ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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身代わり花嫁

頼りになる人

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 お酌をしてくれると言う、この おじ様が私の事を怪しんでいるのかしら?


 新婦の会社関係者という事は、わかったけど、名前を知っているだけでは、どうする事も出来ない!

 どうしよう、誰か助けて!

 顔は、笑顔を保ち、心で叫んでいる柚花なのだった。


「鈴木さん、樋口さんは緊張しているんですよ。

  だから、顔つきが違うんですよぉ。

 ねっ?先輩!」


 私は「うん、うん」と超微かな声で返事をしながら、顔を上下に高速運動させた。


「樋口さん、何をやっているんだい?

 頭の飾りが取れてしまうぞ!
 面白いな君は。もう、飲んでいるのかい?

 酒豪の君だから、これくらい何でも無いだろう。 さっ、どうぞ」


 取り敢えず、コップを持って、お酌を受けて……


 新婦の持つコップにビールが注がれる。

 トクトクトク……

 両手でコップを持つ。

 ……カタカタカタ……尋常じゃないくらい震えている……。

 ビール瓶の口がコップに当たって、音がしているのだった。

「やだぁ、樋口先輩、震えているじゃないですか。

 緊張しているんですね。可愛いです」


 新婦の同僚の女性、えっと、徳永さんから言われて、私は、更に緊張が増し、注がれたコップ一杯のビールを一気に飲み干した。

「さすが樋口さんだ!」

 鈴木さんが言った。

 どうやら、私は本物と認められているみたい、良かった。


 支店長の相手をしていた新郎は、ヒヤヒヤしながら、助ける方法を模索するが、思いつかない。

 
 その時、ビールを手に黒留袖を着た年配の女性が現れた。


「まあ、いつもお世話になっております。

 わたくし、新婦の叔母で、仲人なこうどを務めさせて頂いております。

 正木と申します。

 本日は、お忙しい中を御臨席下さいまして、心より感謝申し上げます。

 さっ、一杯いかがですか?

 すみません、コップを下さい」


「はい、お持ちいたしました」

 後方から軽米がコップを3個、既に運んで来ていた。

 実は、ビール瓶を持って、仲人席に助けを頼みに行っていたのだった。


 新婦の叔母が話し掛け、それぞれにお酌をしていると、司会者の声が聞こえた。


「ご歓談中のところ、恐縮ではございますが、一旦、ご着席願います」

 各自、自席へと戻って行った。

 引き続き、司会者が話す。


「これより、このキャプテンソフィア号のクルー、原口より 新郎新婦ならびに本日お越し頂きました皆様へ、感謝の気持ちと致しまして、ピアノの生演奏がございます。

 生演奏の中、新郎新婦はお色直しで、一時退席させて頂きます。


 それでは、原口さん、こちらへどうぞ」


 スポットライトと拍手を浴びながら、白い船員服に身を包んだ原口が会場に入ってきて、ピアノの前に立った。


 マイクを持った原口が話し始めた。


「折原さん、春菜さん、本日はおめでとうございます。

 この晴れの日に、私どもの船をお選びいただいて、誠にありがとうございます。

 ささやかな演奏ではございますが、皆様、少しの間、お付き合い下さいませ。

 それでは、お聴き下さい」

 原口は、マイクをピアノの上にあるスタンドへ戻し、椅子に座る。


 会場は、物音ひとつしない静寂に包まれた。

 原口さん、ピアノが弾けるなんて、凄い!

 どんな素敵なクラシックを弾いて下さるのかしら?

 
 原口さんは、私より年上だと思うけど、30歳前後くらいかしら?


 結婚指輪はしていないけど、どうなんだろう。


 私はピアノとか演奏系は、まるでできないから尊敬しちゃいます。


「ふーーー」

 期待に満ちた会場に、原口の深呼吸が漏れ伝わってくる。


 原口さん、相当、緊張している。

 誰かのゴクリと唾を飲み込む音も聞こえてきそうなくらい、会場は静かだ。


 すると、突然、メロディーを奏で始めた。


 ちゃんちゃ、ちゃっちゃ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃー、ちゃっ、ちゃっ、ちゃー、ちゃっ、ちゃっ、ちゃー……


「 ! 」

 これは、もしかしなくても、“何とかの羊”の曲?だよね。


 会場は、一瞬、どよめいたが、周りのスタッフ達が一斉に手拍子をするから、皆も笑顔で手拍子をし始めた。


 幼い子供たちは、喜んで踊り始めている。


 その中で、私達は促され、会場から出るためにピアノの前を通った。


 私は、演奏をしてくれている原口さんに精一杯の感謝を込めて、会釈をした。

 新郎たっ君も同様に会釈をしていた。


 大きな扉を前に再び、向き直り、2人は深々とお辞儀をして、扉の向こうの世界に出た。


 そこには、切り分けられたウエディングケーキがのったワゴンがあった。

 その奥の方で、羊の着ぐるみの頭を被ろうとしていた外崎とのさきがいたのだった。


「外崎さん!あなたが着ぐるみを着て、ケーキを運んでくれるの?

 私達の為にありがとう。

 宜しくお願いします」


「丸山さん、お任せください!羊になりきってきますんで!じゃあ」

 そう言って、頭を被った。

(丸山さんが、と言ったけど、身代わり花嫁なんですよね?)

 羊の着ぐるみは、腕を組んで頭を傾けたポーズをとって考えていた。


 扉の前で、羊の用意が整ったことを確認した婚礼スタッフの野村が言う。

「ケーキスタンバイOKです」

 会場のスタッフに通信したのだった。


 みんな、協力してくれて、ありがとう。

 仕事とは言え、この団結力には感動しちゃいます……。


 本当に私達2人のために感謝します……。


「さあ、お2人ともブライズルームへ行きましょう」


 軽米に促された2人は、やっと安心できる場所へと行ったのだった。


「丸山さん、ひとまず、お疲れ様でした。

 本当に貴方あなたに感謝しています。

 お色直し後も、宜しくお願いします」


 あっ、そうか、身代わりの花嫁だったんだ。

 いっけなーい、忘れてたわん。

「ふふふ、ふふふ、はい、がんばりますっ!

 せっかくの結婚式だもの。

 頑張りますよぉ!」


 あれ?何だか、おかしくもないのに笑いが出てくるよん。


 どうして?あれ?


「丸山さん?どうかしましたか?」


 匠海は、首を傾けたままでいる柚花に声を掛けた。



 その頃、会場では……。


 ピアノを一心不乱に弾く原口は、二曲目に突入し、超有名なアニメソングになり、会場は盛り上がっている。

 
汗だくでケーキのワゴンを押して周る着ぐるみ外崎。

必死で作戦を練る倉田チーフと野村。

 皆、思いは ただひとつ。


『必ず、この婚礼を成功させるんだ』


 その思いを乗せて、披露宴は進行中なのだった……。

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