ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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それは、突然です!

偽妻と たっ君

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 私は、今、折原 匠海の妻、春菜として水族館にあるレストランにいる。


 たっ君の上司の村田さんに声を掛けられ、ドキドキしているところ……。


「この夏の台風で、キックス(KIX)が閉鎖になってしまって、春菜さんの営業所も大変だったでしょう?」


 えっ?何のこと?意味が分からない!

 旅行会社が台風で、大変と感じるのは、乗り物が止まることでしょう?

 何が閉鎖されたの?
 何だか分からないけど、返事をしてみよう!


「はい、大変でした。
 法人の方も大変だったことでしょう」 

 柚花は、適当に言ってみたのだった。

 側にいる匠海は、助け舟を出そうとしていたのだが、柚花が答えたので驚いた。


(へえ、空港名を言ったことがわかったのかな?それとも偶然?

 航空会社や旅行会社が使う、世界共通のスペルや読み方の空港コードで、わかる人って少ないと思うけど……)

 


「そうなんだよ、折原君から聞いていると思うけど、企業の団体旅行がキャンセルになって、キツかったんですよ」

 村田は、柚花を旅行関係の仕事の人だと信じているのだった。


「じゃあ、村田さん、僕達、向こうの席なので行きます。失礼します」


 これ以上、柚花に対応させるのは酷だと思った匠海が、言ったのだ。


…………………

 2人は、イルカの姿が見える窓の側に座る。


「キックスが空港コードだと知っていたの?

 航空会社にでも勤めたことがあるの?」

 
 柚花が随分と、マニアックな事を知っているから不思議に思って、聞いたのだった。

 
「空港?コード?
 何の事だかさっぱりわからなくて、適当に答えてみただけ。

 仕事の話しは無理だから!助けて下さいね」


「そうだったんだね、ごめん。はい、了解です」


 2人は、その後 水族館を純粋に楽しみ、匠海のリクエストで再度、ペンギンに会いに行く。


「たっ君……あっ、あなた……は、ペンギンが好きなの?」


「うんうん、大好きだ!
 愛嬌のある歩き方、泳ぐ姿は、カッコいいけど、飛べない鳥でしょ。

 何だか、愛おしくなってしまうんだ!」


 へぇ、そんなにペンギンが好きなのか……。

 まあ、確かに可愛いけどね。

「ペンギンって、寒い所にいるイメージがあるでしょう?

 でも、種類によって違うんだよ。
 暖かい国にもいるんだ。

 このマゼランペンギンがそうなんだ。
 ねっ、可愛いでしょう?」


 幸せそうに、ペンギンの姿を見て話す、たっ君を可愛く思う柚花だった。

 
…………………

 バスハイクは無事に終わり、朝、待ち合わせたコンビニの駐車場に柚花と匠海がいる。


 このコンビニは、主要道路脇の交差点手前にあるのだ。


「今日は、どうもありがとう。
 
 こう言ったら、変かもしれないけど、今日はとても楽しかったよ。

 丸山さん、お疲れ様でした。

 今度、御礼をしたいんだ。
 一緒に食事に行かない?
 良ければ電話番号を教えてもらいたいけど、駄目かな?」

(さすがに電話番号は、教えてもらえないよな……。
聞くべきじゃなかったかな……。
 ちょっと、後悔だな)


 あっ、これ偽彼氏になってもらうチャンスかも!

 思い切って話してみようか。

 2人は、それぞれ考えていたのだった。

 
 そして、柚花が言う。

「御礼は、いらないですけど……こ」

 
 柚花の言葉を遮り、匠海は言う。


「そんな、遠慮はしなくてもいいのに、じゃあ、僕の友人がカレンダホテルに出入りしている花屋だから、そいつに連絡を頼むから、是非、食事に行こう。

 あっ、そうだ!さっき、丸山さんにお土産を買ったんだ。はい、これ」

 これ、さっき選んでいた物だ……私に選んでいたのかぁ……。


 袋の中に、可愛いペンギンイラストの缶クッキーが入っていた。


「あ、可愛い!貰っちゃっていいの?

 では、遠慮なく頂きます。

 たっ君、ありがとう!」


(たっ君って、そんなに呼びたいのか……)


 そんな2人の様子を信号待ちをしているドライバーが興味有り気に見ていた。



「それじゃあ、僕は帰るね。
 本当に今日は、ありがとう。またね」

「はい、じゃあ、またね」

 2人は、自分たちでも気づかないくらい、自然に親しい口調になっていたのだった。
 

 手を振り、匠海の運転する車を見送っている柚花。

 
 どこからどう見ても、カップルそのものだった。


 興味有り気に2人を見つめていたのは、信号待ちで、コンビニ横に止まっていた野口だった。


(あれは、丸ちゃんだ!あれが彼氏?

 見たことあるような気もする……。

 ふーん、彼氏なんて嘘かと思っていたけど、本当にいたんだな……。

 あーあ、本当にいたんだ…手放して惜しいことしたかなぁ。

 仕方がない、食事の予約を入れよう)

…………………

 
「丸ちゃん、待って!」


翌日の退社時に、野口が柚花を引き止めた。
 
野口は、シェフ服を着ていた。
 
まだ、仕事があるらしい。


「?」何の用なのよ?


 嫌な顔をした柚花が振り向くと、野口が言う。


「ごめん、クリスマス近辺は予約が無理だって、その上旬1週間辺りなら、いつでも予約できるから、教えてよ。

 夜だから、大丈夫でしょ?

 必ず、都合をつけてよ!」


 などと、自分勝手な事を言われたのだ。

「そんな、無理だって!
ええと、か、彼だって、都合がつくかわからないから……日にちを早められても、困るわ」


 柚花は、大いに動揺した。

「だから、1週間のいつでもいいから、はい、お食事券だよ。

 予約するから、いつにするかは、教えてよ。じゃあね」

  そう言って、野口は去って行った。


「あ、待って!あ、ありがとう……」

 って、どうしよう……。


 先日、たっ君に頼べば良かったな……。


 どうしよう……。


 日にちが早まってしまった!
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