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今の匠に、この二人の会話は何も聞こえてはいなかった。
ただ息苦しさに喘いでいた。
頭を撫でられる、その手の感覚に匠はクッと唇を噛み、無言のまま睨み返した。
触れられる事、それだけで苦痛だった。
「……その目だ。
その反抗的な目が私を苛つかせる……」
男はじっと匠を見下ろしながら呟くと、そのまま老人に何かを囁いた。
「えっ、それは……。
だ、大丈夫かと……。承知しました。すぐに準備を……」
そう言うと老人は、パタパタと足音を立て部屋を出て行った。
「さあタクミ、これからまた新しい遊びを始めよう。
次は先生お勧めの、拷問の新薬。
それも粘膜だそうだ。
後ろに直接注れても楽しそうだが……それは次のお楽しみにしようか」
嫌がる匠の頭を撫でながら男は嬉しそうにそう言った。
しばらくすると老人は、金属のトレイを大事そうに抱えて戻って来た。
「持って参りました」
そう言って差し出すトレイの中を見て、男は満足そうな表情を浮かべる。
「ありがとう、先生。薬の効果はどれくらいだ?」
「それが、データがありませんので何とも……。
短くても一週間から……せいぜい二ヶ月ぐらいが限界かと……。
その間は頭に近い分、激しい痛みが襲い続けるでしょうが……」
「ああ、それでいい。
それだけあれば、タクミも自分の立場を思い知るだろう」
男は台に腰掛けると、助手の男に「おい……」と、掌を返す仕草をした。
その指示に頷く助手達は、乱暴に匠を仰向けにする。
「…………!! ……ンッ!!!」
うつ伏せで固まっていた体を急に返され、匠が思わず声をあげる。
動かない腕が人形のようにパタンと台に落ち、背中の傷に体重が圧し掛かった。
「……グッ……ンァッ…………!!!」
背中を離そうにも体は持ち上がらない。
膝を曲げて体を浮かそうと、動けば動くほど、傷は擦られ痛みが増した。
「……っ……ぁあ……クッ……」
呻く事しかできなかった。
自分の最高傑作に傷がつく事を危惧しているのか、それとも不出来を男に責められる事を心配しているのか、オロオロとその様子を見つめる老人を見て、
「刻印に傷が入ったところで構わない、また直せばいい。
時間はいくらでもある」
男はそう言い捨てた。
そして助手の男達が、匠の腕と頭を押さえ付けた。
……な……何だ…………。
……何をするつもりだ……。
いつもと違う男達の行動に匠は戸惑っていた。
そんな匠の顔に、強烈な手術用のライトが向けられる。
「……ンッっ……!」
薄暗い部屋に長く居たせいで、明るさに目が慣れていない。
眩しさに目を閉じ、顔を背けようとするが、強く押さえつけられていて頭は全く動かなかった。
「ほら、タクミ、私を睨むからいけないんだよ。
そんな目は要らない。……そうだろう?」
……目……。
その言葉にハッとする。
男達の行動の意味……。
これから何が行われるのか、匠は直感した。
「や……やめろっ…………!!!!」
閉じていた匠の瞳を、誰かの指が強引に開けようとしてした。
「やめろっ!!!!
……放せっ…………!!!」
叫びはやっと言葉になったが、瞳はこじ開けられていく。
どんなに強く目を閉じても指の力には敵わなかった。
再び眩しいライトが見え始めた時、その瞳には無理矢理に器具が装着されていた。
頭に刺さるような強烈な光が、一気に目に飛び込んでくる。
「ンッ……!」
思わず目を閉じようとするが、瞼はしっかり固定されたまま閉じる事はできなかった。
「さあ、タクミ、しっかり恐怖を味わうんだ。
そして、私に縋り付け……」
男は匠の手に触れると、愛しそうに指を絡ませながらそう言った。
眩しいライトの中に、何か黒い点が見え始めていた。
……何……。
それは徐々に近付き、だんだんハッキリと輪郭を成してくる。
最初はとても小さな黒い点だった。
だが近付くにつれ、見えてきた物……。
それは太く鋭く銀に輝く注射針だった。
その瞬間からは、もう恐怖しかなかった。
針が目の前に迫っていた。
反射的に動かない顔を振る。
男に絡められた指に力が入る。
「や……やめっ……!
……やめろっ……!!」
「動くなよ……? 暴れると本当に見えなくなるぞ……」
老人の声がした。
「……いや……。
……いやだ……やめろ……! 放せ!」
足で周囲の物を蹴りまくった。
最後の抵抗だった。
「……やめろッ――――!!!!」
次の瞬間、ブツリ。針が眼球に深々と突き刺さった。
「んっぁ!!!! ぁぁあああああああああああ――!!!!」
頭の中に冷たい水が入って来る感覚……。
まるで水中に落ちたように視界は揺らめき、すぐに鮮やかな赤へと変わった。
ただ息苦しさに喘いでいた。
頭を撫でられる、その手の感覚に匠はクッと唇を噛み、無言のまま睨み返した。
触れられる事、それだけで苦痛だった。
「……その目だ。
その反抗的な目が私を苛つかせる……」
男はじっと匠を見下ろしながら呟くと、そのまま老人に何かを囁いた。
「えっ、それは……。
だ、大丈夫かと……。承知しました。すぐに準備を……」
そう言うと老人は、パタパタと足音を立て部屋を出て行った。
「さあタクミ、これからまた新しい遊びを始めよう。
次は先生お勧めの、拷問の新薬。
それも粘膜だそうだ。
後ろに直接注れても楽しそうだが……それは次のお楽しみにしようか」
嫌がる匠の頭を撫でながら男は嬉しそうにそう言った。
しばらくすると老人は、金属のトレイを大事そうに抱えて戻って来た。
「持って参りました」
そう言って差し出すトレイの中を見て、男は満足そうな表情を浮かべる。
「ありがとう、先生。薬の効果はどれくらいだ?」
「それが、データがありませんので何とも……。
短くても一週間から……せいぜい二ヶ月ぐらいが限界かと……。
その間は頭に近い分、激しい痛みが襲い続けるでしょうが……」
「ああ、それでいい。
それだけあれば、タクミも自分の立場を思い知るだろう」
男は台に腰掛けると、助手の男に「おい……」と、掌を返す仕草をした。
その指示に頷く助手達は、乱暴に匠を仰向けにする。
「…………!! ……ンッ!!!」
うつ伏せで固まっていた体を急に返され、匠が思わず声をあげる。
動かない腕が人形のようにパタンと台に落ち、背中の傷に体重が圧し掛かった。
「……グッ……ンァッ…………!!!」
背中を離そうにも体は持ち上がらない。
膝を曲げて体を浮かそうと、動けば動くほど、傷は擦られ痛みが増した。
「……っ……ぁあ……クッ……」
呻く事しかできなかった。
自分の最高傑作に傷がつく事を危惧しているのか、それとも不出来を男に責められる事を心配しているのか、オロオロとその様子を見つめる老人を見て、
「刻印に傷が入ったところで構わない、また直せばいい。
時間はいくらでもある」
男はそう言い捨てた。
そして助手の男達が、匠の腕と頭を押さえ付けた。
……な……何だ…………。
……何をするつもりだ……。
いつもと違う男達の行動に匠は戸惑っていた。
そんな匠の顔に、強烈な手術用のライトが向けられる。
「……ンッっ……!」
薄暗い部屋に長く居たせいで、明るさに目が慣れていない。
眩しさに目を閉じ、顔を背けようとするが、強く押さえつけられていて頭は全く動かなかった。
「ほら、タクミ、私を睨むからいけないんだよ。
そんな目は要らない。……そうだろう?」
……目……。
その言葉にハッとする。
男達の行動の意味……。
これから何が行われるのか、匠は直感した。
「や……やめろっ…………!!!!」
閉じていた匠の瞳を、誰かの指が強引に開けようとしてした。
「やめろっ!!!!
……放せっ…………!!!」
叫びはやっと言葉になったが、瞳はこじ開けられていく。
どんなに強く目を閉じても指の力には敵わなかった。
再び眩しいライトが見え始めた時、その瞳には無理矢理に器具が装着されていた。
頭に刺さるような強烈な光が、一気に目に飛び込んでくる。
「ンッ……!」
思わず目を閉じようとするが、瞼はしっかり固定されたまま閉じる事はできなかった。
「さあ、タクミ、しっかり恐怖を味わうんだ。
そして、私に縋り付け……」
男は匠の手に触れると、愛しそうに指を絡ませながらそう言った。
眩しいライトの中に、何か黒い点が見え始めていた。
……何……。
それは徐々に近付き、だんだんハッキリと輪郭を成してくる。
最初はとても小さな黒い点だった。
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針が目の前に迫っていた。
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男に絡められた指に力が入る。
「や……やめっ……!
……やめろっ……!!」
「動くなよ……? 暴れると本当に見えなくなるぞ……」
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「……いや……。
……いやだ……やめろ……! 放せ!」
足で周囲の物を蹴りまくった。
最後の抵抗だった。
「……やめろッ――――!!!!」
次の瞬間、ブツリ。針が眼球に深々と突き刺さった。
「んっぁ!!!! ぁぁあああああああああああ――!!!!」
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まるで水中に落ちたように視界は揺らめき、すぐに鮮やかな赤へと変わった。
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