ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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身代わり花嫁

怪しいけど、大丈夫?

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「丸山さん、大丈夫ですか?」

 どことなく様子が変だと気づいた匠海が聞いた。

「えっ?何ですか?私は支度部屋に行きますねぇ」


 パタン!柚花は、中へと入って行った。


「折原さん、どうかしましたか?

 早く支度を始めて下さい」


「軽米さん、ちょっと」

 匠海は、柚花の小さな変化を軽米に伝えた。

「えっ?丸山さんの様子が変なんですか?

 どうして……?

 あっ、もしかして、アルコールを飲んでませんでしたか?」


「えっ?少しだけ、コップ一杯だけビールを飲みました。それだけです」


「ビール、コップ一杯?

 なら、まだ、大丈夫ですかね……もう、飲ませないで下さい。お願いします。

 今、水を飲ませますから」

 
 軽米は、そう言って急ぎ支度部屋に入って行った。


 匠海は、柚花の事を気にしながら、グレーのタキシードに着替えた。

 
 そして、美容師でもある衣装さんが、髪を直してくれているから、鏡の前に座っている。


「あっ!」

 匠海が突然、大きな声を出した!


「わあっ!何ですか?」

 髪をかしていた衣装さんが、飛び上がって言った。


「すみません。何でもありません」

(さっき、丸山さんは酔うと、キス魔になるような事を言っていたような気がする……あれって、冗談ではなかった?まさかね……)


「結婚の神様!もう少しだけ守って下さい。
どうか、無事に終わらせて下さい」

 匠海は、鏡に向かって手を合わせ拝んだ。


「大丈夫。きっと願いはかないますぞ」

 後ろにいる年配女性の衣装さんが、神様になりすまして、言ってくれたのだった。



「ははは、ありがとうございます」

 匠海は、衣装さんの心遣いが嬉しかった。

………………

「うっ!苦しいです……これ付けないといけませんか?」


 次のドレスは、春菜さんが選んだドレスを着る事になり、ウエストが若干太めの柚花は、補正下着を付けることになって、上半身がキツくて辛いのだった。


「今度は、童話の中のお姫様の様な、黄色のふんわりドレスです。

 はい、このパニエドレスも履いて、ドレスを思いっきり広げないとね。

 裾にワイヤーがあるので、歩く時は気をつけて下さい」


「はぁい」

 柚花が陽気に返事をしたのだった。


 お姫様になるみたい、気分が上がるぅ!


 衣装担当の人は、柚花の方を二度見した。

(あら?こんなキャラの人だったかしら?)


 
 着替え終わり、鏡を見て柚花は思う。

 わぁ、私って意外と黄色が似合うみたい!

 髪型は、花飾りからティアラに替えて、ウェーブウィッグから縦巻きロールウィッグにチェンジして、本当にお姫様になったみたい。

 私の結婚式本番も、こんな感じにしよう!

「ふふふ……」

 
 いきなり、1人で笑っている柚花の姿に気付いた軽米が声を掛けた。


「丸山さん?大丈夫ですか?ビールを飲んだらしいですね。

 はい、このお水を飲んで下さい。

 もう、飲まないで、飲む振りをして下さい。

 この企画を成功させないといけないですから!お願いします」


 うん?私、酔った様に思われているのかしら?

 コップ一杯のビールを飲んだだけだから、酔ったりしないでしょ!


「あ、お水、ありがと。

 大丈夫、お酒は飲まないようにするから。

 そうね、必ず、成功させましょうねっ!」
 

(丸山さん、大丈夫そうだ。良かった)


 ホッとした軽米は、新郎新婦を再び、会場へと誘導するのだった。


………………

 新郎新婦が再び登場した頃には、原口のピアノ演奏は終わっていた。


 もう、演奏は終わってしまったのか。

 もっと聴いてみたかったな、残念。

 
 そんな事を考えながら、新婦席に座り、テーブルに飾られたアレンジフラワーを何気なく眺めていた。


 浅く幅は狭いが、テーブルと同じ長さのガラスの器が置かれていて、オレンジ色を基調とした沢山の花々が生けてある。

オレンジ色の薔薇やガーベラに、白いカスミ草と白いトルコキキョウがアクセントになっていた。


 ゲストのいる各テーブルにもオレンジ色の薔薇をメインとしたアレンジフラワーが飾られている。


 お花がとっても綺麗。


 春菜さんが会場のメインカラーを選んだのよね……。


 この黄色いドレスも……楽しそうに選んでいたのに。


 どうして、いなくなってしまったのだろう?


 たっ君との問題なのか?それとも違う問題があったのか……。

 
「それでは、おふたりがセレクトした曲に乗せて、思い出の写真をご覧下さい」 


 司会者がフォトムービーの開始の案内をした。

 
「これって、春菜の顔がアップで映し出されませんか?」


 匠海が心配になって柚花に聞いた。

「他のスタッフが編集をやり直したと、先程聞きました。

 ですから、大丈夫だと思います。

 それと、私達の写真も追加されているはずです」


 しっかりとした柚花の受け答えに、さっき感じた異変は、気のせいだったのかと、匠海は安心したのだった。


 フォトムービーは、新郎新婦の生い立ち写真やツーショットの写真が映し出され、会場は盛り上がっている。

 
 幸せそうな笑顔の2人。

 そして、本日の写真が映し出された。

 この客船の船長が立会人となる船長式での2人。


 新郎新婦の後ろ姿の写真……。


 誓いのキスのモノクロ写真……。


 ちょっと、この写真は、新郎にはキツイでしょう!


 今、たっ君は どんな思いで、これを見ているのかしら?
 

 チラリと横に目をやると、ひとつ溜息をつき、手酌てじゃくで、ビールを注いでいる匠海がいた。

 そうですよね、こんなの飲まなきゃ見ていられないですよね?

 ここに出ている花嫁さんは、今、いないのだから……!


 ゲスト達は、自身が映し出された写真を見つけると、声を上げたりして、楽しそうにしている。

「匠海さん、お酌します。ゲストの方々は、楽しんでくださっているみたいですね」

 柚花がひと言、添えてお酌をした。

「はい、あっ、すみません。

 そうですね、楽しんでもらえてれば、それだけが、救いです。

 僕達は、まだ籍を入れていなかったんですけど、そのうちに、離婚をしたと言わなければならないでしょう……」


「そうですよね……あっ、お飲み下さい」


 匠海がひと口飲んだ時、

「エヘン、うっうんん!」

 新郎新婦の後ろで控えている軽米が咳払いをした。


「ここで、そんな話しは、御遠慮下さい」


 2人は、すみませんと言って、また、フォトムービーを見る。

 
 今度は、私達の写真となった。

「なんだ、結構、僕達、仲の良い夫婦に見えますね」

 たっ君が言ったけど、本当、その通りだと思う。


 本当に私達の結婚式みたいに思える。


「そうですね、見つめ合ったりして、仲が良さそう。恥ずかしいですね、ふふふ」


 2人は、照れながら話していたら、

「折原さん、仲が良さそうなんて、自分達で言って、自画自賛ですか?

 まったく、見せつけてくれちゃって!

 私は、独身だから、羨ましいです」

「 ! 」


 その言葉にギョッとして、前を見た。


 そこに匠海の会社の後輩、2人の男性がいたのだ。


 来た事に全く気付かなかった!
 これは、気は抜けないな!

 柚花は、反省をしながら、注いでもらったワインのグラスに唇をつけ、飲んだ振りをして嘘をつく。

 「あ、このワイン、飲みやすいですね」


 柚花と匠海は、その場をやり過ごし、2人は同時に、ふうっと ひと息ついた。


 その時、背後から 声がした。


「折原さん、春菜さん!」


 あっ、驚いた!倉田チーフか!


「この後、恒例のご両親への花束贈呈です。

軽米さんから説明を受けていますね?」


「はい、承知しています」と柚花が言うと、匠海も「はい」と頷いた。


「この披露宴の見せ場となります。

 春菜さん、あなたは……ですからね!

 わかっていますね?」


 そう言って、倉田チーフはその場を離れて行った。


 わかっています!倉田チーフ!


 私は、女優、大女優ということですね。



 見てて下さい!やってやります!

 
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