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本編・第二部
112
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いつもの夕方がきた。なんてことない、日常生活。
いつもより混んでいる電車に乗り込んで。最寄り駅で降りる。
階段をのぼると、私と智さんが住んでいる、自宅が見えてきた。
なんてことない、月曜日。なんてことない、日常生活。
違うのは。
「ただいま」
ただいま、と声を上げても、シン、と静まり返ったリビングがそこに広がる、ただ……それだけ。
「疲れた……」
ブラックフォーマルのハンドバッグを硝子天板のテーブルにそっと置いて、ソファに沈み込んだ。腰を曲げて黒のハイソックスのストッキングを脱ぎながら、つぅ、と。カウンターキッチンの笠木に置かれた、色鮮やかなラナンキュラスの花束に視線を向ける。
ラナンキュラスを見たら、3日前に日本を発った智さんの顔が浮かぶはずなのに。今は……真っ白な大輪のユリの花を胸に抱え、哀しみを湛えたヘーゼル色の瞳が思い浮かぶ。
……人の死に触れると、自分の心も、冥い場所に持っていかれそうになる。
ふるり、と、軽く頭を振って、背中に手を回してファスナーを下ろしながら、ぼんやりと今朝からの出来事を反芻した。
聞き慣れた目覚ましの音がして、ゆっくりと目を開く。……智さんがいない、初めての平日の朝を迎えた。ベッドの空白に慣れなくて、昨晩もなかなか寝付けなかった。おかげで瞼がとても重たい。
「……はぁ」
私の重いため息だけが、コチコチと軽快に時を刻む、壁掛け時計の秒針の音に溶け込んでいった。
ベッドから抜け出して、リビングに向かう。キッチンに立って、昨晩仕込んでいた炊飯器のスイッチを押してから、朝食とお弁当を作り出す。
硝子天板のローテーブルに、ひとりだけの食事。朝の天気予報を見ながら、ゆっくりと食べていく。今日は晴れ。洗濯物は外干しして行って良さそうだろう。
朝食を食べ終えて、ごちそうさまと呟きお箸をテーブルに置く。
「……寂しいなぁ…」
ソファの上で膝を抱え込む。行儀が悪いとわかっていても、いつも智さんに触れて、触れられている、手持ち無沙汰のこの両手をなんとかするには……こうするしか無かった。
つい、と、カウンターキッチンに置かれた鮮やかなラナンキュラスの花束に目を向ける。それでも、なんだか無性に寂しさが拭えない。
「……あ、お水替えてない」
食べ終えた食器を片付けるついでに、ラナンキュラスのお水を替えていく。ホワイトデーに貰ったこの花束。1番目を引いた、鮮やかなピンクのシャルロット咲のラナンキュラスは、もう外側の花びらが開ききってくるりとカールしている。あと数日で、その生命を終えてしまうだろうか。
お水を替えて、花瓶を元の場所に戻す。
生あるものは、いつか必ず滅ぶ。
花の美しさはずっとは続かない。いつか、枯れる。
だからこそ、花は美しいと感じるのだろう。
「……綺麗」
いつか滅ぶからこそ、綺麗なのだ。だから……寂しくなんか、ない。そう自分に言い聞かせて、寂しさに押し潰されそうな自分を奮い立たせた。
お弁当のおかずを詰めて、夕食の食材を確認するために冷蔵庫の中を確認していく。冷凍庫を開けると、コーヒー豆が綺麗に揃えて入れてあった。
「……コーヒー…淹れてみようかな?」
智さんは基本的にコーヒーはペーパードリップでの手淹れだ。ここには自動で淹れてくれるようなコーヒーメーカーがないから、智さんが出張に出た3日前からコーヒーを飲んでいない。
そう言えば、智さんの本棚にコーヒーの本も置いてあった。少し逡巡して、本棚に向かう。
「……これだ!」
手淹れをするための手順が書いてある本を手に取った。パラパラと捲って、目的のページを開く。
「へぇ、ペーパードリップ自体の保存も密閉容器がいいんだ……」
智さんがいつも使っている道具を取り出す。ケトルにお湯を入れて、お湯が沸くまでにコーヒー豆を冷凍庫から取り出し、ミルミキサーで豆を挽いて、本を片手に悪戦苦闘しながらドリッパーでコーヒーを手淹れした。
智さんが手淹れしている姿を思い出す。一見とても簡単そうにコーヒーを淹れているから、こんなに大変だとは思わなかった。
「……あんなに簡単そうに淹れられるようになるまでかなり練習したんだろうな」
マグカップに入れ替えたコーヒーを口に含みながら、ふと思い立ち、スマホを取り出してコーヒーサーバーを写真に収めた。日記アプリを立ち上げて、少しだけ書き込む。
『日本は月曜日の朝を迎えました。智さんはもう夢の中かな? 今朝はコーヒーの本を読みながら、初めてペーパードリップで淹れてみたよ。手淹れって難しい……!』
文章の最後に泣き笑いのような顔文字を付けて、撮ったばかりの写真をアップロードする。智さんが起きたら、少しだけ笑ってくれるといいな。ふふ、と自然と頬がにやける。
「さて、行きますか~」
今日はさらりとしたミントグリーンのワンピースにデニムジャケットを合わせた。智さんからもらったダイヤモンドのイヤリングをつけて。GPSのアプリの起動を確認し、カチャリと玄関の鍵を締めた。
いつもの電車に乗って、オフィスビルに向かう。いつものようにタイムカードを押して、制服に着替えて。通関部のフロアに足を向けた。
「おはようございます」
大きな声で挨拶と一礼をし、フロアに入った。行動予定表の自分のマグネットを『在席』に動かす。パタパタとフロアに向かい、今朝の早出担当の小林くんに声をかけた。
「おはよう、小林くん」
小林くんがびくりと大きく身体を震わせて、私の方を向いた。
「………お、はようござい、ます」
そう言葉を紡いだ綺麗な顔の一重の瞳を見つめた。その黒い瞳が、僅かに揺れている。
「……?」
なんだか、小林くんの様子がおかしい。体調が悪いのかしら。
「小林くん、なんか顔青いよ? 大丈夫? 風邪?」
そう声を上げながら、自分のデスクに座って、真横の小林くんに椅子ごと身体を向ける。すると、ふい、と、小林くんが私から顔を逸らした。
「……いえ、大丈夫です…すみません」
小林くんは私に顔を合わせないまま、言葉を発した。短く揃えられた髪が揺れて、頭を下げられたことを認識する。
「……そう? 今日は無理しないでね?」
その仕草に違和感を感じたけれど。ひとまず目の前に積み上げられた書類を片付けなければならないから、強引に意識を小林くんから目の前の書類に移した。
三木ちゃんや水野課長代理が出社して、通関部全体の朝礼が始まる。それでも、片桐さんが姿を見せなかった。
(珍しく……遅刻?)
首を捻りながら、朝礼担当の大迫係長の声が響く朝礼に耳を傾けた。全体の朝礼を終えたあと、2課のメンバーだけが集められた。
「片桐のお母様が土曜日に亡くなられた」
田邉部長が口にした言葉に思わず身体が硬直する。
「葬儀は今日の午後2時から聖愛光教会で営まれるそうだ。急で申し訳ないが、2課は可能な限り全員で参列。水野と小林はネクタイを替えるだけでいいだろうが、一瀬と三木はフォーマルを取りに行かねばならんだろう。今日は昼休み前に一旦帰宅しなさい。小林、そのつもりで、今日は一瀬と三木のサポートをするように。水野も手伝ってやってくれ」
今月初旬から、お母様の容態が良くないそうで、早退する日が増えているな、とは思っていた。片桐さん本人はいつも飄々として、全くそういうことを話さないから。そんなに深刻な状態なのだとは思っていなかった。
「……わかりました」
小林くんの硬い声とともに、私たちは各々仕事の采配を考えながら自分の席に戻った。
月曜日恒例の、土日明けの大量の書類と格闘していると、あっという間に12時。田邉部長に促され、一旦自宅に戻る。ダイヤモンドのイヤリングを外し、喪服に着替えた。
「……キリスト教式の場合の香典って、確か御花料って書くのよね?」
仏式のお葬式は何度も参列した経験があるけれど、キリスト教式のお葬式は初めてだ。粗相がないように、スマホで軽く調べてから会場となった聖愛光教会に向かう。
教会の入り口の受付で記帳を終えると、3ヶ月ぶりに見た琥珀色の瞳と視線が交差した。
「……知香ちゃん?」
その琥珀色の瞳が驚きで見開かれた。私も驚きのあまりあんぐりと口を開き、はっと我に帰る。
「マスター!」
初対面の時は50代くらいの見た目だったけれど、今は40代前半くらいに見える。ベレー帽が無いだけでこんなに雰囲気が変わるのか。白髪混じりの髪が、ふわりと吹いた風で揺れた。
マスターが几帳面そうな字で『池野和宏』と書き込んだのを横目に、お名前はかずひろ、と読むのかしら、とぼんやり考えた。
「知香ちゃんがどうしてここに?」
琥珀色の瞳がじっと私を見つめて、行こうか、と、教会の中に促された。赤い絨毯が敷かれた身廊をふたりでゆっくり歩いて、左側の椅子に座った。
「えっと……片桐さん、私の同僚さん、なんです」
苦笑しながら紡いだ私の言葉に、マスターが驚いたように笑った。
「は、嘘だろ。まじか。……さとっちゃん、大激怒だったろ」
マスターのその言葉に。カレーを食べながら、激しい感情の渦を隠すこともせずに苛立ちを宿していたダークブラウンの瞳を思い出す。
「あはは…デスネ……」
乾いた笑いをマスターに向けながら、「マスターの方こそどうして?」と訊ねた。
「マサのお母さんも、体調が良い時はうちの店に来てくれていたんだ。だから俺も最期の挨拶に、な」
そう口にして、マスターが主祭壇に目を向けた。
「……マサも悪い奴じゃぁないんだ。苦労人ではあるんだよ」
ふぅ、と、マスターが大きくため息をついて言葉を続けた。
「親御さんは駆け落ちで結ばれたんだそうだ。それ故に、親戚筋とはほとんど絶縁している。兄弟もいない。唯一繋がりがある親戚が、母親の従兄弟の……知香ちゃんの会社の役員の人。マサの父親も既に天に召されている」
「え、じゃぁ……片桐さんのお身内って、もう、槻山取締役だけ…?」
「そういうことになるだろう」
驚きで息を飲んだ。親戚とも交流が無く、お父様も亡くなっていた、だなんて。ぐっと手に持ったハンカチを握りしめた。飄々と、私の名前を呼ぶ片桐さんの顔が思い浮かぶ。
(……嫌いな人だけど…生い立ちを聞くと…少しだけ同情する、な…)
ぼんやりと考えていたら、荘厳なオルガンの音が響いて、後方の扉が開いた。すっと背筋を伸ばして、視線をマスターから主祭壇に向ける。
牧師さんを先頭に、棺が運び込まれ、片桐さんがその後ろを歩いていた。その後ろを槻山取締役が歩いている。
片桐さんの俯いた横顔が明るい髪色で隠されている。その物哀しそうな横顔を、視界の端で捉えた。
(……いつも飄々とした片桐さんでも、流石にこんな場所では、哀しみを隠せるわけないよね…)
牧師さんによる聖書の朗読が始まり、粛々と葬儀が進む。献花の時間になり、マスターとともにゆっくりと身廊を歩いた。遺族席に向かって一礼し、ユリの花を献花台に捧げる。
遺族席には……片桐さんと、槻山取締役のふたりだけ。献花に並んだ面々は、ほとんどが極東商社の社員だった。
(……本当に、お身内がいらっしゃらないのだわ)
献花が終わると、喪主である片桐さんの挨拶が始まった。
「皆様、本日はお忙しい中を母、梢枝の告別式にご参列くださいまして、ありがとうございました。母は、3年半前に発病し、最先端の治療を受けるために1年前に日本に帰国しました。国立病院に入院し、毎日のようにイギリスの我が家に帰りたいと言っておりましたが、ついに主のみもとへと旅立ちました。思えば長い療養生活でございました。その間皆様からいただきましたお見舞いや励ましの言葉は故人にとりまして、どんなにかうれしかったことでございましょう。ここにあらためて、皆様から生前いただきましたご厚誼に対しまして、厚く御礼申しあげます」
淡々とした声で、ゆっくりと言葉を紡ぐ片桐さん。そのヘーゼル色の瞳が、深い哀しみで揺れていた。
(……智さんも、お母様を病で亡くされているのよね。どんなに辛かっただろう…)
私はこれまで幸いなことに近しい親族を亡くしたことがない。曾祖父母は私が小学生の頃に亡くなったが、祖父母は父方も母方も健在だし、まして両親も、今は元気だ。
(………智さんにも…片桐さんにも。何と声をかけていいのか、わからないや…)
自分の無力さを噛み締めながら、ぼんやりと席を立った。
2時間の葬儀が終わり、田邉部長から、今日はみなそのまま帰宅するようにと告げられて、私はいつものルートで自宅に向かった。
帰宅してソファに沈みこんで、ゆっくりと喪服を脱いだ。脱いだ喪服をハンガーにかけ、真珠のネックレスを外してケースに仕舞う。スマホを取り出すと、電池の残量がかなり減っていた。
「GPSアプリ、こんなに電池減っちゃうのね。モバイルバッテリーを買った方がいいかも」
誰に伝えるでもない言葉が、ひとりだけのリビングに消えていく。今は心の中が、言葉にできない感情でいっぱいだ。
全く自分には関係なかった人の死。それが悲しくなることがない、というのは、自分の心が空っぽのような気がして悲しくなる。
それが例え―――私が嫌いな人に関わる人であったとしても。
「……」
スマホを充電しながら、日記アプリを立ち上げた。朝書き込んだ日記に返信の書き込みがあった。時刻を確認すると、今より1時間くらい前の書き込み。
『今起きた。コーヒー淹れたのか。ドリップ、案外難しいだろ? 帰ったらコツ教えてやるから。今日も取引先と交渉だ。通訳は付けてるけど、俺自身が営業だから通訳通してじゃない会話したいって思った。帰ったらちょっと勉強するわ』
その書き込みに、ふっと笑みが漏れた。本当に、この人は貪欲なほど知識を欲しがる人だ。こういう時に、身体の芯まで営業の人なんだなぁ、と実感する。今の時間はきっと、取引先と交渉中なんだろう。交渉が上手くいくといいね、という書き出しで返信を打ち込んだ。
『あのね。片桐さんの、お母さんが亡くなって。今日はお葬式に参列してきたよ』
帰り際にマスターから「さとっちゃんは元気か?」と声をかけられたことを思い出して、その旨を付け加える。
『マスターも参列なさっていて、智さんのこと心配されていたよ』
そこまで書いて、少し逡巡した。
『今……自分の気持ちが上手く表現出来ない。自分の感情がどこにあるのか、どうしたいのか、何が悲しいのか、悲しくないのか、それすら自分でもわからない状態なの。こうして言葉にするのが合ってるのかもわからないけど、少し聞いてほしいから。お仕事で忙しいのに、ごめんね。参列して、智さんも、お母様を亡くされていたなって思い出したの。智さんは普段お母様の話をしないでしょ?だから、私が無意識に智さんの傷に触れていたら、申し訳ないなって思った。思うことがあったら直ぐに言ってくれていいからね』
そう書いて、こう締めくくった。
『関係ない人の死に引きずられすぎだね。ごめん。でも、なんか、モヤモヤするの』
そう書き込んで、3ヶ月前に、三木ちゃんのお祖母様のお通夜に参列したことを思い出した。
(……あの時は、こんな暗い気持ちにならなかったのに。どうしてだろう)
そうして。ふと、思い出した。あの時は……智さんがそばにいてくれたから。
だから……こんなに、哀しくならなかったんだ。
智さんの存在が、どれだけ私を救ってくれているのかを実感して。
「……会いたい」
素直に、そう思った。
いつもより混んでいる電車に乗り込んで。最寄り駅で降りる。
階段をのぼると、私と智さんが住んでいる、自宅が見えてきた。
なんてことない、月曜日。なんてことない、日常生活。
違うのは。
「ただいま」
ただいま、と声を上げても、シン、と静まり返ったリビングがそこに広がる、ただ……それだけ。
「疲れた……」
ブラックフォーマルのハンドバッグを硝子天板のテーブルにそっと置いて、ソファに沈み込んだ。腰を曲げて黒のハイソックスのストッキングを脱ぎながら、つぅ、と。カウンターキッチンの笠木に置かれた、色鮮やかなラナンキュラスの花束に視線を向ける。
ラナンキュラスを見たら、3日前に日本を発った智さんの顔が浮かぶはずなのに。今は……真っ白な大輪のユリの花を胸に抱え、哀しみを湛えたヘーゼル色の瞳が思い浮かぶ。
……人の死に触れると、自分の心も、冥い場所に持っていかれそうになる。
ふるり、と、軽く頭を振って、背中に手を回してファスナーを下ろしながら、ぼんやりと今朝からの出来事を反芻した。
聞き慣れた目覚ましの音がして、ゆっくりと目を開く。……智さんがいない、初めての平日の朝を迎えた。ベッドの空白に慣れなくて、昨晩もなかなか寝付けなかった。おかげで瞼がとても重たい。
「……はぁ」
私の重いため息だけが、コチコチと軽快に時を刻む、壁掛け時計の秒針の音に溶け込んでいった。
ベッドから抜け出して、リビングに向かう。キッチンに立って、昨晩仕込んでいた炊飯器のスイッチを押してから、朝食とお弁当を作り出す。
硝子天板のローテーブルに、ひとりだけの食事。朝の天気予報を見ながら、ゆっくりと食べていく。今日は晴れ。洗濯物は外干しして行って良さそうだろう。
朝食を食べ終えて、ごちそうさまと呟きお箸をテーブルに置く。
「……寂しいなぁ…」
ソファの上で膝を抱え込む。行儀が悪いとわかっていても、いつも智さんに触れて、触れられている、手持ち無沙汰のこの両手をなんとかするには……こうするしか無かった。
つい、と、カウンターキッチンに置かれた鮮やかなラナンキュラスの花束に目を向ける。それでも、なんだか無性に寂しさが拭えない。
「……あ、お水替えてない」
食べ終えた食器を片付けるついでに、ラナンキュラスのお水を替えていく。ホワイトデーに貰ったこの花束。1番目を引いた、鮮やかなピンクのシャルロット咲のラナンキュラスは、もう外側の花びらが開ききってくるりとカールしている。あと数日で、その生命を終えてしまうだろうか。
お水を替えて、花瓶を元の場所に戻す。
生あるものは、いつか必ず滅ぶ。
花の美しさはずっとは続かない。いつか、枯れる。
だからこそ、花は美しいと感じるのだろう。
「……綺麗」
いつか滅ぶからこそ、綺麗なのだ。だから……寂しくなんか、ない。そう自分に言い聞かせて、寂しさに押し潰されそうな自分を奮い立たせた。
お弁当のおかずを詰めて、夕食の食材を確認するために冷蔵庫の中を確認していく。冷凍庫を開けると、コーヒー豆が綺麗に揃えて入れてあった。
「……コーヒー…淹れてみようかな?」
智さんは基本的にコーヒーはペーパードリップでの手淹れだ。ここには自動で淹れてくれるようなコーヒーメーカーがないから、智さんが出張に出た3日前からコーヒーを飲んでいない。
そう言えば、智さんの本棚にコーヒーの本も置いてあった。少し逡巡して、本棚に向かう。
「……これだ!」
手淹れをするための手順が書いてある本を手に取った。パラパラと捲って、目的のページを開く。
「へぇ、ペーパードリップ自体の保存も密閉容器がいいんだ……」
智さんがいつも使っている道具を取り出す。ケトルにお湯を入れて、お湯が沸くまでにコーヒー豆を冷凍庫から取り出し、ミルミキサーで豆を挽いて、本を片手に悪戦苦闘しながらドリッパーでコーヒーを手淹れした。
智さんが手淹れしている姿を思い出す。一見とても簡単そうにコーヒーを淹れているから、こんなに大変だとは思わなかった。
「……あんなに簡単そうに淹れられるようになるまでかなり練習したんだろうな」
マグカップに入れ替えたコーヒーを口に含みながら、ふと思い立ち、スマホを取り出してコーヒーサーバーを写真に収めた。日記アプリを立ち上げて、少しだけ書き込む。
『日本は月曜日の朝を迎えました。智さんはもう夢の中かな? 今朝はコーヒーの本を読みながら、初めてペーパードリップで淹れてみたよ。手淹れって難しい……!』
文章の最後に泣き笑いのような顔文字を付けて、撮ったばかりの写真をアップロードする。智さんが起きたら、少しだけ笑ってくれるといいな。ふふ、と自然と頬がにやける。
「さて、行きますか~」
今日はさらりとしたミントグリーンのワンピースにデニムジャケットを合わせた。智さんからもらったダイヤモンドのイヤリングをつけて。GPSのアプリの起動を確認し、カチャリと玄関の鍵を締めた。
いつもの電車に乗って、オフィスビルに向かう。いつものようにタイムカードを押して、制服に着替えて。通関部のフロアに足を向けた。
「おはようございます」
大きな声で挨拶と一礼をし、フロアに入った。行動予定表の自分のマグネットを『在席』に動かす。パタパタとフロアに向かい、今朝の早出担当の小林くんに声をかけた。
「おはよう、小林くん」
小林くんがびくりと大きく身体を震わせて、私の方を向いた。
「………お、はようござい、ます」
そう言葉を紡いだ綺麗な顔の一重の瞳を見つめた。その黒い瞳が、僅かに揺れている。
「……?」
なんだか、小林くんの様子がおかしい。体調が悪いのかしら。
「小林くん、なんか顔青いよ? 大丈夫? 風邪?」
そう声を上げながら、自分のデスクに座って、真横の小林くんに椅子ごと身体を向ける。すると、ふい、と、小林くんが私から顔を逸らした。
「……いえ、大丈夫です…すみません」
小林くんは私に顔を合わせないまま、言葉を発した。短く揃えられた髪が揺れて、頭を下げられたことを認識する。
「……そう? 今日は無理しないでね?」
その仕草に違和感を感じたけれど。ひとまず目の前に積み上げられた書類を片付けなければならないから、強引に意識を小林くんから目の前の書類に移した。
三木ちゃんや水野課長代理が出社して、通関部全体の朝礼が始まる。それでも、片桐さんが姿を見せなかった。
(珍しく……遅刻?)
首を捻りながら、朝礼担当の大迫係長の声が響く朝礼に耳を傾けた。全体の朝礼を終えたあと、2課のメンバーだけが集められた。
「片桐のお母様が土曜日に亡くなられた」
田邉部長が口にした言葉に思わず身体が硬直する。
「葬儀は今日の午後2時から聖愛光教会で営まれるそうだ。急で申し訳ないが、2課は可能な限り全員で参列。水野と小林はネクタイを替えるだけでいいだろうが、一瀬と三木はフォーマルを取りに行かねばならんだろう。今日は昼休み前に一旦帰宅しなさい。小林、そのつもりで、今日は一瀬と三木のサポートをするように。水野も手伝ってやってくれ」
今月初旬から、お母様の容態が良くないそうで、早退する日が増えているな、とは思っていた。片桐さん本人はいつも飄々として、全くそういうことを話さないから。そんなに深刻な状態なのだとは思っていなかった。
「……わかりました」
小林くんの硬い声とともに、私たちは各々仕事の采配を考えながら自分の席に戻った。
月曜日恒例の、土日明けの大量の書類と格闘していると、あっという間に12時。田邉部長に促され、一旦自宅に戻る。ダイヤモンドのイヤリングを外し、喪服に着替えた。
「……キリスト教式の場合の香典って、確か御花料って書くのよね?」
仏式のお葬式は何度も参列した経験があるけれど、キリスト教式のお葬式は初めてだ。粗相がないように、スマホで軽く調べてから会場となった聖愛光教会に向かう。
教会の入り口の受付で記帳を終えると、3ヶ月ぶりに見た琥珀色の瞳と視線が交差した。
「……知香ちゃん?」
その琥珀色の瞳が驚きで見開かれた。私も驚きのあまりあんぐりと口を開き、はっと我に帰る。
「マスター!」
初対面の時は50代くらいの見た目だったけれど、今は40代前半くらいに見える。ベレー帽が無いだけでこんなに雰囲気が変わるのか。白髪混じりの髪が、ふわりと吹いた風で揺れた。
マスターが几帳面そうな字で『池野和宏』と書き込んだのを横目に、お名前はかずひろ、と読むのかしら、とぼんやり考えた。
「知香ちゃんがどうしてここに?」
琥珀色の瞳がじっと私を見つめて、行こうか、と、教会の中に促された。赤い絨毯が敷かれた身廊をふたりでゆっくり歩いて、左側の椅子に座った。
「えっと……片桐さん、私の同僚さん、なんです」
苦笑しながら紡いだ私の言葉に、マスターが驚いたように笑った。
「は、嘘だろ。まじか。……さとっちゃん、大激怒だったろ」
マスターのその言葉に。カレーを食べながら、激しい感情の渦を隠すこともせずに苛立ちを宿していたダークブラウンの瞳を思い出す。
「あはは…デスネ……」
乾いた笑いをマスターに向けながら、「マスターの方こそどうして?」と訊ねた。
「マサのお母さんも、体調が良い時はうちの店に来てくれていたんだ。だから俺も最期の挨拶に、な」
そう口にして、マスターが主祭壇に目を向けた。
「……マサも悪い奴じゃぁないんだ。苦労人ではあるんだよ」
ふぅ、と、マスターが大きくため息をついて言葉を続けた。
「親御さんは駆け落ちで結ばれたんだそうだ。それ故に、親戚筋とはほとんど絶縁している。兄弟もいない。唯一繋がりがある親戚が、母親の従兄弟の……知香ちゃんの会社の役員の人。マサの父親も既に天に召されている」
「え、じゃぁ……片桐さんのお身内って、もう、槻山取締役だけ…?」
「そういうことになるだろう」
驚きで息を飲んだ。親戚とも交流が無く、お父様も亡くなっていた、だなんて。ぐっと手に持ったハンカチを握りしめた。飄々と、私の名前を呼ぶ片桐さんの顔が思い浮かぶ。
(……嫌いな人だけど…生い立ちを聞くと…少しだけ同情する、な…)
ぼんやりと考えていたら、荘厳なオルガンの音が響いて、後方の扉が開いた。すっと背筋を伸ばして、視線をマスターから主祭壇に向ける。
牧師さんを先頭に、棺が運び込まれ、片桐さんがその後ろを歩いていた。その後ろを槻山取締役が歩いている。
片桐さんの俯いた横顔が明るい髪色で隠されている。その物哀しそうな横顔を、視界の端で捉えた。
(……いつも飄々とした片桐さんでも、流石にこんな場所では、哀しみを隠せるわけないよね…)
牧師さんによる聖書の朗読が始まり、粛々と葬儀が進む。献花の時間になり、マスターとともにゆっくりと身廊を歩いた。遺族席に向かって一礼し、ユリの花を献花台に捧げる。
遺族席には……片桐さんと、槻山取締役のふたりだけ。献花に並んだ面々は、ほとんどが極東商社の社員だった。
(……本当に、お身内がいらっしゃらないのだわ)
献花が終わると、喪主である片桐さんの挨拶が始まった。
「皆様、本日はお忙しい中を母、梢枝の告別式にご参列くださいまして、ありがとうございました。母は、3年半前に発病し、最先端の治療を受けるために1年前に日本に帰国しました。国立病院に入院し、毎日のようにイギリスの我が家に帰りたいと言っておりましたが、ついに主のみもとへと旅立ちました。思えば長い療養生活でございました。その間皆様からいただきましたお見舞いや励ましの言葉は故人にとりまして、どんなにかうれしかったことでございましょう。ここにあらためて、皆様から生前いただきましたご厚誼に対しまして、厚く御礼申しあげます」
淡々とした声で、ゆっくりと言葉を紡ぐ片桐さん。そのヘーゼル色の瞳が、深い哀しみで揺れていた。
(……智さんも、お母様を病で亡くされているのよね。どんなに辛かっただろう…)
私はこれまで幸いなことに近しい親族を亡くしたことがない。曾祖父母は私が小学生の頃に亡くなったが、祖父母は父方も母方も健在だし、まして両親も、今は元気だ。
(………智さんにも…片桐さんにも。何と声をかけていいのか、わからないや…)
自分の無力さを噛み締めながら、ぼんやりと席を立った。
2時間の葬儀が終わり、田邉部長から、今日はみなそのまま帰宅するようにと告げられて、私はいつものルートで自宅に向かった。
帰宅してソファに沈みこんで、ゆっくりと喪服を脱いだ。脱いだ喪服をハンガーにかけ、真珠のネックレスを外してケースに仕舞う。スマホを取り出すと、電池の残量がかなり減っていた。
「GPSアプリ、こんなに電池減っちゃうのね。モバイルバッテリーを買った方がいいかも」
誰に伝えるでもない言葉が、ひとりだけのリビングに消えていく。今は心の中が、言葉にできない感情でいっぱいだ。
全く自分には関係なかった人の死。それが悲しくなることがない、というのは、自分の心が空っぽのような気がして悲しくなる。
それが例え―――私が嫌いな人に関わる人であったとしても。
「……」
スマホを充電しながら、日記アプリを立ち上げた。朝書き込んだ日記に返信の書き込みがあった。時刻を確認すると、今より1時間くらい前の書き込み。
『今起きた。コーヒー淹れたのか。ドリップ、案外難しいだろ? 帰ったらコツ教えてやるから。今日も取引先と交渉だ。通訳は付けてるけど、俺自身が営業だから通訳通してじゃない会話したいって思った。帰ったらちょっと勉強するわ』
その書き込みに、ふっと笑みが漏れた。本当に、この人は貪欲なほど知識を欲しがる人だ。こういう時に、身体の芯まで営業の人なんだなぁ、と実感する。今の時間はきっと、取引先と交渉中なんだろう。交渉が上手くいくといいね、という書き出しで返信を打ち込んだ。
『あのね。片桐さんの、お母さんが亡くなって。今日はお葬式に参列してきたよ』
帰り際にマスターから「さとっちゃんは元気か?」と声をかけられたことを思い出して、その旨を付け加える。
『マスターも参列なさっていて、智さんのこと心配されていたよ』
そこまで書いて、少し逡巡した。
『今……自分の気持ちが上手く表現出来ない。自分の感情がどこにあるのか、どうしたいのか、何が悲しいのか、悲しくないのか、それすら自分でもわからない状態なの。こうして言葉にするのが合ってるのかもわからないけど、少し聞いてほしいから。お仕事で忙しいのに、ごめんね。参列して、智さんも、お母様を亡くされていたなって思い出したの。智さんは普段お母様の話をしないでしょ?だから、私が無意識に智さんの傷に触れていたら、申し訳ないなって思った。思うことがあったら直ぐに言ってくれていいからね』
そう書いて、こう締めくくった。
『関係ない人の死に引きずられすぎだね。ごめん。でも、なんか、モヤモヤするの』
そう書き込んで、3ヶ月前に、三木ちゃんのお祖母様のお通夜に参列したことを思い出した。
(……あの時は、こんな暗い気持ちにならなかったのに。どうしてだろう)
そうして。ふと、思い出した。あの時は……智さんがそばにいてくれたから。
だから……こんなに、哀しくならなかったんだ。
智さんの存在が、どれだけ私を救ってくれているのかを実感して。
「……会いたい」
素直に、そう思った。
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