影裁の王国〜守護〜 裏切りの刃が切り裂くとき

獅子神

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祝祭の影

閃光

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王国西方の森は、昼間だというのに薄暗かった。
 幾重にも重なった枝葉が陽光を遮り、湿った土と苔の匂いが立ちこめている。

「……やけに静かだな」

 シンは低く呟き、自然と刀の柄に指を添えた。

 隣を歩くサラは、足音を極力殺しながら、周囲に気を配っている。
 表情は柔らかいままだが、その瞳だけは真剣だった。

「こういう時ほど、何かあるものよ。気を抜かないでね、シン」

「分かってる」

 短く答えた、その瞬間だった。

 ――気配が、弾けた。

 木々の影から、黒装束の人影が次々と姿を現す。
 前後左右、完全に包囲されている。

「……チッ」

 数は十以上。
 統率の取れた動き。素人ではない。

 その中の一人が、嘲るように笑った。

「シュバルツ様の言う通りだ。本当に来たな、影裁のガキども」

「……シュバルツ?」

 シンの眉がわずかに動く。
 聞き覚えのある名――サクラからの手紙にあった人物。

 考える暇はなかった。

「殺せ!」

 合図と同時に、矢と魔術が放たれる。

「サラ、下がって」

 シンが一歩前に出る。

「ええ……でも、無茶はしないで」

 サラの声はあくまで穏やかだった。
 だが、詠唱は速い。

「――《ソフィア・シールド》」

 淡い光の魔法障壁が二人を包み込み、飛来する魔術を弾いた。

「っ……!」

 シンは踏み込む。

 抜刀。

 鞘擦りの音が森を裂き、最初の敵が崩れ落ちる。
 致命傷ではない。だが、戦闘不能には十分だった。

「な、なんだこの動き――!」

 敵の声が揺らぐ。

 だが、数で押し切るつもりのようだ。
 左右から同時に迫る影。

 シンは、息を整えた。

「……ここか」

 足運びを変え、重心を落とす。

 アキヅキ流――奥義。

「――《閃光》」

 一瞬、世界が白く染まった。

 踏み込みと同時に放たれた一閃は、視認すら困難な速度で敵陣を貫く。
 次の瞬間、三人の敵がほぼ同時に崩れ落ちた。

「……見えなかった」
「ば、化け物か……!」

 恐怖が、敵の間に伝播していく。

 背後では、サラが静かに支援を続けていた。
 負傷者には回復を、距離を詰める敵には投げナイフを正確に放つ。

「大丈夫よ、シン。ちゃんと守れてるから」

 その言葉に、シンは一瞬だけ口元を緩めた。

 敵の陣形は、すでに崩壊していた。

「撤退だ! これ以上は無理だ!」

 黒装束たちは森の奥へと散っていく。

 静寂が、戻った。

「……はあ」

 シンは刀を納め、深く息を吐く。

 サラがそっと近づく。

「怪我は?」
「かすり傷だけだ。心配いらない」

「よかった……」

 その声音は、いつものサラだった。

 だが、シンの胸には別のものが残っている。

 ――シュバルツ。

 サクラのもとへ向かっている可能性が高い。

「急ごう、サラ」

「ええ。嫌な予感がするの」

 二人は再び森の奥へと足を踏み出す。
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