ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

文字の大きさ
92 / 129
落ち着ける場所

その先が大切 ★

しおりを挟む
 智也がブライダルフェアーに参加して、自分が出演しているCMを見たいと言い出した。


 自分の職場が行うイベントに、客となって参加して良いものか、少し考える。


「うーん、来月にブライダルフェアーがあるけど、休みを代わってもらえるかしら?

それで休んで、職場のイベントに参加って……ちょっと勇気がいるわ……。

 明日、倉田チーフに聞いてみるから、待っていて」



 柚花が答えたら、智也から質問をされる。


「因みに、それっていつ?」


「来月の第一日曜日だから、ええと……あっ!」

 
 柚花は、思い出した。


「あ、この日って、智也さんの誕生日!

お休みが取れるといいな」


 この日は、日曜日だけど模擬披露宴のあるブライダルフェアーの予定だ。


 仏滅だからとは、言わないでおこう。


「智也さん、それでこれから 何処に行くの?」


「うん?決めてない!何処に行こうか?」


「智也さん、これから遠くに行くのは、時間的にキツイでしょ?
よかったら近くの ご飯屋さんに行かない?

 小さな お店なんだけど、定食が美味しいのよ」


「行く!柚花の行きつけの店?

絶対に行く!」


「ふふ、そんなに張り切って言われるような場所じゃないし、智也さん、面白いね。

 でもね、本当に小さなお店だから、駐車場も狭いの。

智也さんの車 大きいから、私の車と交換して行かない?

 私の駐車場に車を置いて行きましょう」

……………………

 柚花の運転する軽自動車で店にやって来た。


 駐車場は4台分しかない。


「ほら、本当に小さなお店でしょう?

でもね、とっても美味しいの!

ここのパパさん、あっ、店主と奥様のママさんが優しいし、いい人たちなんだよ。私、ここに来ると安心するの。

 軽米さんも知らない、秘密の場所なんだけど、智也さんは特別ね!」


(えっ、トクベツ?俺、トクベツ?

ズキューン!やられたー)


「智也さん、入りましょう」


 カラン カラン。


 ドアを押して入るとベルが鳴った。


 定食メインの店だが、店の造りは喫茶店の雰囲気だ。


「いらっしゃいませ!あ、柚ちゃん」

 ママさんが出迎えてくれて言った。


「こんばんは、ご無沙汰して すみません」


 柚花が言うと店主であるパパさんが返事をする。


「おっ、柚ちゃん、いらっしゃい!

おや?彼氏さんかい?いらっしゃいませ!

 来ないと思ったら、彼氏を作っていたのか」


「へへへっ、パパさんとママさんに紹介したくて、連れて来ちゃった!」


 柚花が照れながら言ったのを聞いて、智也は 飛び切り嬉しかったのだった。


「柚ちゃんが男性を連れて来るなんて、初めてだわ。しかも、すっごいイケメンじゃないのっ!

 ああ、なんだか感激よ。
母親の気分だわ。彼氏が出来て良かったね」


 2人は、案内されて奥のテーブルに行った。


「あったかい雰囲気の店だね。
俺も常連客になりたいな」


 智也も気に入ってくれたようで、柚花はホッとした。


「智也さんが結婚前提と言ってくれたから、私を知ってほしくて……」


「ありがとう。
 俺の方のことも知ってもらわないといけないな。

 俺が実家暮らしだと知っていると思うけど……。
 
 住む所が決まれば、暫くは、アパート暮らしをするつもり。

 でも、結婚したら いずれ二世帯住宅に建て替えて、親と同居をしてもらいたいと思っている。

 今、こんな事を言うのは怖いけど、黙っているのは卑怯かな?って……」


「……」


 なんて返事をしたらいいのか、言葉が見つからない。


 まだ、交際がスタートしたばかりで、私達の仲が固まってもいないのに、そんな事を言われても困るわ。


「ま、まだ、そう言われてもピンとこなくて……、ごめんね、まず私達が上手く付き合っていかれるのかが大切だと思うの。

 だから、それに対しては何とも答えられない。ごめんね」


「それもそうだな!

柚花、ごめん。そうだな、俺たちの仲が深まらないといけなかったね?」


「えっ?あはは、そうだね……」

 うん?私が言った意味は通じているのかしら?

 
 そのあと、仲良く生姜焼き定食を食べて店を出た。
 
……………………

 店の駐車場で、智也が言う。


「俺が柚花の車を運転する!」


「えっ?何で?帰るだけでしょう?」


「やっぱりな!柚花は真っ直ぐに帰るつもりだったでしょう?

 でも俺は、まだ一緒にいたい!

 だから、俺が運転する!」


「……で、どこに行くの?」

 柚花が聞いた。


「あ……その辺の……」


 そう言って、智也が黙った。


 あなたの望むことを察しているけど……。


 あなたを受け入れると決めても、踏み出す事が怖くて……。


 さっきの結婚後の事を聞いた後だから、尚更、その先が怖い。


 私は、運命の選択を間違えているのか?

 これで合っているのか?

 誰かに教えてもらいたい。


 もう、なるようにしかならないから、運を天にお任せします!


「はい、鍵……。どこでもいいよ」

 
 はいっ、言ってしまいましたっ!


 この言葉が、未来の私にとって重要になるのかも?


 やっぱり気が変わった!と言うなら、今しかない!

 どうする?


 運転をする智也さんの 緊張している横顔を見ていたら、そんな事をとても言えなかった。
 
 
 こうして、この夜 私は智也さんと結ばれたのだった。

………………………

 翌日、出勤した柚花は 倉田チーフにブライダルフェアーに参加したいことを申し出た。


「えっ、あの お花屋さんと付き合ってるの?
まあ、驚いた!へぇ。

野村さんと休みを交換ね、了解しました。
 皆んなにも前もって参加をする事を言っておきなさいね」


 倉田チーフから言われた通り、仲間のスタッフ達にも交際を伝え、私達は公認カップルとなったのだった。

…………………


 そして、ブライダルフェアー当日がやってきた。


「CMは、なかなか良かったね。

俺、結構 映りが良くて、ホッとした!
柚花は、超超綺麗で可愛かった!」

 智也が耳元で言ったから、柚花もお返しに智也の耳元で言う。


「え、嬉しいこと言ってくれてありがとう。そんなに褒めてくれるのは、智也さんくらいしかいないわ。

 智也さんは、いつも通りのイケメンに映っていたわよ」


 はたから見ていても、とても仲が良い2人。


 軽米が寄って来て言う。


「もうアツアツですね。

この後、ビンゴ大会ですよ!

ここの ペア宿泊券やお食事券、商品券、それにブーケ無料券などが当たりますから、参加して下さいね」


「えっ?ブーケ無料券?それって、うちが作るやつですよね?

結局、俺が作るかもしれないからなぁ。
ホテル宿泊券がいいな!ねっ、柚花?」


「えー、宿泊は ちょっと恥ずかしいから、食事券が欲しいな!」


 柚花が言ったら、軽米が話しを切り出してくる。


「あのぉ、ご存知のはずですけど本日の目的は、婚礼式の御予約を承る日となっておりますが、ご予定はいかがですか?」


「そうなのよね……」

 柚花は、そう言って黙ってしまった。


「軽米さん、俺たちは 付き合って日が浅いから、まだ早いかな。

 もう少し、待っていて下さい」

 智也が誠実に答えた。


「はい、だと思っていました。
一応、聞いただけです。すみません。

では、このあとも お楽しみ下さい」


 さて、ビンゴ大会が始まった。

 
「智也さん、リーチだね」


「次の番号は……5です」

 野村さんが言った。


「ビンゴ!柚花、ビンゴだよっ!
やったぁ!賞品は?」


「智也さん、やったわね!
賞品は、何だろう?商品券かな?」


「あっ、そちらのカップルがビンゴになりましたね。

おめでとうございます!

ブーケ無料券が当たりました!

良かったですねっ!」


 司会の倉田チーフが満面の笑みで喜んでくれた。


 智也は、きっと自分で作る事になるのだろうと微妙な気分だったが、柚花が笑っていたから嬉しかった。
 
………………………

 カレンダホテルのお客様駐車場に向かいながら、柚花は笑い出した。


「あはは、智也さんの誕生日にブーケ無料券が当たるなんて、出来過ぎでしょう?可笑しくて、笑っちゃう。ふふっ」


 柚花が笑いながら言った。


「いいよ、別に!俺が柚花にとびきりのブーケを愛情込めて作ってあげるから。

 この無料券の有効期限はいつまで?」


「えーと、来年の7月末って書いてあるけど?」

 柚花は、何も考えずに答えた。


「わかった。

じゃあ、柚花、有効期限までに俺と結婚して下さい。

 このブーケの無料券が当たった事に、運命を感じるんだ。

 俺だけの柚花になってもらいたい。

 お願いします。お願いします」


 えーーー!そんなぁ、突然、言われても、返事に困るわ!

 お願い二連発は凄い!

 だけど、今日は智也さんの誕生日だ!

断れるわけないじゃない……。


 既に結婚前提で、付き合っているわけだし、時期を見計らっていただけだものね……。


 私は、覚悟を決めるしかないの?


「あのね、私には まだ途中の仕事があるの。

 合同挙式を成功させないといけないし、その先に入っている予定を こなさないといけないの。

 それらの事が終わらないと、考えられない……」


 柚花は、ゆっくりと告げた。


「いい。いいよ。仕事が落ち着いたらでいい。

だから頼む、西崎 柚花になって下さい。

 あなたを愛しています」


 はあ。もう、観念するしかない……。

 こんなに私を愛してくれる人は、この先、現れたりしないのだろう……。


 愛されている方がきっと幸せなはずなんだ。


「はい、結婚し……ます」


 柚花は、振り絞るように答えた。


「本当?本当に?ありがとう!」

 智也は、とても喜んでいた。


 いや、聞き返されたら、迷うから聞かないで!


 思ってもいなかったプロポーズに、正直、戸惑いしかなかった。


 心の準備もなく、突然だったから、ロマンティックとか無縁で、ある意味、これがサプライズのプロポーズとなったけれど、即断して良かったのかが気になる。


 それでも、私は結婚すると決めた。

 前に進んで行く!

……………………
 

 この問題の答えは、月日の経過と共に出されるのだろう。


 どんな結婚であれ、育ってきた環境の違う者同士が生活を共にしていくには、互いに譲歩し合っていかなければ成り立たない。

 お互いに自分だけが、常に正しいなどと思って生活をしていたら、いずれ破局を迎えてしまう。

 いつもいつも思いを飲み込んで、我慢ばかりをしていたら、やがて心と身体を壊してしまう。

 
 時には、互いに思っている事をぶっちゃけることも必要だ。


 そうできる関係を作り上げていくことが、大切なんだ。


 結婚は、当人同士だけではなく、その家族との関わりもある。


 お互いの家族を尊重し合う度量の広さも必要なことだ。


 これから先、柚花も経験するであろう数々の問題も、夫婦間の関係が良ければ立ち向かっていけるだろう。


 結婚はゴールではなく、スタートなんだ。


 綺麗ごとでは済まされない面倒な事も多々あるだろう。


 それでも、多くの人が結婚するのは、愛情という安心感を持つことができるからなのかもしれない。

 
 その後、本当に結婚した柚花と智也だった。


 柚花にも智也との生活に安心感を持ってもらいたいが、人を疑う癖があるから、智也が少し気の毒なのだ。
 

 智也は、端正な顔立ちにもかかわらず、結婚後も ずっと柚花を愛し続けているらしい。
 

 柚花は、自分では気づいていないだろうが、多分 幸せなのだろうと思う。


 刺激がなくても平凡な日々を送れるというのは、実は幸せなことなのだ。


 ある日の柚花と智也を覗いてみよう。


 2人には、まだ子どもはいないが、夫婦仲は良好だ。


 柚花の両親を見習って、互いの呼び方を変えている。


「ただいまー!柚ちゃん」


 仕事から帰った智也が台所に行く。


「おかえりなさい!

 智くん、ねえ、ねえ、これ見て!

 凄いと思わない?これ、双子の卵ちゃんだよ!

 焼かずに取って置いたの。

 目玉焼きにしようか?」


「あ、本当だ!双子だ!

 うん、目玉焼きにして一緒に食べよう」


 2人は、こんな ささやかな事を積み重ねて、夫婦の絆を深めていっているようだ。


 そうそう、匠海の近況だが……。

 ひと言では、語り尽くせないから、いずれ機会があった時に、話すことにしよう。
 

 さて、そろそろ この辺で、


 2人の今後と周囲の人々の幸せを祈りながら、この物語を終えようとしよう。


 
                                              おわり

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

処理中です...