ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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身代わり花嫁

私は、春菜!

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 こうなったら、花嫁になりきるしかない!

 私は逃亡した新婦の代わり……いいえ!

 私は新婦の春菜なんだ。

 私は、樋口 春菜、28歳、旅行代理店に勤めている。

 今日のゲストで来ているのは、会社の同僚、御園生みそのおさん、鈴木さん、と、徳永さんでいいかな?


 ええと、新婦の友人の名前は?

 いや、違う、私が新婦だ。

 私の友人の名前は……あれ?何だっけ?

 後で、また写真を見よう。


 覚えた事を復習していたら、扉が開かれた!


 私のアドバイスで選ばれた、バックミュージックと共に、私達は歩き出す。


「新郎、新婦の入場です!

 盛大な拍手でお迎えくださーい」


 事情を知る人たちは、ハラハラ、ドキドキで拍手どころではないだろうけど、この危機を乗り切ろうとしているのか、力一杯、拍手をしてくれている姿が見える。

 あっ、そうだ、なるべくうつむく様に歩かなければ……。


 私、丸山 柚花、28歳、独身。

 カレンダホテルで、ウェディングプランナーの仕事をしている私は、お客様の披露宴なのに、何故か、スポットライトを当てられた主役となっている……あれっ?


 隣にいる たっ君には、スポットライトが当たっているけど、私の方は ぼやっとした明るさで、絶妙な暗さ加減になっている。


 柚花の心の中では、新郎の折原 匠海の事を新郎母が呼んでいた愛称“たっ君”と呼び始めているのだった。


「照明さん、先程、お願いした通り、新婦にはライトを極力あてないで下さい」


 船会社側の共同企画者、原口が照明担当にお願いをしていた。


 偽花嫁という事が極力、バレない為の作戦なのだ。


(丸山さん、私達の企画を必ず成功させましょう!身代わり花嫁を頑張って下さい。
 私、原口も精一杯、協力をさせて頂きます)


 そんな事を思いながら、原口は新婦の姿を見つめている。


 メインテーブルの席には、新郎側と新婦側に、それぞれの仲人夫妻が着席していた。


 仲人夫妻は、新郎、新婦の身内であり、柚花が身代わり花嫁である事は、知らされていたのだった。


 新婦側の仲人夫妻が、柚花を見て手を合わせ、拝む仕草をしている。


 はい、わかりました!この私にお任せ下さい!

 精一杯、務めさせて頂きます。


 柚花は、新婦側仲人夫妻に向かって、決意の会釈をし、席に着いた。



「丸山……春菜さん、折原さん、演出変更がございます。

 お二人は、前を向いたままで、お聞き下さい」


 新郎新婦の席の後方にかがんで、話し掛けたのは、軽米かるまいだった。


 彼女は、続けて話す。


「予定していた“愛のお裾分けカットケーキプレゼント”は、キャンセルになり、原口さんのピアノ生演奏の中、着ぐるみがケーキを運んで、スタッフがケーキを配る事になりました」


「えっ?原口さんって、あの原口さんが?

ピアノを?演奏するの?」


 柚花は小さな声で聞いていたが、司会者から立つように促されたので、話しは終了となってしまった。


 披露宴の最中だもの、こちらに集中しないとね!


「まる……春菜、よろしくお願いします」


 たっ君から小声で言われ、私は気を引き締める。


「はいっ」

………………
 
 穏やかに披露宴は、進行してゆき、いよいよ緊張の新郎新婦のケーキカットのシーンがやってきた!


 本来なら、ゲストをケーキ近くへ集合させて、カメラ撮影をさせたりするけど……。


 原口さん、どうしますか?

 私なら、ゲストは着席のままにして、ケーキカットを見せるけど……。


 チラッと顔を上げると、奥にある丸テーブルにいる親族席に各スタッフが近寄り、何かを話している姿が見えた。


 何を話しているのだろう?

 そう思いながら、移動する。
 

 私は、スクエア三段いちごケーキの前に立ったが、緊張の余り震えてきてしまった。


 隣に立つ匠海が柚花の様子に気づき、「大丈夫?」と声を掛けた。


 たっ君、優しいなぁ。


 そうは思ったが、柚花は声も出せず、頷くだけで精一杯だった。
 

「それでは、ゲストの皆様、カメラを持って、どうぞこちらへ……」


 通常通りに司会者が言った!


「 ! 」


 ざざざっ!


「えっ?」


 後方の親族達が素早く歩いて、2人の周囲を囲んだ!


 その中に、事情を知る新郎の友人2名も含まれ、柚花の横側に来た。

 
 凄い!団結力だ!

 
 新婦母、近っ!近過ぎませんか?


 そんなに目の前に立たなくても……


 親族の後ろに、友人、知人のゲストがいて、妙な感じだったが、ケーキカットは、始まったのだった。


 ナイフを持つ私の手に、たっ君の手が重なり、四角いケーキに入刀する。


 そして、たっ君の力が直に、私に伝わってくる。


 何て、力強いのだろう。
 たっ君も相当、緊張しているのかも。


 カシャ、カシャ!


 カメラのフラッシュと共にシャッター音が一斉に聞こえてくる。


 ここは、笑顔にならないと、怪しまれる。

 笑おう!笑え、自分!顔がひきつる……。


「さあ、カットしたケーキをお互いに食べさせて下さい」


 司会者が言うと、倉田チーフが2人に笑顔でフォークを渡しながら、後ろに退がり こっそりと言う。


「私共がついております!」


 倉田チーフは、私達を安心させたくて言ってくれたんだ……。


 ありがとうございます。


 落ち着いてきました……。


 はぁ、食べさせたら席に戻れる。


 では、食べさせましょうかと、たっ君と見つめ合った。

 うわっ!恥ずかしいなぁ。

 たっ君、よく見たら まつ毛が長いですね。

 うらやましいです。
 
 そうだ、見とれていられない!

 この ケーキのひと口分をフォークに刺して、食べさせっこをすればいいのよね!


「ケーキの口移し、してー!」


「 ! 」


 後ろの方から、恐ろしい声が聞こえてきたのだった……。

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