奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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行方不明事件⑩ No side

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戦いが始まり十数分が経った。戦いはかなり均衡していた。盗賊側は確実に人数が減り、今は6人しか残っていない。ただ、ライも無事ではない。空間魔術のブラックホールを使い魔法攻撃を無効にしているものの、単純な強さでいくつもの傷を負っている。
一瞬で相手を葬るライと、少しずつ相手を追い詰めていく盗賊側。盗賊側の人数がかなり減ったとはいえライの体力が空間魔術の多用のせいもありかなり減っていることも踏まえると、ライの方が若干不利だ。
ライの息が荒くなり、鎌を握る力が弱くなる。その隙を逃さずに鎌を弾き飛ばす盗賊。距離をとりナイフを取り出すライだが、背中には冷や汗がつたっていた。

「もう降参か?」

「まさか。どちらかの身が朽ちるまで、この戦いは終わらないですよ」

「そうこなくっちゃ」

「「……!!」」

そして両者が飛び出そうとした瞬間、何者かの気配が現れた。しかも複数人。

「先輩!?」

予想外の人物の登場により、動揺するライ。その隙にライに攻撃しようとする盗賊達。だがその攻撃は横から乱入してきた人物により妨害される。

「ガリウス先輩も!?」

予想していたより速い。と、ライが呟く。

「数十分前にこの辺に雷が落ちてたからな。雷を落とせる奴なんて、俺らが知ってる限り班長とライぐらいだからな。急いだほうだが、ぎりぎり間に合ったってところか」

確かに援助が来なかったらライが負けていた可能性は70%以上はあるだろう。突然の登場により距離をとり、警戒する盗賊側。だが、その警戒も第1班には無意味。加えて数もこちらの方が多い。
たちまち殺られていく盗賊側。

「1人は残しておけよ。情報聞き出すから」

「「うっす!」」

呆然とその様子を眺めるライに対して、キーカルとガリウスが近づく。

「怪我、大丈夫?」

「はい。ありがとうございます……勝手に行動してすみません。自分の判断不足です」

「いや、ちゃんと反省してるならいいよ。ね、キーカル」

「まあな。ただ、ライに聞きたいことがある」

「なんですか?」

「こっちに来る前に開けた場所があったんだが、そこにいた盗賊達の死体は全部ライがやったのか?」

「そうですね、一応」

「ああ、別にライが悪いことやったって訳じゃないからね」

「……そうですか」

ライが答えると、2人は顔をしかめる。何かやってしまったのかと焦るライだったがそれがわかったのか、訂正するガリウス。何か言いたげなライだったが、先輩の言うことは絶対なライにとってはこれ以上踏み込むことは出来ない。

「終わったぞ!」

なんとも言い難い雰囲気が流れる中、リーダーの人が声をあげる。もう既に1人は木にくくりつけており、それ以外は全員倒されていた。

「さて…騎士団の班長に手をだしたばかりか、新人にも危害を与えたんだ……なにされてもいいという覚悟できたんだよな?」

忘れてはならない。騎士団は精鋭騎士。それ故仲間を大事にし、もし仲間に危害を与えるものがいるのなら、その相手を徹底的に探しだし、制裁を与えるということを。

「制裁の、始まりだ。俺らから逃げられると思うなよ」
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