華燭の城

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 ガルシアに指定された部屋は文字通りサロン……“上級応接室” だった。

「どの部屋もすごいな」
 
 ヴィルが先導し、押し開いた扉から一歩入るなり、ナギは素直に驚きの声をあげた。
 ヴィルも声にこそ出さないが、一瞬目を見張り足が止まる。

 そのサロンは小ぶりだったが、家具、調度品の豪華さは、今までの広間に負けてはいない。
 いや、小さいからこそ、その輝きは凝縮され、圧倒的な存在感をもって見る者の目を奪った。

 部屋の左壁には大きな暖炉。
 低めの位置に下げられた豪奢なシャンデリア。
 中央の巨大なテーブルには、ガラス細工も見事な枝付きの六脚燭台が等間隔に五基並べられている。
 ソファーは、そのテーブルを半円に囲むように十席分。
 右壁は絵画と、眩く輝く宝飾品が飾られ、正面はそのままバルコニーに出られるようだった。
 入口横にはきらびやかなグラスの飾り棚とバーカウンターがあり、そこにはすでにオーバストが立っている。

 グルリと部屋を見渡したナギは、複雑な溜息を洩らした。

 自分の城もかなりのものだ、と正直思う。
 だがそれは多くの国を従える帝国としての城だ。
 それなりの威厳も格式もあって当然の事。
 
 だが、その帝国に属するだけの、ただの一国でしかないこの城がこれ程とは……。
 いったいこの国の財政はどうなっている……。 
 そうナギが思うのも当然だった。

 そのまま、半分呆れたように暖炉前のソファーに腰を下ろす。
 大きく腰が沈み、油断すると両足が床に着かなくなるほど、深いソファーの背にゆったりと体を預けた所で、ラウを伴ってシュリが現れた。


 入ってすぐ、扉の左手にいたヴィルに二人は軽く会釈をし、ラウはそのまま扉を挟む形で右側に立つ。
 ヴィルも軽く頭を下げながら、その唇が「どうも」と動いた。


「遅れて申し訳ありません」

「いや、俺も今、来たところだ。
 急に呼んだのはこっちだ。
 気にしないでいい、座って」

 入口で頭を下げるシュリにナギが微笑んだ。

 シュリが部屋の中へと進み、ナギとほぼ対面に当たる一番入口に近い下座に寄ると「シュリ、ここだ」ナギは、自分の隣のソファーをポンポンと叩いた。

 一瞬戸惑ったが、シュリは素直にナギの隣へ移動する。
 隣と言っても、一点ずつの大きな一人掛けソファーだ。
 座の左右には、グラスならば2、3個は楽に置けそうな木製の立派な肘置きテーブルが各々ついており、体が密着して窮屈などと言うことはない。
 しかもそのソファーに包まれるように身を置くナギを見る限り、これは相当、柔らかいらしい。

 シュリは一礼すると、ソファーに浅く腰を下ろし、腹筋に力を入れて背筋を伸ばした。
 いくらナギが気さくで友好的であったとしても、自分までもが同じように、くつろいだ姿勢で居るわけにはいかない。
 
 止血のために強く巻いた包帯が体を圧迫し悲鳴を上げたが、それでもシュリは、ナギの方へ体を向けたまま美しく微笑んで見せた。

 そこへ、すかさずオーバストが紅茶を運び、静かに一礼する。
 ナギもそれに頷き、オーバストが無言のまま、テーブルに皿を並べ、元のカウンターへ戻って直立するまで、その様子を面白そうにじっと見つめ続けていた。
 
 そしてシュリに視線を戻し、目が合うとクスリと笑った。

「本当にお前は大事にされているというか、過保護というか……。
 二人きりにしてもらえそうにないな。
 しかも給仕までいかつい側近の男って……。
 ボディーガードのつもりか?
 ガルシアは、俺がお前を取って食うとでも思っているのかな」

 屈強な体躯の側近が身を屈め、武骨な指で小さく繊細なティーカップを扱うという不似合いさに、軽く肩をすくめ冗談のように笑ったナギは、一口、紅茶を口に運ぶと、
「なぁ、学校の物理学の教授、覚えてるか?」
 楽しそうに学校の話を始めた。
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