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黒王子の溺愛
黒王子の溺愛①
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「大丈夫か? 疲れていないか? 美桜?」
「はい。大丈夫です。柾樹さんは?」
「俺は慣れているから。まあ、疲れていても、たいしたことはない」
2人の婚約の発表はお互いの立場上、大々的に行われた。
日中に対外向けの会見を行い、夕刻からは身内や取引先を招いての婚約パーティーだ。
パーティとは言っても、実際のところは美桜のお披露目であり、ご挨拶が中心のものになる。
お人形のような美桜と顔立ちの整っている柾樹。
お似合いの二人だと、会場からはため息がこぼれていた。
またその日の美桜は、綺麗な着物と柾樹に愛されているという幸せで、殊更に綺麗なのだった。
「いやぁ……経済界の華と称される美桜さんと黒王子と呼ばれている黒澤くんと、本当にお似合いだし、経済界にも明るい話題で嬉しいよ。藤堂グループも黒澤くんが引き継ぐのであれば安心だな」
「華?」
美桜は横に立っている柾樹に尋ねた。
このパーティーの間、柾樹が美桜の側を離れることは片時もない。
「美桜はそう呼ばれているんだよ。しかし美桜の華はわかるけど僕の黒王子? 初めて聞いたな、そんな呼び名」
そんな風に呼ばれていることなど知らない柾樹は、その整った顔でひっそりと眉を寄せる。
「最近はそんな風に何でも、ナントカ王子とかつけるから……」
舌打ちしかねない勢いで、柾樹は不機嫌になる。
実力があるから認められることは好きだが、容姿のみを褒められることはあまり好きではないのだ。
男なのだから実力あってのものだろう。黒王子、なんて。
そもそも王子なんて王の息子なわけだから、親の七光り感が半端ない。
若造扱いされているようで気にいらない。
「あら、でも王子なんて……」
「ん? 美桜? 何?」
「素敵です。柾樹さんにとてもお似合い。それに……」
「それに?」
「10年以上も前から私にとっての王子様ですもの」
美桜はこっそりと柾樹に耳打ちする。
「美桜がそう言うなら悪くない」
美桜にそう言われて、ふっと笑顔になった柾樹がさらりと指で美桜の頬を撫でる。
実のところは、その苗字といつも冷徹な表情を崩さないところも含めて、黒王子と呼ばれているのだが。
だからこそ、その甘い顔を見て会場が一瞬ザワつく。
そもそも仕事の時の柾樹は冷静さを決して崩さず、冷徹なその判断には同じ経営者としてぞっとするくらいなのだ。
「いや……さすがに美桜さんというべきか、あの黒澤くんもメロメロなんだね」
「美桜さんも相当に惚れ込んでいるようだしな」
仲睦まじくて甘い雰囲気を醸し出している二人に、会場からはため息が出るばかりだ。
黒澤家にとっても藤堂家にとってもメリットであることは間違いはないが、これは一概に政略結婚でもないらしい……という空気になった。
良かったですね、と言われ続け美桜の父も頬が緩んだ。
美桜が幸せそうで愛されていることはなにより嬉しいことだから。
黒澤くんでよかった……心からそう思ったのだ。
自宅に帰るのも面倒だから、とその日は婚約発表パーティをしたホテルの部屋を抑えてあった。
「ありがとうございました」
最後のお客様をお見送りして、柾樹は美桜の頭をそっと撫でた。
「お疲れ様」
「柾樹さん……」
美桜は柾樹に頭を撫でられるのが大好きなのだ。
つい、うっとりと見てしまう。
「美桜」
優しく名前を呼んで、柾樹は美桜の指に自分の指を絡めた。
「早く部屋に行こう」
抑えておいた部屋はこのホテルでも豪華なスイートルームだった。けれど今の二人にはそんなことはどうでもいい。
部屋に入ると、すぐに柔らかく唇が重なった。
愛おしげに、唇に首筋に耳元にと、ちゅ……と音を立てながら美桜は柾樹にキスをされる。
「はい。大丈夫です。柾樹さんは?」
「俺は慣れているから。まあ、疲れていても、たいしたことはない」
2人の婚約の発表はお互いの立場上、大々的に行われた。
日中に対外向けの会見を行い、夕刻からは身内や取引先を招いての婚約パーティーだ。
パーティとは言っても、実際のところは美桜のお披露目であり、ご挨拶が中心のものになる。
お人形のような美桜と顔立ちの整っている柾樹。
お似合いの二人だと、会場からはため息がこぼれていた。
またその日の美桜は、綺麗な着物と柾樹に愛されているという幸せで、殊更に綺麗なのだった。
「いやぁ……経済界の華と称される美桜さんと黒王子と呼ばれている黒澤くんと、本当にお似合いだし、経済界にも明るい話題で嬉しいよ。藤堂グループも黒澤くんが引き継ぐのであれば安心だな」
「華?」
美桜は横に立っている柾樹に尋ねた。
このパーティーの間、柾樹が美桜の側を離れることは片時もない。
「美桜はそう呼ばれているんだよ。しかし美桜の華はわかるけど僕の黒王子? 初めて聞いたな、そんな呼び名」
そんな風に呼ばれていることなど知らない柾樹は、その整った顔でひっそりと眉を寄せる。
「最近はそんな風に何でも、ナントカ王子とかつけるから……」
舌打ちしかねない勢いで、柾樹は不機嫌になる。
実力があるから認められることは好きだが、容姿のみを褒められることはあまり好きではないのだ。
男なのだから実力あってのものだろう。黒王子、なんて。
そもそも王子なんて王の息子なわけだから、親の七光り感が半端ない。
若造扱いされているようで気にいらない。
「あら、でも王子なんて……」
「ん? 美桜? 何?」
「素敵です。柾樹さんにとてもお似合い。それに……」
「それに?」
「10年以上も前から私にとっての王子様ですもの」
美桜はこっそりと柾樹に耳打ちする。
「美桜がそう言うなら悪くない」
美桜にそう言われて、ふっと笑顔になった柾樹がさらりと指で美桜の頬を撫でる。
実のところは、その苗字といつも冷徹な表情を崩さないところも含めて、黒王子と呼ばれているのだが。
だからこそ、その甘い顔を見て会場が一瞬ザワつく。
そもそも仕事の時の柾樹は冷静さを決して崩さず、冷徹なその判断には同じ経営者としてぞっとするくらいなのだ。
「いや……さすがに美桜さんというべきか、あの黒澤くんもメロメロなんだね」
「美桜さんも相当に惚れ込んでいるようだしな」
仲睦まじくて甘い雰囲気を醸し出している二人に、会場からはため息が出るばかりだ。
黒澤家にとっても藤堂家にとってもメリットであることは間違いはないが、これは一概に政略結婚でもないらしい……という空気になった。
良かったですね、と言われ続け美桜の父も頬が緩んだ。
美桜が幸せそうで愛されていることはなにより嬉しいことだから。
黒澤くんでよかった……心からそう思ったのだ。
自宅に帰るのも面倒だから、とその日は婚約発表パーティをしたホテルの部屋を抑えてあった。
「ありがとうございました」
最後のお客様をお見送りして、柾樹は美桜の頭をそっと撫でた。
「お疲れ様」
「柾樹さん……」
美桜は柾樹に頭を撫でられるのが大好きなのだ。
つい、うっとりと見てしまう。
「美桜」
優しく名前を呼んで、柾樹は美桜の指に自分の指を絡めた。
「早く部屋に行こう」
抑えておいた部屋はこのホテルでも豪華なスイートルームだった。けれど今の二人にはそんなことはどうでもいい。
部屋に入ると、すぐに柔らかく唇が重なった。
愛おしげに、唇に首筋に耳元にと、ちゅ……と音を立てながら美桜は柾樹にキスをされる。
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