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 気が付くとそこは、どこかの地下室のようだった。
 コンクリートに囲まれ、雑多に物が置かれているのはわかるが、広い室内は暗く、それ以上はよく見えない。

「……痛ッ……」
 頭が割れるように痛み、こめかみがガンガンと脈打っていた。


 ここはどこだ……。
 生きてるのか……。
 ……そうだ、あのビルで爆発が起こって……。
 マスクの男……! 
 浅葱さんは……!
 ……痛っ…………!
 思い出そうとすると益々頭痛は酷くなる。


「やぁ、やっとお目覚めかい?」
 意識を失う前に聞いたあの笑うような声がどこからか響いた。

「お前……。……ッ……っ……!」
 声を出すだけで頭が割れそうだった。


 ジャラリ――
 痛む頭を押さえようとして、匠は初めて自分の手足が鎖で繋がれている事に気が付いた。
 両手は頭の上で重ねられ、天井から下がった鎖で縛られている。
 足は床に膝をついた状態で、足首にも鎖が巻かれていた。

「当分は薬で動けないだろうが、念のため縛らせてもらった。
 良い恰好だ」
「お前はいったい……誰だ……。
 何が……目的だ……」
 自分の声さえ頭に響く。

「名乗る程の者じゃない。
 目的は、そうだな……浅葱……かな……」


 浅葱……さん……。
 じゃあ俺は浅葱さんをおびき出すために……。

「察しが良いようだ。そう、君は餌だよ。
 いつも私の邪魔をするあの男を殺る為の餌になってもらう」
「……馬鹿な。俺一人のために浅葱さんが来るものか……」
「それはどうかな? 浅葱の事は私の方が良く知っている」


 コツコツとコンクリートに足音を響かせて、目の前に一人の男が現れた。
 確かにあのビルで見た男だ。
 今なら顔もよく見える。
 東洋系だろうか……エキゾチックな顔立ち。
 年も浅葱と同じぐらいか……。
 女か? とも思えるほど美しい顔をしていたが、左頬の傷が目立っていた。


「配属初日だと聞いていたが……。 
 これはなかなか私好みだ。……気に入ったよ、上出来だ」
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