十歳で運命の相手を見つけた少年は小さな幸せを夢見る
正義のない街で生まれ育ったディルは母親と双子の妹との四人暮らし。
気付いたら帰ってこなくなっていた父親のことを恋しがることはなく、その日食べる物を心配して生きていた。
仕事に出かけた母親が何日間か帰ってこないことは日常茶飯事となった中、まだ幼い妹たちを飢えさせないために食糧調達にある場所へと向かった。
金はない。小銭一枚だって持ってはいない。ボロ布を纏い、足を守る靴もなく、地面を裸足で歩きながらそーっと踏み込んだのは広大な畑。
国が唯一所有する森のすぐ傍に作られた畑にはたくさんの野菜が育っており、生でも食べられる野菜を持って帰ろうとキャベツを選んでコッソリ持って帰ろうとしたとき、畑を所有する店の店主と目が合った。
逃げることは許されず掴まり店内へと連れて行かれたディルの前に出てきたのは拳ではなく湯気立つ暖かな食事。
涙が出るほど美味しかった。
単純だが、ディルはその日、恋をした。美味しいと食事をする靴も履いていない汚い子供に見せるその笑顔に、その優しさに。
一生この人と一緒にいたい。そう思える初恋をした。
でも貧乏人に優しい未来はない。当たり前にあるようで存在しない幸せを願うことさえ許されない環境の中、少年は真っ黒な渦に飲み込まれながら必死に足掻き、暗闇の中で光る小さな幸せを掴もうとしていた。
※重暗い話となっていますので苦手な方はご注意ください。
気付いたら帰ってこなくなっていた父親のことを恋しがることはなく、その日食べる物を心配して生きていた。
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