この恋は狂暴です

三三

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この恋は狂暴です⑨

この恋は狂暴です⑨

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「――――――――――――――――――――――――  は?」

「長っ!!」

理解するのに時間がかかってしまった俺にすかさず突っ込んでくる桃弥。
「っつ!あ、あの時の女の子がっ?!え??畑野さん?」
「そっ!」 桃弥はにっこり笑って返事をした。

や、

やっと点と線がつながった。

やっと今までの彼女の意味不明な言葉の意味がわかった。

「はあ―――― そっか。そうかぁ―――。あの時の、女の子が・・」
「あんな美人忘れるなよ」 桃弥は口を尖らせて言う。
「あ、いやだって!あの時は、奴らのたまり場の窓は全てスモーク貼りだったし、それにっ、いちいち女の顔なんて見るかよ」
「ぷっ。薫らしいってば薫らしいよな。くくっ。」
桃弥は笑いを堪えながら、

「でも、姫はそう思ってなかったよ。 犯られる瞬間に助けてくれた王子様の顔は・・、ちゃんと覚えてた。」
今度は真剣な顔をしてそう言った。


そう、あの事件がどうして未遂で終わったのか。
それは、俺が中学2年の時、たまたま聞いてしまったんだ。
視聴覚室で3年の奴らが話してるのを。

その内容が、どこかの中学でムチャクチャ可愛い女の子がいて、告っても拒否されたらしく、それが面白くないってくだらない話だった。
その3年はけっこう悪さしている奴らだったから、これは何か企んでるなと直感したんだ。
その頃の俺は、2年でもかなりワルくて、族にも所属してて、毎日の様にケンカと女遊びに没頭していた。

そんな俺をおもしろくないと思っている3年はいる訳で、その悪巧みの連中もその中の一つだった。
こんなウザイやつ等、いつか潰してやろうと思ってた時だったし、なんせこの所、同じ日常に飽きていたから・・・
丁度いいヒマ潰しだったんだ。 あの事件は。

だから、あまり深く考えず、奴らがいつ行動するのか楽しみでさえいたんだ。


そして
7月の暑い日にその事件は起きた。


その日奴らは、下校途中の彼女を待ち伏せするらしい。
俺の仲間が、そう俺に知らせた。 この日のために俺は族仲間に奴らを見張らせていたんだ。
俺はやつらが必ずたまる場所へと先回りした。。

仲間も2人(おもしろそうだから)とついてきた。

案の定、彼女捕獲に成功したと見られる奴らはノコノコとたまり場であるプレハブへやってきた。

人数は ・・・ 6人。(おいおい6人でマワす気か?キツイだろっそれ!) と1人でそんな事を考えていると、プレハブの持ち主らしい奴が、ドアを開けて奴らを中に入れた。
もちろん、口と両手を塞がれている彼女も。

中に入った途端、女の悲鳴が微かに聞こえた。
俺の仲間が、「やべえんじゃね?彼女」と心配している。

「ん。そうだな。じゃ、奴らのまぬけなツラ見に行くか!」 ニカッと笑って俺たちはプレハブへと向かった。



バタンッ!!


おもいっきりプレハブの扉を蹴り上げる。 ドアは勢いよく開いて斜めに傾く。
その音で中にいた奴らと彼女はこっちを向いた。
奴らは、おきまりのアホ面で(笑)
格好は3人がズボンを脱いだ状態。(よくやるぜ。そんな貧相な体つきで。)

「っつ!!てめっ藤木っ!!」
「なんでテメーがここにいんだよっ!」奴らが吠える。
「はぁ?先輩たちこそ何やってんすか~?」
俺の仲間も 「あれ~女の子泣いているじゃん?」
「っつ!!」 マズイと思ったらしい連中は、矛先を俺らに向けてきた。

「藤木―――――ッ!!」 「2年のくせに生意気なんだよっ!」


「うるせーな。先輩方コロスよ?」
俺の目つきが変わる。


ほとんど全員をフルボッコにした後、仲間たちは気がすんだのか、「じゃー薫っ、俺ら帰るわ。又、誘ってなー♪」と血だらけの手をヒラヒラさせて言った。
「おーまた遊ぼーぜ。」 俺はそう言って奴らを見送った。
俺も帰ろうとプレハブから出ようとした時、

「っ、うっ・・っ」 と女の子の声が聞こえた。
(あ、忘れてた。) 
ケンカの方に一生懸命で捕まっていた女の子の事はすっかり忘れていた。

「えっと・・犯られてないよね?」 俺がそう聞くと、
コクッうなづく女の子。
 
体が震えている。

つい、俺はその女の子の体を引き寄せた。
一瞬、ビクッと体をさせたが、騒がれる事はなかった。

「こわかったか?」 俺の言葉に彼女はまた、コクッとうなづいた。

「今日の事は忘れろ。こいつらにも脅しかけとくから心配いらねーし。わかった?」

未遂といっても、狭い町ではこの手の噂は広まるのが早い。そうなれば、心ない奴らが必ず、下衆な事を考える。(本当は犯られたんだろ?)って。

そうして俺は彼女から離れプレハブから出た。



少し歩くと後ろの方から男が声をかけてきた。
奴らの仲間かと思って少し振り向き、思いっきり睨んだ。
が、制服が違うのに気付いて、俺はそいつを無視して行ったっけ。

後ろで今の男と同じ制服の奴らが集まりざわめいている。(なんだあいつら?)

ん?
今、思えば
あの時、後ろから声をかけてきた奴って ・・・

「あの時、薫に声かけたのは俺だよ」     やっぱり 

「最初、姫を拉致った奴かと思ってさ、でも制服は汚れてるし、手は血だらけで・・おまけに顔からも血ィ出してたろ、さすがにそれは姫を相手にしたキズじゃねぇなと思ったから、俺もそれ以上は薫の事を追いかけなかったんだ。
ただ、スゲー目つきの悪い奴だなって思ったぐらい ・・・ぷっ」
「悪かったなっ目つき悪くて、あの頃は若かったんだよっ!」 俺は口を尖らせながら言った。
 
・・ん ??あ!
もしかしてっ!あの時か!!桃弥たちの仲間が 
・・・たしか・・・
「乃野」って名を言ってた!
あ――――――だから俺、聞いた事あったんだな 

・・・お姫さまの名前 


そっか!
うわっ、スゲ――――すっきりしたっ♪



「俺らはさ、その後、姫が1人でその近くを歩いてたのを見つけて保護したんだ。姫の制服は乱れてなかったし、傷もなかったけど一応、心配で何かされてないか聞いたら、姫は笑って頷いただけで。」

そっか。ちゃんと言わずにいたんだな。

「それ以上の事は、何も言わなかったから俺らも聞かなかったし、姫が奴らの隙を見て逃げ出したのかも・・とも思った。」

「・・」


「でも、違ったんだな ・・・薫」

「・・」


「だいたいおかしいとは思ったんだよ。あれから、姫を拉致った連中、ボコろうと探しまくってたら、既に奴ら全員、病院送りになってたしさ。ま、その時は天罰でもくだったのかと、皆して大笑いしてたんだけどなっ」

「・・」

「しっかし、マジわかんなかったっ!高校に入って薫と出会っても、同じクラスになっても、薫があの時の超、目つきの悪い奴と同じ人間だったなんてさ」

「う―――――ん。ま、たしかにわからないかもな。あの頃の俺は目つきだけじゃなく、髪型も金髪だったし(笑)」



「姫の・・、俺たちの姫の恩人だったのに ・・・な。」
「は? お、大袈裟だろっ!!桃弥っ!恩人なんてコトしてねぇし!」



「――いや、あの時、薫がいてくれなかったら マジで俺っ・・――――っつ!!」
「桃弥」

「・・俺はお前には勝てね 
姫のコト ・・・マジで頼みたい」


「とう ・・・や 」



「薫、今から姫と会ってくれないか」
「?!」
桃弥が真顔になる。
って、
「え?い、今からって、もう10時近いぜっ?こんな時間に一般の女の子を連れ出せるワケねーだろ?」


「ふっ。俺を甘くみるなよ。もう既に策は打ってある!」 
そう言って、ニヤッと微笑む悪魔(もとい桃弥)
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