ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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ある日、突然。

花嫁に変身だ。

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 私、丸山 柚花は、毎日、百円小銭貯金を続けている。


 老後の準備は早いに越したことはないと考える もうすぐ29歳の私。


 本日は、カレンダホテルのブライダルCMの撮影で、チャペルシーンを撮る予定だ。


 出演者の女性陣はブライズルーム、男性陣はブライダルサロンに分かれて支度をする。


 只今、倉田チーフのヘアを作ってもらっているから、柚花は隣で自分の番を待っている。


「倉田チーフ、私、新郎役の方と支配人に、本日はお願いしますって挨拶をしていませんけど……。
 本当にいいんですか?

 協力をしてもらうのに、失礼になりませんか?

 今、ブライダルサロンにいるでしょうから、挨拶に行ってきてもいいですか?」


 柚花は、まだ、支度前だったので倉田チーフに聞いてみた。


「私が挨拶をしておいたから、大丈夫よ。

 それよりも、今さらなんだけど、 私、あなたの母親に見えるか心配だわ。

 上手くメイクをしてもらわないとね」


「はい、倉田チーフは若々しいので、私の母親っていうのは、少し無理がありますよね……。

それに、支配人も私の父親というには若過ぎですし、大丈夫でしょうか」

 柚花も少し気になっていた。

 倉田チーフの髪をまとめて、ウイッグを付けていたヘア担当の金木さんが話に加わって言う。


「ふふふ、大丈夫ですよ。両親役にはメイクして老けさせるから、ご心配無く。

今、湊さんが父親役のメイクに行きましたよ。湊さんって、メイクアップのカリスマと言われた頃もあったベテランなので、仕上がりを楽しみにして下さいね」

 と、言ってくれたから柚花はホッとし、倉田チーフは内心、老けたくないなどとチラリと思ったりしていた。

………………

 先に留袖を着て、支度を終えた倉田チーフは、打ち合わせのためブライダルサロンへと行き、代わりに軽米がブライズルームへとやって来ている。


「うわぁ、丸山さん、白のウェディングドレスがとっても綺麗です。以前、着ていたドレスよりも似合っていますよ。

 後ろ腰に付いているシフォン素材の大きなリボンが凄く可愛い!

ほら、鏡で見てください。見えます?

私が選んだ このドレスは、大正解でしたよね?

丸山さんは、マーメイドドレスがいいって言っていたけど、Aラインドレスの方が、このドレスの方が断然似合うと思っていました。
 
 ヘアメイクをして着てみると、試着の時よりも良いですよ」


「えっ、そう?そんなに似合う?

なら、良かった。試着した時、マーメイドの方も悪くはないとは思ったけど、まあ、体型が隠せなかったからね……。

 うん、バックスタイルが可愛いみたいだね。軽米さん、これを選んでくれてありがとう」


 軽米が褒めてくれたので、柚花は自信を持って演じる決意をしたのだった。


「丸山さん、ベールを付けますよ」

 ヘア担当の金木さんがベールを付けてくれて、これで花嫁の準備が整った。


「きゃあ、もう本物の花嫁さんですね。
ティアラに腰丈くらいのショート丈のベールが素敵です。いいなぁ」

「軽米さんの打掛姿は、最高に美しかったわよ。羨ましいくらいに素敵だったから、安心して!

でも、褒めてくれて、ありがとう!

新婦になりきってくるからね」


「そんなぁ、美しいだなんて、すっごい嬉しいです。

はい、丸山さん、花嫁さんになりきって下さい!応援しています」


 軽米は、頬を薄っすらピンク色に染めて、照れながらも喜んで言った。


「ねえ、軽米さん、新郎役ってフロントの戸塚さんなんでしょう?

私、話した事がない人なのよね。
それに、まだ挨拶をしていないの。

 倉田チーフが、挨拶はしなくてもいいって言ったのよ……。

まあ、今から行くからいいけど。

 では、軽米さん、介助をお願いします」

 
 本日の介添人は軽米さんで、私が歩く時に介助をしてくれるのだ。


「はい、かしこまりました。
では、隣にあるブライダルサロンへ参りましょう」

…………………

 ブライダルサロンの前で、一旦、立ち止まり、振り向いて、後ろの軽米に行くよという合図を送った。

 花嫁衣装の私を見た他の人たちは、どう思うか少しドキドキする。


「失礼します。本日は、よろしくお願い致します」


 柚花は、そう言って中に入った。

 中には、変装している緑川神父、父親役の支配人、母親役の倉田チーフ、新郎役フロントの……うん?


「 ! 」


「えっ?えっ?どうして、あなたがここに?何故にその姿で?」


 柚花は、物凄く驚いていた。

 
 そこには、花婿衣装、濃いグレーのフロックコートを着て、襟首にアスコットタイ(幅広ネクタイ)を合わせた西崎 智也さんがいたからだ。

「今日は、よろしく……」

 智也がそう言いながら会釈をした。

「わっ、わっ、どうしてなの?あれ?フロントの人は?誰だっけ、そうだ戸塚さんはどうしたの?」


 柚花は、動揺している。

 そこで、倉田チーフは口を開く。

「戸塚さんに、今日は都合が悪いって、断られてしまってね。そしたら、軽米さんがお花屋さんに頼んでみましょうか?って言ってくれたの。

それで、協力して頂くことになったのよ」

 倉田チーフは、柚花に「綺麗ね」とも付け加えて言ったのだった。


「どうして、何も教えてくれなかったんですか?」

 
「丸山さんを驚かせようと、倉田チーフに内緒にしてもらっていました。 

 サプライズ、成功ですね!」

と、軽米さんが笑顔で言ったから、柚花は驚いたよと言うだけにした。

 
 ここにいる者たちは、ひと通り、花嫁姿を褒めてくれたから、柚花はやる気がアップしたのだった。


「と、西崎さん、本日はありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します」

 柚花は、智也に御礼を言ってから、皆で打ち合わせをする。


 薄い台本には、簡単な台詞があるが、台詞の音声は流さない予定となっている。

 
 それでも、口の動きが映るから台詞を覚えなければならない。


  皆で、ざっと台詞合わせをしていると、「皆さん、チャペルへと移動して下さい」と外崎から軽米へと連絡が入った。


「では、皆様、新郎 新婦 専用通路を通ってチャペルに行きましょう」

 軽米が皆に声を掛けた。


 皆は、一瞬 沈黙し、覚悟を決めて歩き出した。


皆の後ろをゆっくりと歩く柚花に合わせて、智也が並んで歩いている。
  

「柚花、とっても綺麗だね……」

 智也がこそっと言った。

「えっ?お世辞を言わなくてもいいですから。

  智也さんこそ、イケメン度が増し増しになっていますよ。

 智也さんが出演してくれるから、きっとCM効果アップになります。 
 
 本当に助かります。ありがとう」

 
「お世辞なんて、言ってないから!

 柚花の花嫁姿は本当に綺麗だよ。
 俺、ブーケを作ってきたんだけど、そんな花なんか霞むくらい綺麗だよ!」


「えっ、ブーケ?智也さんが作ってくれたの?へぇ、どんなのかしら楽しみ」


 柚花と智也は、2人だけの会話で盛り上がっている。


 柚花のドレスの裾を持って、後ろを歩く軽米の存在をすっかり忘れていたのだった。


(西崎さんに花婿役を頼んで良かった。

私は、完全に空気と化しているけど、丸山さんが嬉しそうにしているから、まあ、いいけど!

 すっかり忘れられているよね……)


「柚花のイメージで作ったブーケだからね……受けとってほしい」

……えっ?なんかドキッとする言葉。

 えっ?ドキドキしてきたよ。

 
 もうすぐ撮影が始まる高揚感かしら?
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