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2.男運悪すぎ問題
男運悪すぎ問題①
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彼はグラスを手にして、苦笑して周りを見るように亜由美に言った。
「大丈夫。みんな酔っぱらってて周りなんて見てないから」
「けど、気になってしまって」
「意外と真面目だね?」
そんな風に言ってくれた人はいなくて、胸がきゅんとした。
「お酒は飲まないの?」
ずっとソフトドリンクを飲んでいた亜由美だ。
「あの……あまり得意ではなくて」
お酒の場で強引に飲ませようとすることはアルコール・ハラスメントなどと言われて会社でも強く禁じている。
亜由美のいる会社はそういったことに厳しく、無理に飲ませる上司などもいない。
彼は「すごく飲みそうなのにね?」とふふっと笑ったのだ。
一見華やかな見た目の亜由美。
確かにワイン片手にバーの片隅にいても、亜由美は違和感のない存在だろう。
けれど、実際はそういうタイプではない。
「じゃあ、何が好きなの? 飲めなくて会社終わったら何してる?」
「普通に帰ります。あ、たまにデパートとか寄りますけど。あとは本屋さんとかで本を買ったりですね」
可愛いもの好きの亜由美だ。ご贔屓ブランドのデパートコスメの限定コフレは買わずにはいられない。
限定コフレの可愛さってば! 限定ミラーやファウンデーションのパッケージなど、飾っておくだけでも気持ちが上がる。
それに少女漫画だ。
好きな作家の新刊は紙本で買って浸って読むと決めている。
「あはは~、本当に真面目だ!」
初めての人と会話することがあまり得意ではない亜由美にも彼の話し方はなぜかとても自然で、すんなりと言葉を交わすことができた。
この人なら笑わないかも。そう思って亜由美は小さな声で言った。
「可愛いものが好きなんです」
「ああ、女の子はみんな好きだよね。じゃあさ、こういうの好きかな?」
そう言って見せてくれたスマートフォンの写真はふわりとしたパンケーキにフルーツが飾られていてそれにホイップが載せられたものだったのだ。
「か、可愛いっ!」
「でしょ? 甘いもの結構好きなんだけどさ、一人では行きづらいし。よかったら今度行かない?」
その場の自然な流れでメールアプリのIDを交換して、彼とのやり取りが始まった。
飲み会の自然な流れで始まった交際。
会社の帰りに何度か食事を一緒にするということを重ねて、休日に例のパンケーキの店へ行くことになった時のことだった。
列になっているその様子を見た彼がイライラし始めたのだ。
「予約ができないとかおかしいよな。並ばせて売り上げようって魂胆が丸見えなんだよ」
亜由美はその店が並ばなくては食べられないことを知っていたし、彼も写真を持っていたから行ったことがあって、当然知っているものと思っていたのだ。
「ここ、並びますよね? 行ったことがあるのかなって思ってた」
「予約できないって知ってたら行かないよ。写真は……知り合いから送ってもらったものなんだ」
(知り合い……?)
一瞬だけ感じた違和感はその後さらに大きくなる。
お店の中に入って注文をしたのだが、取り皿がなかったことに気づいた彼は舌打ちした。
(い、今、舌打ちした!?)
「大丈夫。みんな酔っぱらってて周りなんて見てないから」
「けど、気になってしまって」
「意外と真面目だね?」
そんな風に言ってくれた人はいなくて、胸がきゅんとした。
「お酒は飲まないの?」
ずっとソフトドリンクを飲んでいた亜由美だ。
「あの……あまり得意ではなくて」
お酒の場で強引に飲ませようとすることはアルコール・ハラスメントなどと言われて会社でも強く禁じている。
亜由美のいる会社はそういったことに厳しく、無理に飲ませる上司などもいない。
彼は「すごく飲みそうなのにね?」とふふっと笑ったのだ。
一見華やかな見た目の亜由美。
確かにワイン片手にバーの片隅にいても、亜由美は違和感のない存在だろう。
けれど、実際はそういうタイプではない。
「じゃあ、何が好きなの? 飲めなくて会社終わったら何してる?」
「普通に帰ります。あ、たまにデパートとか寄りますけど。あとは本屋さんとかで本を買ったりですね」
可愛いもの好きの亜由美だ。ご贔屓ブランドのデパートコスメの限定コフレは買わずにはいられない。
限定コフレの可愛さってば! 限定ミラーやファウンデーションのパッケージなど、飾っておくだけでも気持ちが上がる。
それに少女漫画だ。
好きな作家の新刊は紙本で買って浸って読むと決めている。
「あはは~、本当に真面目だ!」
初めての人と会話することがあまり得意ではない亜由美にも彼の話し方はなぜかとても自然で、すんなりと言葉を交わすことができた。
この人なら笑わないかも。そう思って亜由美は小さな声で言った。
「可愛いものが好きなんです」
「ああ、女の子はみんな好きだよね。じゃあさ、こういうの好きかな?」
そう言って見せてくれたスマートフォンの写真はふわりとしたパンケーキにフルーツが飾られていてそれにホイップが載せられたものだったのだ。
「か、可愛いっ!」
「でしょ? 甘いもの結構好きなんだけどさ、一人では行きづらいし。よかったら今度行かない?」
その場の自然な流れでメールアプリのIDを交換して、彼とのやり取りが始まった。
飲み会の自然な流れで始まった交際。
会社の帰りに何度か食事を一緒にするということを重ねて、休日に例のパンケーキの店へ行くことになった時のことだった。
列になっているその様子を見た彼がイライラし始めたのだ。
「予約ができないとかおかしいよな。並ばせて売り上げようって魂胆が丸見えなんだよ」
亜由美はその店が並ばなくては食べられないことを知っていたし、彼も写真を持っていたから行ったことがあって、当然知っているものと思っていたのだ。
「ここ、並びますよね? 行ったことがあるのかなって思ってた」
「予約できないって知ってたら行かないよ。写真は……知り合いから送ってもらったものなんだ」
(知り合い……?)
一瞬だけ感じた違和感はその後さらに大きくなる。
お店の中に入って注文をしたのだが、取り皿がなかったことに気づいた彼は舌打ちした。
(い、今、舌打ちした!?)
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