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(第二部)第五章 君に贈る花束
03 光と闇の境界線
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「ひょええーー。世界樹って大きいですぅ」
「初めてじゃないだろ。今更、何を言ってるんだよ」
ソフィーは、世界樹を見上げると感嘆の吐息をこぼした。
根本にいるのかと思ったら世界樹の枝にいるらしい。
枝が太すぎて家が建つくらい広く、すぐに枝の上にいると気付かなかった。
「ここは一番下の方の枝だよ」
涼しい顔で樹が言う。ソフィーは苔むした地面が途切れるところまで歩いて、下を見て息を呑んだ。地上が遠すぎて怖い。見なかったことにしたい。
樹は平気な顔をしている。
なんでも精霊になってからは高い所が平気になってしまったのだとか。
飄々とした樹の背中には八枚の光の翅が輝いている。
彼はこの世界樹を本体とする最高位の精霊なのだ。
先ほどから周囲を鳥や獣、小さな精霊が通り過ぎるが、特別騒いだりせずに、樹の存在を自然の一部であるかのように受け入れている。
「あ、そうだ! 私達、王様と戦ってましたよね? あの後どうなったんですか?」
「ソフィーにしては良い質問だ」
適当な段差に腰かけて樹はニヤニヤ笑う。
なんだか楽しそうだ。
「あの時、僕はトカゲの尻尾切りみたいに、力の一部だけを残して世界樹へ転移したんだ。きっとカノン王は僕を魔晶石に封じたと浮かれているだろうな。死の精霊エルルは気付くかもしれないが、僕を退けたのは事実だから良い気分になっているだろう。英司達は僕とソフィーが死んだと思っているかもな」
「えっ、エイジさん達に、私達が生きてるって伝えなくて良いんですか?」
「敵をだますには味方から」
樹は少しばかり腹黒い笑顔を見せる。
ソフィーは何も知らない英司達に同情した。
「阿呆王と死の精霊はエターニアに向かった。と、言うことは今魔界はノーマークだ。今の内に魔界へ行こう。魔界へ行って、回収しなきゃいけない馬鹿が一匹いる」
「魔界へ? ここからですか?」
「ソフィー、忘れたのかい。前回、どうやって世界樹に来たか」
樹にそう言われて、ソフィーは記憶を呼び起こす。
確か前回、魔王城の地下にあるゲートから、世界樹の空間に来て、勇者達と共に薔薇の魔王と戦ったのだった。
「あ!」
「そうだよ。世界樹は魔王城と直通だ。ここが一番の近道なんだよ」
一緒に行こうか、と言って樹はソフィーの腕を引く。
そのまま光の翅を広げて枝からジャンプ。
「ひゃああああああああーーー!」
「あははっ」
かなりの高さを飛び降りることになったソフィーは涙目で絶叫する。
樹はわざと速度を緩めていないらしい。
ジェットコースターに乗ったような感覚がソフィーを襲った。
地上に着くとソフィーはぜーはーと荒い息を吐く。
「死ぬかと思いました……」
「何言ってるんだ。楽しいのはここからだろ」
平然とした樹はデンジャラスな気配を漂わせている。
ソフィーは頬を引きつらせた。
一方、エターニアに戻ったカノン王は、死の精霊エルルと共に、神を封じる準備に取り掛かっていた。
まずは天空神を召喚する必要がある。
神殿にある祭壇は、天空神と交信するのに都合が良かった。
カノン王は神殿に向かう。
突然、神殿に押し入った王に、エターニアの神官はびっくりして抵抗したが、カノン王は彼等を手際よく強引に神殿から追い出した。
「ねえ、キヨハル」
「なんだ」
「私を封じた魔晶石も欲しい?」
死の精霊エルルは空中に浮かんで頬杖を付きながら、床に魔法陣を描く王に話しかける。
「闇の最高位の精霊を封じた魔晶石か。確かに欲しいが……」
「?」
「君は石に閉じ込めるにはあまりにも美しすぎる」
王は顔を上げると、エルルを熱のこもった視線で見つめた。
「この際、魔王に味方したっていいじゃないか。だいたい元いた世界の物語だって、最近は勧善懲悪ものは流行らないんだ。私は別に王や勇者でなくても、楽しければ何でもいい。私が魔王で、君が女王で、世界を支配するというのも面白い」
異世界人、日本から来たカノウキヨハルは、清々しいほどに楽天的だった。
魔王が主人公の物語もあると言って笑う。
エルルも笑った。
彼女は内心、異世界の人間であるカノン王を軽蔑していたが、それを表に出すことはしない。
「そうね。貴方と私で、共に世界を支配しましょう!」
やがて神を封じるための魔法陣の用意が整う。
魔法陣には、昨夜に手に入れた光属性の最高位精霊の力が込められた魔晶石の力も使う。
後は天空神ラフテルを呼び出して罠に掛けるだけだ。
「初めてじゃないだろ。今更、何を言ってるんだよ」
ソフィーは、世界樹を見上げると感嘆の吐息をこぼした。
根本にいるのかと思ったら世界樹の枝にいるらしい。
枝が太すぎて家が建つくらい広く、すぐに枝の上にいると気付かなかった。
「ここは一番下の方の枝だよ」
涼しい顔で樹が言う。ソフィーは苔むした地面が途切れるところまで歩いて、下を見て息を呑んだ。地上が遠すぎて怖い。見なかったことにしたい。
樹は平気な顔をしている。
なんでも精霊になってからは高い所が平気になってしまったのだとか。
飄々とした樹の背中には八枚の光の翅が輝いている。
彼はこの世界樹を本体とする最高位の精霊なのだ。
先ほどから周囲を鳥や獣、小さな精霊が通り過ぎるが、特別騒いだりせずに、樹の存在を自然の一部であるかのように受け入れている。
「あ、そうだ! 私達、王様と戦ってましたよね? あの後どうなったんですか?」
「ソフィーにしては良い質問だ」
適当な段差に腰かけて樹はニヤニヤ笑う。
なんだか楽しそうだ。
「あの時、僕はトカゲの尻尾切りみたいに、力の一部だけを残して世界樹へ転移したんだ。きっとカノン王は僕を魔晶石に封じたと浮かれているだろうな。死の精霊エルルは気付くかもしれないが、僕を退けたのは事実だから良い気分になっているだろう。英司達は僕とソフィーが死んだと思っているかもな」
「えっ、エイジさん達に、私達が生きてるって伝えなくて良いんですか?」
「敵をだますには味方から」
樹は少しばかり腹黒い笑顔を見せる。
ソフィーは何も知らない英司達に同情した。
「阿呆王と死の精霊はエターニアに向かった。と、言うことは今魔界はノーマークだ。今の内に魔界へ行こう。魔界へ行って、回収しなきゃいけない馬鹿が一匹いる」
「魔界へ? ここからですか?」
「ソフィー、忘れたのかい。前回、どうやって世界樹に来たか」
樹にそう言われて、ソフィーは記憶を呼び起こす。
確か前回、魔王城の地下にあるゲートから、世界樹の空間に来て、勇者達と共に薔薇の魔王と戦ったのだった。
「あ!」
「そうだよ。世界樹は魔王城と直通だ。ここが一番の近道なんだよ」
一緒に行こうか、と言って樹はソフィーの腕を引く。
そのまま光の翅を広げて枝からジャンプ。
「ひゃああああああああーーー!」
「あははっ」
かなりの高さを飛び降りることになったソフィーは涙目で絶叫する。
樹はわざと速度を緩めていないらしい。
ジェットコースターに乗ったような感覚がソフィーを襲った。
地上に着くとソフィーはぜーはーと荒い息を吐く。
「死ぬかと思いました……」
「何言ってるんだ。楽しいのはここからだろ」
平然とした樹はデンジャラスな気配を漂わせている。
ソフィーは頬を引きつらせた。
一方、エターニアに戻ったカノン王は、死の精霊エルルと共に、神を封じる準備に取り掛かっていた。
まずは天空神を召喚する必要がある。
神殿にある祭壇は、天空神と交信するのに都合が良かった。
カノン王は神殿に向かう。
突然、神殿に押し入った王に、エターニアの神官はびっくりして抵抗したが、カノン王は彼等を手際よく強引に神殿から追い出した。
「ねえ、キヨハル」
「なんだ」
「私を封じた魔晶石も欲しい?」
死の精霊エルルは空中に浮かんで頬杖を付きながら、床に魔法陣を描く王に話しかける。
「闇の最高位の精霊を封じた魔晶石か。確かに欲しいが……」
「?」
「君は石に閉じ込めるにはあまりにも美しすぎる」
王は顔を上げると、エルルを熱のこもった視線で見つめた。
「この際、魔王に味方したっていいじゃないか。だいたい元いた世界の物語だって、最近は勧善懲悪ものは流行らないんだ。私は別に王や勇者でなくても、楽しければ何でもいい。私が魔王で、君が女王で、世界を支配するというのも面白い」
異世界人、日本から来たカノウキヨハルは、清々しいほどに楽天的だった。
魔王が主人公の物語もあると言って笑う。
エルルも笑った。
彼女は内心、異世界の人間であるカノン王を軽蔑していたが、それを表に出すことはしない。
「そうね。貴方と私で、共に世界を支配しましょう!」
やがて神を封じるための魔法陣の用意が整う。
魔法陣には、昨夜に手に入れた光属性の最高位精霊の力が込められた魔晶石の力も使う。
後は天空神ラフテルを呼び出して罠に掛けるだけだ。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
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