ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

文字の大きさ
71 / 129
ある日、突然。

嬉しい恥ずかしい ★

しおりを挟む
  会議の後、倉田チーフは早速、厨房を訪ねて交渉し、スタッフルームへと戻ろうとしていた。

 途中、帰ろうとする軽米に会ったので、得意げに話す。

「あら、まだ帰っていなかったの?
今ね、総料理長から許可をもらってきたわよ。
それにね、ふふ、本人も乗り気だから、これで大丈夫よ。

丸山さん、喜んでくれるかしらね?」


「えっ!本当に花婿をやるって言ったんですか!はぁ、そうですかぁ」


(まずい……丸山さんが毛嫌いしている奴と写真を撮るなんて、あり得ないでしょう……)


「倉田チーフ、お願いがあります!」

……………………

「えっ?ちょっ、野口が?いえ、野口シェフが和装の新郎役に?あ……そうなんですか……」


 倉田チーフから、野口が新郎役を引き受ける事を聞き、柚花は戸惑っていた。


 その日、仕事が終わった私は、軽米さんと電話で話している。

「えっ?ナレーションをやりたいの?
そんなに?何、軽米さん、アナウンサーになりたかったの?

 落ちた?本気でなりたかったのね。

 わかった、いいよ。

 こちらこそ、私のことを思いやってくれて、感謝しているから、ありがとうね」


 軽米さんが、和装役と洋装役を交換する代わりに、ナレーターをやらせて欲しいと頼んできた。

 彼女は、昔からアナウンサーに憧れていたから、是非、やってみたいと言ったのだ。

 
 まあ、私はナレーションをすることに思い入れは特に無いから軽米さんに譲ることにした。

 それよりも、私を気遣って倉田チーフに役の交代を申し出てくれた軽米さんに感謝で一杯だった。


 元彼の野口シェフとは、あまり関わりたくないから有り難いのだ。

……………………

 それから数日が経ち、いよいよ和装役の写真撮影日となった。


 男性は、ブライダルサロンで支度をしてもらい、女性はブライズルームで花嫁支度をしている。


 そして、撮影スタジオで会うことになっている。


 最初に支度が出来た野村と外崎から、写真撮影となった。

 先に写真スタジオで待っていた外崎は、野村の姿を見て息を飲んだ。

 
「うわぁ、綺麗だ……。その色打掛……。

野村さん、白地に赤が上品だよ!
古典柄も新鮮な感じがする。

 それにその まとめ髪に白い大きな花の飾りを耳の横につけ、キュートで凄く良いと思う!

 野村さん、パーフェクトだよ」

 
 外崎が少し大袈裟に褒めてくれて、とても気分が良い野村もお返しに言う。


「外崎さんも その黒五つ紋付羽織袴くろいつつもんつきはおりはかまがとても良く似合ってるよ。

 男性の正礼装は、この黒の羽織だけなんだよねぇ。でも袴がストライプでカッコいいよ」


「へへっ、ありがとう。
女性の正礼装は、いろいろとあるのに少し不公平だね。

 まあ、婚礼式のメインは花嫁さんだから仕方がないかな」

 外崎と野村は、いい雰囲気で撮影を終わらせたのだった。


 次のカップルは、支配人と倉田チーフだ。

 
 皆が支配人と呼ぶ彼は、カレンダホテルの総支配人で偉い人なのだが、倉田チーフの同期で、仲がいいのだ。

 倉田チーフは、根岸君などと呼んでいる時もある。

 
 その支配人は、撮影スタジオで落ち着くことが出来ずに、倉田チーフを待っていた。


 うろうろうろうろ……。


 こちらも、黒五つ紋付羽織袴で、袴は灰色の物だ。


 支配人の様子を見かねたカメラマンが声をかける。


「あのね、総支配人さん、本当に結婚をするわけじゃないんだから、少し落ち着いたらどうですか?」


 そうこうするうちに、倉田チーフと花嫁の介添の柚花が一緒に来た。


「お待たせしました」


 倉田チーフは、文金高島田の髪型を綿帽子で隠した白無垢姿で現れた。

 
「……」支配人は、言葉を無くして見とれている。


「あの、総支配人?……ねえ?根岸君」

 支配人が何も言ってくれないから、倉田チーフは恥ずかしさが込み上げてきている。


(やっぱり、体型が崩れてきたから似合わない?

ねえ?根岸君!何とか言ってくれないの?泣きたくなるわ)


「倉田さん……いいよ……うん、凄く綺麗だよ!ごめん、見とれちゃった……。

奥ゆかしい君に ピッタリだと思うよ」


「本当に?本当にそう思ってくれるの?」

 倉田チーフは、感激した様子で言った。


「根岸君も、その姿 なかなか素敵よ」


 先程の外崎、野村カップルの時もそうだったが、花嫁の介添をやっている柚花は、壁の様に存在を消している。


 皆さん、勝手に好きに仲良くやっていて下さい。


 そんな風に思いつつ、野村さんも倉田チーフも とっても素敵だし、おしとやかに見える。


 和装もいいよね。もっとお客様に勧めてみようかしらなどと考えている柚花だった。


 倉田チーフと支配人の写真撮影が済んで、ブライズルームに軽米を迎えに行った柚花は驚いた。

「わっ、可愛い!軽米さん、とーっても可愛いわよ」

 白い着物の上に、ピンクの大輪の薔薇柄が印象的なオーガンジー素材の打掛を羽織っている。

 これは、今、人気の新和装と呼ばれるものだ。


髪型は、洋髪に濃いピンクの生花の薔薇がまとめて飾られ、もともと可愛い軽米に華やかさがプラスされ、とても美しい新婦となっていた。


「いや、丸山さん、そんなに見つめないで下さい。恥ずかしいですから!

 じゃあ、スタジオに連れて行って下さい」

 軽米が照れながら言った。

柚花と軽米が撮影スタジオに入って行くと、野口が待っていた。


「野口シェフ、お待たせ致しました」
 
 軽米が言った。

「はっ?君はブライダル部の……あれ?丸ちゃ……あれ?どうして?」

野口は驚き、軽米の後ろにいる柚花に気づいて声をかけた。


「ああ、軽米さんが和装がいいと言ったから、チェンジしたの。

 野口さんが この役を引き受けてくれたのね。ありがとうございます。

 その水色の色紋付、なかなか似合っていますよ。

 2人が並ぶとピンクと水色で、いい感じだわ。では、カメラマンさん、撮影をお願いします」


 最初は野口が気に入らなくて、ぶすっとした顔の軽米だったが、カメラマンに乗せられて、いつしか良い表情になり、2人の最高の笑顔が撮影されたのだった。


「お疲れ様でした。

2人とも、とっても良い表情でした!

きっと、素晴らしい写真が撮れていると思います。

 ねっ?佐野カメラマンさん?」

 柚花が言うと、カメラマンは、親指を立てて、もちろんと言った。


 野口が撮影スタジオから出て行く時、柚花にこっそりと言う。


「丸ちゃん、今晩あたりご飯に行かない?今日の打ち上げってことで!」


「行きませんよ。

今日は、本当に助かったわ。
ありがとうございました。

 ……本当にありがとう」


「はっは、今日も振られた。

じゃあ、またね」

 そう言って、野口は軽やか去って行った。

 それを見ていた軽米は、「丸山さん、騙されたらいけませんからねっ!」と釘をさす。


「わかっているわよ。
そこまで馬鹿じゃないしっ。
さっ、早くブライズルームへ戻りましょう」


 柚花は、軽米の着物の裾を捲り上げて、追い立てるように移動を開始したのだった。

 
 写真撮影は済んだし、今度はチャペルの撮影がある!


 次は私の番ね……。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

処理中です...