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届いた声

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 おかしいな……いつまでたっても痛みも衝撃も来ない。

 代わりに黄色い閃光が俺の目の前で弾けた。甲高い悲鳴を上げながら獣がよろめく。開けた視界の先に待ち望んでいた姿があった。

「……貴様の相手は俺だ」

 額から血を流し鋭い瞳で見据えながら、サルファー先輩が獣に向かって手をかざしている。

「サルファー先輩!!」

 俺に向かってニコリと微笑むと剣を槍のように構える。

「シュンから離れろ!!」

 飛ぶように地面を蹴り、真っ直ぐに駆けていく。捨て身の突進だった。怯んでいる獣の胴体に刺さった切っ先に全体重をかけ、深々と突き立てていく。

 唸り、藻掻き、暴れていた獣は凄まじい断末魔を上げ息絶えた。

 獣が完全に息絶えたのを確認してから、先輩が俺の元へ歩み寄り、跪く。

「大丈夫か!? シュン! 怪我はないか?」
 
 大きな手が俺の頬にそっと触れてくれる

 ……温かい。優しい手のひらの感触に緊張の糸がぷつりと切れた。涙腺が壊れたみたいにボロボロこぼれだして止まらない

「せんぱ、い、俺、こわかっ、た……先輩が、死んじゃったんじゃ、ないかって……」

「ははっ大丈夫、これくらいじゃ死なないさ。頑丈なのが俺の取り柄だからな」

 何でもないように笑って、逞しい腕が俺を優しく包みこんだ。嗚咽をあげながらしがみつく俺を先輩はいつまでも抱き締め続けてくれた。



「シュン君! サルファー君!」

 俺が落ち着きを取り戻した頃、グレイ先生達が息を切らせながら俺達の元に駆けつけてくれた。

 俺達の側で倒れているキメラの亡骸を見て、女性の先生が小さな悲鳴を上げた。

「二人とも無事かい!?」

 眉間に深いシワを刻んだグレイ先生の顔は真っ青だ。

「俺は大丈夫です……でもサルファー先輩が」

「問題ありません。かすり傷みたいなものですから」

「血が出てるじゃないか! 早く応急処置をしないと」

 ますます顔を青くしたグレイ先生が、鞄から応急セットを取り出して治療を始める。慣れた手つきで瞬く間に血濡れた患部が消毒され、ガーゼや包帯で処置されていく。

 他の先生達も続々と集まってくる。騒ぎを聞き付けたのか、生徒達も続々と山頂から降りてきた。その中には、ダンとソレイユ先輩の姿もあった。
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