ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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さあ、始めよう!

運命が動き出す

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  柚花は、スタッフルームで制服に着替えるためカーテンを閉めた。

私、丸山 柚花は29歳になりました。

 と言っても、28歳の時と特別 変わりはない。

 今日だって、いつもと変わらぬ1日を迎えるのだろう。


 でも……。


 柚花は、胸にあるブルーのペンダントを握り、目を閉じた。


 智也さんから貰ったペンダント……。


 私に対する気持ちが本気であると言ってくれた……。


 その言葉を信じると言いながら、本当は信じきれていない自分がいる。


 信じたい、信じてみようか?


 母の言うように、自然に任せてみようか?


 素直にしていれば、運命は勝手に動いていくのだろう。


 それが、どんな風に動くかは 分からないから心配なんだ。


 母は、顔で結婚相手を選んではいけないと言ったけれど、好きになってしまった人が、たまたま顔が良かっただけなら、仕方がないよね?


 自然に任せた結果なら問題はないでしょう?


 いや、待てよ。


 智也さんの言葉を信じて、受け入れたら、その先には“嫉妬”という運命が待っているのかもしれない。


 分かりきっていて、流されてみるの?


 はぁ。


 柚花は、ため息をつきペンダントを外し大切にバックの中にしまった。

……………………

「丸山さん、フロントにブライダル相談のお客様がいらしているそうですから、お願いしますね」

 フロントから連絡を受けた倉田チーフが私に頼んだ。


「はい、かしこまりました」

 ブライダルサロンにいた柚花が、待っているお客様と対面するためにフロントに来た。


 あっ、あの後ろ姿の方々かしら?

 小さなお子様もいらっしゃるのかな?


「大変、お待たせ致しました」


「あっ、はい。結婚の相談……をしたくて……」


「 ! 」「 ! 」


 あっ、何で?どうしてここに来たの?

 どうしよう、言葉が出てこないよ!

 早く言葉よ、出てきて!

 奥様に不審に思われる!


「い、いらっしゃいませ。ご相談ですね。2階のブライダルサロンで お伺い致します。

 こちらへどうぞ……」


 震えるような声で言い、エレベーターへ案内し、一緒に乗り込んだ。

 私は、ボタンの前に立ち、私のすぐ後ろにご主人が立った。
 

 ああ、視線を感じる……。


奥様が幼い女の子と手を繋いで、私の横に立っている。


 気まずい……。


 話しかけないわけにはいかない。


「可愛らしいお子様ですね。

おいくつなんですか?」


 私は、奥様に向かって聞いた。


「今年、3歳になります。

 ちょこちょこと動いて目が離せなくて、大変なんです」

 と、奥様が和かに言った。


 へぇ、感じの良いひとだね。


「そうなんですか。元気なんですね。

 あ、2階です。こちらでお降り下さい」

 
 柚花は、何も話さない ご主人の視線だけを感じながら、親子連れのお客様を案内した。


 ブライダルサロンに入った奥様が、沢山のウェディングドレスを見て、感激をしている様子だった。


 結婚式を挙げていなかったんだね。


 元彼の婚礼プロデュースをするのか……。


 奥様に私との事がバレると超気まずいし、ご主人とも超気まずいから、ここは軽米さんに任せたいな。


「それでは、こちらに お掛けになって、お待ち下さいませ」


 柚花は、にっこり笑顔で告げ、ブライダルサロンから出て、軽米に連絡をする。


「軽米さん、緊急事態なの。ブライダルサロンに来て!早く!」


 電話を切ると、ショッピングモールで会った あの元彼が、後ろに立っていた。

 柚花は、サロンの出入り口を気にしながら、小声で言う。


「どうして、ここに来たの?」


「初心婚の広告を見て、妻が来たいと言ったから……。

 まさか、柚が担当だと知らなくて、あの頃、確か宿泊担当をしていたはずだったろう?

 なんか、気まずい思いをさせて ごめんな」


「あっ、うん。話していて大丈夫?」


「うん、トイレに行くって来たから。

柚……他人のフリをしてくれて、波風を立てないでいてくれて、ありがとう」

 元彼が言った。

「この前も、今日も偶然に会うなんて、私達、凄い因縁があるのかしら?

……素敵な奥様で、良かった。
お子様も可愛いし、ユキが幸せそうで良かった……。

 遅いと変だから、もう、戻ってね」


「ああ、うん。柚、ありがとう」


 彼は、妻の元へと戻って行った。

 
 話し方は当時に戻るけど、時は戻せない。


 これが運命。


 今、運命をひしひしと感じている!


 少し哀愁を帯びた柚花が立っている。

 そこへ、軽米が階段を駆け上がってやって来た。


「ど、ど、どうしたんですかぁ?」


「軽米さん、今、来ているお客様を担当して下さい。そのかわり、今、あなたのしている事を引き継ぐから!

お願い、お願いします。

お客様がサロンでお待ちだから、すぐに行って下さい」


 柚花が早口で言って、軽米を入口へと押した。


「えっ?えっ?あ、はい、あとで、話して下さい。じゃあ」


 軽米は、ふぅっと息を整えて、澄ました顔をして中に入って行った。


 ありがとう、軽米さん。

 
 それにしても、別れてからの出会い方が衝撃的過ぎると思う。


 ユキから妻なんて言葉を聞いちゃったよ……。


 夫婦なんだから、当たり前に言うのか。


 はっ、また、他人を羨ましく思ってしまった。
 

 気をつけないと、人相が悪くなりそうだ。


 さあ、さあ、心のリセットボタンを押しましょう。

…………………

 その夜、当然のように軽米に誘われた。


 私服に着替えて、自然にペンダントをした。


 ヴェネチアングラスは、やっぱり素敵。


 智也からプレゼントされたペンダントを気に入っていた。


 柚花が仕事を代わって欲しいと、頼むくらいの事が起こったと考えた軽米は、車をホテルに置いて行こうと言い、和希に迎えを頼んだ。


 柚花は、お邪魔虫になりたくないと、断ろうとしたら智也も乗っていて、流されるように、一緒に来たのだった。


 智也は、胸のペンダントを見て、とても嬉しかった。


 軽米に逢えたから、ご機嫌で運転をする和希が連れてきたのは、日本料理の店だった。


 着いて早々、当然、軽米は私に聞いてくる。


 誠実に答えたいのは山々なのですが、


 ここで、しかも男性の前で、軽米さんに担当を代わってもらった理由を話せるわけないでしょう。


「あ、あの時、おトイレに行きたくなって、ピンチだったの。ごめんね」


「そうなんですか?じゃあ、飲んじゃいましょう!

嫌な事は、飲んだら忘れます。

すみませーん、ビール、2つ」


「えっ?私に飲めと言うの?」


「はい、あの人達が来てから、丸山さん 元気がなくなりましたよ!

もしも、酔ってしまっても私がいるから、大丈夫です。

 安心して、飲んでいいですよ」

(丸山さんは、きっと あの家族が羨ましく思えたのでしょう?

 担当ができないほど、見ていて辛くなったのでしょう?

夫が欲しいと思ったのですね?

 ほら、ここに候補がいますよ!)


 軽米は、微妙に勘違いをしていたのだった。元彼とは、夢にも思っていなかったのだ。


 私は、軽米さんの言葉に感激して、涙が溢れてきた。


「軽米さん、ありがとう。軽米さんが男だったら、良かったのに。

 そしたら、私がお嫁さんになってあげたのに……」


「はあ?それはダメ!軽米さんは、女性じゃないと!」

 和希が即座に否定した。


「軽米さんが、俺のライバルなのか?」

 智也も変な事を言った。


「もう、丸山さんったら、まだ飲んでいないのに、もう酔っているみたいですよ。

さあ、飲んで下さいね。

ぱぁっと、溜めているものをぶちまけて下さいね」


「かるまーい!ありがとー」

 柚花は、軽米に抱きついて泣いた。

 ここまでは、私は覚えているのだった。

 
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