4 / 129
身代わり花嫁
私は、春菜!
しおりを挟む
こうなったら、花嫁になりきるしかない!
私は逃亡した新婦の代わり……いいえ!
私は新婦の春菜なんだ。
私は、樋口 春菜、28歳、旅行代理店に勤めている。
今日のゲストで来ているのは、会社の同僚、御園生さん、鈴木さん、と、徳永さんでいいかな?
ええと、新婦の友人の名前は?
いや、違う、私が新婦だ。
私の友人の名前は……あれ?何だっけ?
後で、また写真を見よう。
覚えた事を復習していたら、扉が開かれた!
私のアドバイスで選ばれた、バックミュージックと共に、私達は歩き出す。
「新郎、新婦の入場です!
盛大な拍手でお迎えくださーい」
事情を知る人たちは、ハラハラ、ドキドキで拍手どころではないだろうけど、この危機を乗り切ろうとしているのか、力一杯、拍手をしてくれている姿が見える。
あっ、そうだ、なるべくうつむく様に歩かなければ……。
私、丸山 柚花、28歳、独身。
カレンダホテルで、ウェディングプランナーの仕事をしている私は、お客様の披露宴なのに、何故か、スポットライトを当てられた主役となっている……あれっ?
隣にいる たっ君には、スポットライトが当たっているけど、私の方は ぼやっとした明るさで、絶妙な暗さ加減になっている。
柚花の心の中では、新郎の折原 匠海の事を新郎母が呼んでいた愛称“たっ君”と呼び始めているのだった。
「照明さん、先程、お願いした通り、新婦にはライトを極力あてないで下さい」
船会社側の共同企画者、原口が照明担当にお願いをしていた。
偽花嫁という事が極力、バレない為の作戦なのだ。
(丸山さん、私達の企画を必ず成功させましょう!身代わり花嫁を頑張って下さい。
私、原口も精一杯、協力をさせて頂きます)
そんな事を思いながら、原口は新婦の姿を見つめている。
メインテーブルの席には、新郎側と新婦側に、それぞれの仲人夫妻が着席していた。
仲人夫妻は、新郎、新婦の身内であり、柚花が身代わり花嫁である事は、知らされていたのだった。
新婦側の仲人夫妻が、柚花を見て手を合わせ、拝む仕草をしている。
はい、わかりました!この私にお任せ下さい!
精一杯、務めさせて頂きます。
柚花は、新婦側仲人夫妻に向かって、決意の会釈をし、席に着いた。
「丸山……春菜さん、折原さん、演出変更がございます。
お二人は、前を向いたままで、お聞き下さい」
新郎新婦の席の後方に屈んで、話し掛けたのは、軽米だった。
彼女は、続けて話す。
「予定していた“愛のお裾分けカットケーキプレゼント”は、キャンセルになり、原口さんのピアノ生演奏の中、着ぐるみがケーキを運んで、スタッフがケーキを配る事になりました」
「えっ?原口さんって、あの原口さんが?
ピアノを?演奏するの?」
柚花は小さな声で聞いていたが、司会者から立つように促されたので、話しは終了となってしまった。
披露宴の最中だもの、こちらに集中しないとね!
「まる……春菜、よろしくお願いします」
たっ君から小声で言われ、私は気を引き締める。
「はいっ」
………………
穏やかに披露宴は、進行してゆき、いよいよ緊張の新郎新婦のケーキカットのシーンがやってきた!
本来なら、ゲストをケーキ近くへ集合させて、カメラ撮影をさせたりするけど……。
原口さん、どうしますか?
私なら、ゲストは着席のままにして、ケーキカットを見せるけど……。
チラッと顔を上げると、奥にある丸テーブルにいる親族席に各スタッフが近寄り、何かを話している姿が見えた。
何を話しているのだろう?
そう思いながら、移動する。
私は、スクエア三段いちごケーキの前に立ったが、緊張の余り震えてきてしまった。
隣に立つ匠海が柚花の様子に気づき、「大丈夫?」と声を掛けた。
たっ君、優しいなぁ。
そうは思ったが、柚花は声も出せず、頷くだけで精一杯だった。
「それでは、ゲストの皆様、カメラを持って、どうぞこちらへ……」
通常通りに司会者が言った!
「 ! 」
ざざざっ!
「えっ?」
後方の親族達が素早く歩いて、2人の周囲を囲んだ!
その中に、事情を知る新郎の友人2名も含まれ、柚花の横側に来た。
凄い!団結力だ!
新婦母、近っ!近過ぎませんか?
そんなに目の前に立たなくても……
親族の後ろに、友人、知人のゲストがいて、妙な感じだったが、ケーキカットは、始まったのだった。
ナイフを持つ私の手に、たっ君の手が重なり、四角いケーキに入刀する。
そして、たっ君の力が直に、私に伝わってくる。
何て、力強いのだろう。
たっ君も相当、緊張しているのかも。
カシャ、カシャ!
カメラのフラッシュと共にシャッター音が一斉に聞こえてくる。
ここは、笑顔にならないと、怪しまれる。
笑おう!笑え、自分!顔がひきつる……。
「さあ、カットしたケーキをお互いに食べさせて下さい」
司会者が言うと、倉田チーフが2人に笑顔でフォークを渡しながら、後ろに退がり こっそりと言う。
「私共がついております!」
倉田チーフは、私達を安心させたくて言ってくれたんだ……。
ありがとうございます。
落ち着いてきました……。
はぁ、食べさせたら席に戻れる。
では、食べさせましょうかと、たっ君と見つめ合った。
うわっ!恥ずかしいなぁ。
たっ君、よく見たら まつ毛が長いですね。
羨ましいです。
そうだ、見とれていられない!
この ケーキのひと口分をフォークに刺して、食べさせっこをすればいいのよね!
「ケーキの口移し、してー!」
「 ! 」
後ろの方から、恐ろしい声が聞こえてきたのだった……。
私は逃亡した新婦の代わり……いいえ!
私は新婦の春菜なんだ。
私は、樋口 春菜、28歳、旅行代理店に勤めている。
今日のゲストで来ているのは、会社の同僚、御園生さん、鈴木さん、と、徳永さんでいいかな?
ええと、新婦の友人の名前は?
いや、違う、私が新婦だ。
私の友人の名前は……あれ?何だっけ?
後で、また写真を見よう。
覚えた事を復習していたら、扉が開かれた!
私のアドバイスで選ばれた、バックミュージックと共に、私達は歩き出す。
「新郎、新婦の入場です!
盛大な拍手でお迎えくださーい」
事情を知る人たちは、ハラハラ、ドキドキで拍手どころではないだろうけど、この危機を乗り切ろうとしているのか、力一杯、拍手をしてくれている姿が見える。
あっ、そうだ、なるべくうつむく様に歩かなければ……。
私、丸山 柚花、28歳、独身。
カレンダホテルで、ウェディングプランナーの仕事をしている私は、お客様の披露宴なのに、何故か、スポットライトを当てられた主役となっている……あれっ?
隣にいる たっ君には、スポットライトが当たっているけど、私の方は ぼやっとした明るさで、絶妙な暗さ加減になっている。
柚花の心の中では、新郎の折原 匠海の事を新郎母が呼んでいた愛称“たっ君”と呼び始めているのだった。
「照明さん、先程、お願いした通り、新婦にはライトを極力あてないで下さい」
船会社側の共同企画者、原口が照明担当にお願いをしていた。
偽花嫁という事が極力、バレない為の作戦なのだ。
(丸山さん、私達の企画を必ず成功させましょう!身代わり花嫁を頑張って下さい。
私、原口も精一杯、協力をさせて頂きます)
そんな事を思いながら、原口は新婦の姿を見つめている。
メインテーブルの席には、新郎側と新婦側に、それぞれの仲人夫妻が着席していた。
仲人夫妻は、新郎、新婦の身内であり、柚花が身代わり花嫁である事は、知らされていたのだった。
新婦側の仲人夫妻が、柚花を見て手を合わせ、拝む仕草をしている。
はい、わかりました!この私にお任せ下さい!
精一杯、務めさせて頂きます。
柚花は、新婦側仲人夫妻に向かって、決意の会釈をし、席に着いた。
「丸山……春菜さん、折原さん、演出変更がございます。
お二人は、前を向いたままで、お聞き下さい」
新郎新婦の席の後方に屈んで、話し掛けたのは、軽米だった。
彼女は、続けて話す。
「予定していた“愛のお裾分けカットケーキプレゼント”は、キャンセルになり、原口さんのピアノ生演奏の中、着ぐるみがケーキを運んで、スタッフがケーキを配る事になりました」
「えっ?原口さんって、あの原口さんが?
ピアノを?演奏するの?」
柚花は小さな声で聞いていたが、司会者から立つように促されたので、話しは終了となってしまった。
披露宴の最中だもの、こちらに集中しないとね!
「まる……春菜、よろしくお願いします」
たっ君から小声で言われ、私は気を引き締める。
「はいっ」
………………
穏やかに披露宴は、進行してゆき、いよいよ緊張の新郎新婦のケーキカットのシーンがやってきた!
本来なら、ゲストをケーキ近くへ集合させて、カメラ撮影をさせたりするけど……。
原口さん、どうしますか?
私なら、ゲストは着席のままにして、ケーキカットを見せるけど……。
チラッと顔を上げると、奥にある丸テーブルにいる親族席に各スタッフが近寄り、何かを話している姿が見えた。
何を話しているのだろう?
そう思いながら、移動する。
私は、スクエア三段いちごケーキの前に立ったが、緊張の余り震えてきてしまった。
隣に立つ匠海が柚花の様子に気づき、「大丈夫?」と声を掛けた。
たっ君、優しいなぁ。
そうは思ったが、柚花は声も出せず、頷くだけで精一杯だった。
「それでは、ゲストの皆様、カメラを持って、どうぞこちらへ……」
通常通りに司会者が言った!
「 ! 」
ざざざっ!
「えっ?」
後方の親族達が素早く歩いて、2人の周囲を囲んだ!
その中に、事情を知る新郎の友人2名も含まれ、柚花の横側に来た。
凄い!団結力だ!
新婦母、近っ!近過ぎませんか?
そんなに目の前に立たなくても……
親族の後ろに、友人、知人のゲストがいて、妙な感じだったが、ケーキカットは、始まったのだった。
ナイフを持つ私の手に、たっ君の手が重なり、四角いケーキに入刀する。
そして、たっ君の力が直に、私に伝わってくる。
何て、力強いのだろう。
たっ君も相当、緊張しているのかも。
カシャ、カシャ!
カメラのフラッシュと共にシャッター音が一斉に聞こえてくる。
ここは、笑顔にならないと、怪しまれる。
笑おう!笑え、自分!顔がひきつる……。
「さあ、カットしたケーキをお互いに食べさせて下さい」
司会者が言うと、倉田チーフが2人に笑顔でフォークを渡しながら、後ろに退がり こっそりと言う。
「私共がついております!」
倉田チーフは、私達を安心させたくて言ってくれたんだ……。
ありがとうございます。
落ち着いてきました……。
はぁ、食べさせたら席に戻れる。
では、食べさせましょうかと、たっ君と見つめ合った。
うわっ!恥ずかしいなぁ。
たっ君、よく見たら まつ毛が長いですね。
羨ましいです。
そうだ、見とれていられない!
この ケーキのひと口分をフォークに刺して、食べさせっこをすればいいのよね!
「ケーキの口移し、してー!」
「 ! 」
後ろの方から、恐ろしい声が聞こえてきたのだった……。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
妹のために愛の無い結婚をすることになりました
バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」
愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。
婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。
私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。
落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。
思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる