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1.これって出逢いじゃないの?
これって出逢いじゃないの?④
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「マジかよ? 何年目?」
「二年目かな?」
「二年目じゃねーだろ、あの貫禄。十年目くらいかと思ったわ」
馬鹿にしたように笑う声に少なからず亜由美は傷ついた。
社会人二年目、二十四歳の亜由美だが、見た目は非常に大人びている。
ロングの髪を緩く巻いて、すらりとした肢体と大人っぽい顔立ち。特に化粧するとさらに大人びてしまう。
亜由美自身は恋愛経験もほとんどなく……というかほぼなくて、恋愛はコミックスや想像の世界でしか知らないのに、その大人びた外見のせいで百戦錬磨みたいに思われるのは心外なのだ。
(十年目ってアラサーじゃない!)
素敵に年を重ねたいとは思う。
けれど、亜由美は年齢より上に見られることにコンプレックスを持っていた。
「でも顔は悪くないじゃん。スタイルもいいし」
「ダメだろ。融通効かなくて可愛げがない」
その言葉を聞いて(知ってたもん)と亜由美はきびすを返した。
本当は何か飲み物を買いたかったけれど、それ以上そこにいて自分がディスられているのを聞いていることはつらくて、我慢ができなかった。
──どうしてあんな風に言われてしまうんだろう?
融通が利かないことは自分でも分かっている。本当に真面目な性格なのだ。
それはずっとそうだった。
総務部のある部屋に戻りながら亜由美は先日振られてしまった、初めてできた彼氏のことを思いだす。
「終わりにしよう」
デートの終わりに彼が発したのがその言葉だった。
彼とは他の会社との異業種交流会の打ち上げの席で出会った。
亜由美が細やかに気配りをする姿を見ていて、声をかけてくれたのだ。
「そんなに気つかわなくていいよ。もっと楽にしたら?」
開けっ広げな笑顔が素敵だった。
コンサルティング会社で営業として仕事をしているという男性で、その会ではとても目立っていた。
爽やかな笑顔と整った顔立ち。コンサルティング会社勤務といかにもエリートな雰囲気に、女性から熱い視線を送られ続けていた人だ。
気をつかわなくていいと彼は言ってくれたが、亜由美は顔立ちが華やかなので、席でぼうっとしていると男性から声をかけられることも多い。
それは意図せず女性の反感を買ってしまうし、真面目で人見知りな亜由美自身は声をかけられるよりも、身体を動かしていた方が楽なのだ。
亜由美はその日、男性から『きっと声をかけても相手にはしてもらえないだろう』と遠巻きにされていたことを知らない。
そんな中せっせと飲み物の注文をしたり、飲みかけのグラスを片付けたり、お皿に料理を取り分けたり、取り皿を取り替えたりしていたのだ。
そんな中で気を使わなくていいと声をかけてきたのが彼だった。
「大丈夫です。誰かがやらないと」
そう言って声を掛けてくれた彼ににこっと笑った。
亜由美は自分の顔が必要以上に威圧感を与えるものだと思っている。
『笑顔は惜しみなく! よ。亜由美ちゃん、笑う人には福が来るのよ。本当よ!』
そういつも言っていた母はいつもにこにこしていて、勤め先であった銀行でも人気者だったと聞いている。
だから、母に言われたとおり亜由美はこういう場では意識して笑顔を作るようにしていた。
本当は人見知りだから打ち上げのような会には出たくなかったというのが本音だけれども、この日は会社のイベントで総務部の代表として来ていたため、断ることができなかったのだ。
「二年目かな?」
「二年目じゃねーだろ、あの貫禄。十年目くらいかと思ったわ」
馬鹿にしたように笑う声に少なからず亜由美は傷ついた。
社会人二年目、二十四歳の亜由美だが、見た目は非常に大人びている。
ロングの髪を緩く巻いて、すらりとした肢体と大人っぽい顔立ち。特に化粧するとさらに大人びてしまう。
亜由美自身は恋愛経験もほとんどなく……というかほぼなくて、恋愛はコミックスや想像の世界でしか知らないのに、その大人びた外見のせいで百戦錬磨みたいに思われるのは心外なのだ。
(十年目ってアラサーじゃない!)
素敵に年を重ねたいとは思う。
けれど、亜由美は年齢より上に見られることにコンプレックスを持っていた。
「でも顔は悪くないじゃん。スタイルもいいし」
「ダメだろ。融通効かなくて可愛げがない」
その言葉を聞いて(知ってたもん)と亜由美はきびすを返した。
本当は何か飲み物を買いたかったけれど、それ以上そこにいて自分がディスられているのを聞いていることはつらくて、我慢ができなかった。
──どうしてあんな風に言われてしまうんだろう?
融通が利かないことは自分でも分かっている。本当に真面目な性格なのだ。
それはずっとそうだった。
総務部のある部屋に戻りながら亜由美は先日振られてしまった、初めてできた彼氏のことを思いだす。
「終わりにしよう」
デートの終わりに彼が発したのがその言葉だった。
彼とは他の会社との異業種交流会の打ち上げの席で出会った。
亜由美が細やかに気配りをする姿を見ていて、声をかけてくれたのだ。
「そんなに気つかわなくていいよ。もっと楽にしたら?」
開けっ広げな笑顔が素敵だった。
コンサルティング会社で営業として仕事をしているという男性で、その会ではとても目立っていた。
爽やかな笑顔と整った顔立ち。コンサルティング会社勤務といかにもエリートな雰囲気に、女性から熱い視線を送られ続けていた人だ。
気をつかわなくていいと彼は言ってくれたが、亜由美は顔立ちが華やかなので、席でぼうっとしていると男性から声をかけられることも多い。
それは意図せず女性の反感を買ってしまうし、真面目で人見知りな亜由美自身は声をかけられるよりも、身体を動かしていた方が楽なのだ。
亜由美はその日、男性から『きっと声をかけても相手にはしてもらえないだろう』と遠巻きにされていたことを知らない。
そんな中せっせと飲み物の注文をしたり、飲みかけのグラスを片付けたり、お皿に料理を取り分けたり、取り皿を取り替えたりしていたのだ。
そんな中で気を使わなくていいと声をかけてきたのが彼だった。
「大丈夫です。誰かがやらないと」
そう言って声を掛けてくれた彼ににこっと笑った。
亜由美は自分の顔が必要以上に威圧感を与えるものだと思っている。
『笑顔は惜しみなく! よ。亜由美ちゃん、笑う人には福が来るのよ。本当よ!』
そういつも言っていた母はいつもにこにこしていて、勤め先であった銀行でも人気者だったと聞いている。
だから、母に言われたとおり亜由美はこういう場では意識して笑顔を作るようにしていた。
本当は人見知りだから打ち上げのような会には出たくなかったというのが本音だけれども、この日は会社のイベントで総務部の代表として来ていたため、断ることができなかったのだ。
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