ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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揺れる想い

砂浜で…… ★

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 私は丸山 柚花、恋人はいないけれど、このところ、男性に縁があるのだ。


 その1人である西崎 智也さんと今晩、食事の約束をして、少しウキウキしていた。

 
 職場を出る前にメイクを直して、髪を整え、ほんのりと香りをつけて、できる範囲でお洒落をした。


 それなのに、待ち合わせに遅刻して来て、食事はコンビニお握りになり、現在、真冬の夜の砂浜を歩かされている。


 さすがに月明かりだけでは暗いので、智也はミニライトで柚花の足元を照らして歩いてくれている。


 けれども、そんな智也の心遣いを、柚花は気づかないのだった。


 貸してくれた男物のダウンコートは、大きくて安心感があって、身体はあったかだけど、問題は足なのよ!


 ストッキングにパンプスだから、超寒い。

 私、鼻水が出そうです……。


 くしゃみでもしたら、これはヤバイレベルなんですよ!鼻水、ダラんは間違いない!

 万が一、氷柱つららの様に二本柱となった姿を見られたら、もう、あなたとは会えませんから!


 この砂浜で私をどうする気なの?


「この辺でいいかな、海だから風があるね」

 
 近くにある流木に持っていた袋を引っ掛け、中から折りたたみバケツを取り出した。


「えっ?バケツ?」

 驚いて柚花が呟いた。


「ちょっと、海水を汲んでくる」


 智也が戻ってきて、袋の中から虫除けキャンドルと線香花火を出した。


 この風の中で、やるつもりなのね?


「この流木の陰で、線香花火をしようか」

 智也がキャンドルに火を灯した。

 
 波の音にキャンドルと線香花火か……。


 夏ならいいかも。


「この花火……なかなか点きませんね……。

 この時期によく売っていましたね」


 柚花が聞くと、智也が答える。


「いや、俺の部屋にあった物だよ。いつのかは忘れた……」


 ははは、そうですか……なるほど……。


 そう思いながら、柚花は花火の先を見つめる。
 
「あっ、火が点いた!あっ、違う、燃えている」


「わ、バケツに捨てて!危な!
この花火、しけちゃったかな?ごめんね。

 一応、一袋分だけ、試そうよ」


 智也も火を点けるが、玉の部分だけがすぐに落ちてしまうのだった。


「あっ、もしかして、これは当たりかも!

 火が点いて、火の玉が落ちないもの」


「そうだね……頑張れ、火薬!火花を出せ!」

 2人は、線香花火の先端を見つめている。


 パチっ、パチっ……

 
「あ、始まった……」

 柚花は、ささやいた。


 暗闇の中で、小さく踊る火花が愛おしい。

 風に負けるな!頑張れ!


「頑張れよ!花火 頑張れ」

 智也が声援を送る。

 私たちは、何故か花火を応援している……。

 変人なのかもしれない。


 そして、遂にぽとりと火の玉が落ちた……。


「じゃあ、俺が挑戦してみるよ!見ててね」


「はいっ」


 柚花は、返事をしながら目は花火を見て、ショルダーバッグの中を手で探り、ハンカチを出して握っておく。


 寒さが、足が冷えて大変なのだ!


 それでも、同じ花火を見つめて応援しているのが、楽しくなってきたのだった。


「あっ、火の玉が少し元気になってきたみたい!

 火花が始まるかな?」


 柚花が小声で言った。

 大きな声で言うと、吐く息で火が消えてしまいそうだと思っている。


 パチっ、パチっ……


「これも当たりだね!」


 智也が嬉しそうに言ったから、柚花も笑顔で頷いた。


 オレンジ色の火花が忙しそうに踊って、ジジジって小さな振動に変化し、火の玉だけになる。


「あ……落ちた。線香花火をじっと見つめている間って、その火花だけをひたすら見て、何も考えないから、頭のリフレッシュになるんだ」


「へぇ、そうなの?

 私の場合は、線香花火と人の一生を重ねて見てしまって、最後、ぽとりと火の玉が落ちるところが、物哀しく、切なくなっちゃう……かな。

 でも、手持ち花火の中では、線香花火が1番好きなのよ」


「そっかぁ。感じ方は、人それぞれだね。

これが、ラストだよ。はい、どうぞ」


 智也から渡され、柚花は最後の線香花火に火を点けた。


「火が点いた!ああ、落ちちゃった!」

 柚花ががっかりして言ったのだった。


「あーあ、ハズレだったね!

 これ、俺の御礼の気持ちだったのに……失敗してしまったな……。ごめんなさい」


 智也が頭を下げた。


「いいの、いいの、楽しかったから、御礼を受け取りましたから、もう充分ですから、ハックシュン」


 出た!ヤバイ!


 柚花は、くしゃみをしてしまったのだ!


 急いで、鼻の下をハンカチで隠した。


 智也には、見られていないだろう。


 セーフ!


「あっ、ごめんね!寒いよね、早く車に戻ろう」

 
 片手にバケツと袋とライトを持ち、柚花の手を捕まえて、智也は急いで歩いた。


 そのスピードに合わせて、柚花は小走りになる。


 靴の中は、既に砂だらけだけど気にしない。
 

 わあ、心臓の動きが速いのがわかる!


 突然、手を握られたから、びっくりだよぉ!


 ああ、もう、駐車場に着いちゃった。


「さあ、食事に行こう。

 レストラン クルーズに行こうか」


 ……なんだ、お店に行くのか。


 お握りで終わりだと思っていたよ、智也さん、ごめんね。


……………………


 レストランに移動した2人。

 向かい合って座る。


 面と向かって座ると緊張するわ……。


 智也さんは、無言で外の夜景を見ている。


(花火は、失敗したー!しくじったな。

 女性は、海が好きだって、花火が好きだって、和希が以前に言っていたのを思い出して、計画をしたのに…無念だ……)


 智也がそんな考え事をしているとは、全く知らない柚花なのだった。


「あっ、そうだ、仕事の話しをさせて下さい。

 なので、仕事モードの話し方をしますね。

 菊乃様の婚礼式の事ですが、色々と格安になるように考えています。

 装花代が結構かかるので、今回は生花は抑えて、造花も取り入れるつもりです。

 ちょっと利益が下がってしまいますね、すみません。

 それと、価格を勉強して下さると嬉しいのですが、それは無理でしょうか?」


 柚花が言うと、智也も仕事モードに切り替えて話す。



「はい、格安でお願いしたのは私なので、もちろん勉強をさせて頂きます。

 目立たない場所は、造花でいきましょう。

 ホテルの方にも利益が少ないでしょうけど、宜しくお願いします」


「はい、演出費用を抑えても、満足して頂けるような式にするべく、スタッフ一同 全面協力をさせて頂きます」


 柚花の頼もしい言葉を聞いて、カレンダホテルを、柚花を紹介して、本当に良かったと思う智也だった。


「では、私も微力ながら協力をさせてもらいます。

 ブーケやフラワートス用ブーケも私が作りましょうか?」


 全て造花の物で考えていた柚花は、ニヤリとした。


「えっ?本当ですか? まさか、プレゼントしてくださるのですか?」


 智也は、格安で作るつもりだったが、そう言われては、嫌とは言えない。


「は、い、プレゼントです。結婚のお祝いです」


「わぁ、ありがとうございます。

 宜しくお願い致します」


 そう話していたら、料理が運ばれてきた。


 智也は、すぐフレンドリーに戻る。


「柚花、お腹が空いたでしょう?どんどん食べてね。じゃあ、いただきます」


「はい、いただきます。ハクシュン、ずるっ」


 ヤバイ!氷柱が出た!

 ハンカチで隠したから、セーフね。


 その日、家に帰っても くしゃみと戦っていたのだった。


 ああ、完璧に風邪をひきました!


 でも、菊乃様の婚礼式の演出を煮詰めないとね!

 寝込んでなんて、いられない。

 



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