。
「王は動かなかった。
影裁も、結局は“王の影”だ」
拳を握る。
「だから、別の力が必要だった」
「レイヴン・ブレイヴか」
「ええ」
リアは、真っ直ぐにシンを見る。
「彼らは王国を壊すつもりだ。
だが――壊れなければ、生まれ変われないものもある」
歪んだ理想。
だが、確かに“信念”だった。
「……サクラ先生に、危機が迫っている」
リアは、唐突に話題を変える。
「シュヴァルツ・タイガーベルトが、彼女の元へ向かった」
シンの目が、見開かれる。
「なぜ、それを俺に?」
「借りを返す」
リアは、静かに言った。
「私は、あなたの家族を奪った騎士団の側にいた。
だから――せめて、師だけは救わせて」
「……信用しろと?」
「いいえ」
リアは、首を横に振る。
「疑ったままでいい」
⸻
「行くぞ、サラ」
シンは即断した。
「西方の森だ」
「うん」
サラは迷わなかった。
だが、その前に。
「待て」
ミオが一歩前に出る。
「この女は、ここで止める」
ローレンスも、魔力を高める。
「借りは返させてもらうぜ、部隊長」
リアは、剣を抜いた。
白銀の騎士団剣。
「……ここからは、敵同士だ」
剣撃が、走る。
リアは強かった。
だが、二人を相手にしてなお、押し切れるほどではない。
煙幕。
術式。
そして――
「……必ず、生きて戻れ」
それだけを残し、リアは姿を消した。
⸻
王国西方。
森に囲まれた小さな村。
「……来たのね、シュバルツ」
サクラ・アキヅキは、静かに言った。
腰に差した刀に、手を置いて。
「久しぶりだ、サクラ」
長い髪を揺らし、
蒼い長槍《アトランティス》を携えた男が微笑む。
「相変わらずだ。
その構え――アキヅキ流」
「用件を言いなさい」
「決まっている」
シュバルツの視線は、彼女だけを捉えていた。
「君を迎えに来た」
歪んだ執着。
「王国も、反乱も関係ない」
一歩、距離を詰める。
「今度こそ――
君は、私のものだ」
森が、ざわめいた。
⸻
同刻。
シンとサラは、西方へ向かっていた。
師を救うために。
そして、
避けられない因縁と刃を交えるために。
夜の静けさの中、シンは一枚の紙を机の上に置いた。
「これは?」
リアが視線を落とす。
「合同調査の際、騎士団が提出した現場図だ」
シンは淡々と続ける。
「魔力無効化魔道具の設置位置。
騎士団の初動展開。
撤退経路」
指でなぞる。
「全部、“あなたが指揮した区域”と一致している」
リアは黙っている。
「さらに、これ」
次に置いたのは、別の報告書。
「セバスチャン・ディンの最終行動記録。
死亡時刻の三十分前――
影裁に接触しようとしていた」
空気が、重くなる。
「彼は何に気づいた?」
シンは視線を上げた。
「現場に、あなたの痕跡が一切なかったことだ」
リアの瞳が、わずかに揺れる。
「部隊長が、あれだけの騒ぎの現場に来ていない。
足跡も、魔力反応も、残っていない」
一拍。
「“最初から、いなかった”」
沈黙。
それが、答えだった。
「内部協力者のコードネーム――ハミング」
シンは、静かに告げる。
「それが、あなたの名前だ」
リアは、しばらく何も言わなかった。
やがて、小さく息を吐く。
「……なるほど」
微笑む。
それは、部隊長のものではなかった。
「そこまで辿り着いたか、影裁」
否定は、なかった。
⸻
――回想。
薄暗い路地。
セバスチャン・ディンは、息を切らして走っていた。
(確信……した)
現場に残るはずの、一つの痕跡。
それは、なかった。
(部隊長が……来ていない)
だからこそ、すべてが成立する。
「……影裁に、知らせなければ……」
その時。
「セバスチャン」
背後から、声。
振り返った瞬間――
喉元に、冷たい感触。
「すまない」
リアの声だった。
「気づいてしまった以上、君は危険だ」
短い一閃。
痛みすら、なかった。
セバスチャンの視界は、ゆっくりと暗転していく。
(……リア、様……)
最後に見たのは、
悲しそうに目を伏せる、彼女の顔だった。
⸻
「……なぜだ」
シンの声は、低く震えていた。
「なぜ、レイヴン・ブレイヴに加担した?」
リアは、目を閉じる。
「理由は、単純だ」
そして、語り始めた。
「騎士団は、腐っている。
権威を守るためなら、民も、真実も切り捨てる」
「……」
「私は、それを内部から正すつもりだった」
だが、と彼女は続ける。
「王は動かなかった。
影裁も、結局は“王の影”だ」
拳を握る。
「だから、別の力が必要だった」
「レイヴン・ブレイヴか」
「ええ」
リアは、真っ直ぐにシンを見る。
「彼らは王国を壊すつもりだ。
だが――壊れなければ、生まれ変われないものもある」
歪んだ理想。
だが、確かに“信念”だった。
「……サクラ先生に、危機が迫っている」
リアは、唐突に話題を変える。
「シュヴァルツ・タイガーベルトが、彼女の元へ向かった」
シンの目が、見開かれる。
「なぜ、それを俺に?」
「借りを返す」
リアは、静かに言った。
「私は、あなたの家族を奪った騎士団の側にいた。
だから――せめて、師だけは救わせて」
「……信用しろと?」
「いいえ」
リアは、首を横に振る。
「疑ったままでいい」
⸻
「行くぞ、サラ」
シンは即断した。
「西方の森だ」
「うん」
サラは迷わなかった。
だが、その前に。
「待て」
ミオが一歩前に出る。
「この女は、ここで止める」
ローレンスも、魔力を高める。
「借りは返させてもらうぜ、部隊長」
リアは、剣を抜いた。
白銀の騎士団剣。
「……ここからは、敵同士だ」
剣撃が、走る。
リアは強かった。
だが、二人を相手にしてなお、押し切れるほどではない。
煙幕。
術式。
そして――
「……必ず、生きて戻れ」
それだけを残し、リアは姿を消した。
⸻
王国西方。
森に囲まれた小さな村。
「……来たのね、シュバルツ」
サクラ・アキヅキは、静かに言った。
腰に差した刀に、手を置いて。
「久しぶりだ、サクラ」
長い髪を揺らし、
蒼い長槍《アトランティス》を携えた男が微笑む。
「相変わらずだ。
その構え――アキヅキ流」
「用件を言いなさい」
「決まっている」
シュバルツの視線は、彼女だけを捉えていた。
「君を迎えに来た」
歪んだ執着。
「王国も、反乱も関係ない」
一歩、距離を詰める。
「今度こそ――
君は、私のものだ」
森が、ざわめいた。
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同刻。
シンとサラは、西方へ向かっていた。
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そして、
避けられない因縁と刃を交えるために。
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