華燭の城

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 ……ここは……。

 ガルシアに無理矢理に飲まされた大量の酒のためか、それ以上に、想像もしていなかった醜行のショックか、部屋までどうやって戻って来たのか、その記憶さえ定かではなかった。
 だが、ぼんやりと見えるゆったりと豊かなドレープの天蓋は、自分の部屋に間違いなかった。


 私はあの部屋で……。
 ガルシアに……。
 ……あれは……夢……。

 そう思いたかった。
 だが身体の奥には確かな痛みがある。

 そっと右手を天井へ伸ばしてみた。
 その手は自分の意思とは関係なく小刻みに震え続け、腕には縛られた痕がくっきりと残っている。

 ……現実……。

「……っ…………!」
 そう認識した途端、余りにもの醜穢しゅうわいさに吐き気を催し、思わず口を覆った。 

 その時だった。
 不意にその震える手を握る者がいた。

 ……!! 
 ガルシア……!

 反射的に身体が拒絶し、手を振り払おうとした。
 しかしそこにいたのは、ベッドの端に腰掛け、自分の手を両手で包み込むように握るラウだった。

「……ラ……ウ……」 
 その手がガルシアでなかった事にわずかに安堵し、詰めていた息を小さく吐く。

「気がつかれましたか? 気を失っておられました。 
 腕に痕が残ってしまいましたね。
 指先もこんなに……」

 爪が割れ血が滲む指と、腕に残る縛られた赤い痕。
 それを見ながらラウは、シュリの額にかかる髪にそっと触れた。

 ピクンと首をすくめたが、ラウの繊細な指の感覚になぜか胸に熱いものが込み上げ、無意識に腕で顔を覆い隠していた。
 そうしなければ、今にも感情が零れ落ちそうだった。

「大丈夫ですか?」
 
 ラウが右手を握ったまま視線を向ける。
 その視線が苦しかった。
 ガルシアに穢された自分を見られまいと、ただ小さく首を振り、握られた手を振り解き背を向けた。

「……っ……クッ……!」

 途端にギシッと軋むような体の奥からの痛みに襲われ、不覚にも声を漏らしてしまう。
 長時間縛られ、激しい責めを受け続けた体が悲鳴をあげていた。

「痛みますか?
 ……失礼します」

 ラウはそう言うと、掛けられていた上掛けをゆっくりと剥がし、全裸で背を向けるシュリの脚に触れると、体を丸めさせるように膝を折った。

「……ンッ!
 ……やめろ、ラウ……! 私に触るな……!」

 剥がされた上掛けを取り返そうと抵抗する。

「放っておいてはいけません」

 身体を丸め背を向けるシュリの顔を、ラウは覆い被さるようにして覗き込んだ。

「きちんと手当をしておかなければ、これからもっと痛みます。
 さぁ、膝を抱えてじっとして……。
 少しだけ我慢して下さい。今、薬を……」

 ラウの左腕が、膝を抱え小さく丸まったシュリの体を抱え込むように押さえつける。

「……っ! ……何を……」

 驚き、振り返ろうとした時、ガルシアの責めを受けた自身の後ろに何か冷たい物が触れた。
 痛む体がビクンと動く。

「……!!  
 ラウ……! やめっ……!」

 指先に薬をつけているのか、制止の声も聞かず、冷たいラウの指がヌルリとシュリの後ろに滑り込んだ。

「っんっ……!」 

 思わず強く目を閉じ、膝を抱えたままシーツを握り締める。

「シュリ様、もっと力を抜いてください。
 これでは薬が……。 
 少々痛むかもしれませんが……」
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