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(第二部)第五章 君に贈る花束
05 本当の敵は
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エターニアの神殿では、天空神を封じる準備が整いつつあった。
カノン王は祭壇で天空神に呼び掛ける。
「天空神ラフテルよ」
呼び掛けて少しすると、祭壇に光が満ちた。
神殿の床が雲に、天井が空へと変化する。
金髪に金の瞳の光輪を背負った少年が、何もない空中に現れた。
彼が天空神ラフテルだ。
「……何の用だい、カノウキヨハル。生産チートが欲しいという願いなら、ステータスシステムをこの世界に組み込むのは面倒なので断ったと思うが」
「今日は別件だ」
カノン王はニヤリと笑った。
一見、この空間は元いた神殿と別な場所に見えるが、実は神殿に重なった異空間だ。つまり足元には設置した魔法陣がある。
「自分が神よりも強くなったか試したくてね……」
「異世界人らしい傲慢さだ」
ラフテルは眉をひそめる。
足元の魔法陣は既に起動を始めている。後は合図をするだけだ。
カノン王はパチリと指を鳴らした。
途端に浮かび上がる紫の光で描かれた輪。複雑な紋様が入ったそれは、立体形に立ち上がり天空神ラフテルを囲みこむ。
「これは……神たる私を魔晶石に封じようとするとは!」
「世界一レアなアイテムが欲しくてね」
「なるほど、私は人間の強欲さを見誤ったという訳か。しかし、その傲慢さがお前を滅ぼすだろう」
魔法陣の中で天空神ラフテルは動かない。
いや、動けないのだ。
魔法陣には、光属性の最高位の精霊と、闇の属性の最高位の精霊の力が組み込まれている。さしもの天空神とはいえ、最高位の精霊二体の力は防げない。
魔法陣は小さくなり天空神を飲み込んだ。
後に残ったのは金色の正方形の石。
「……なんだ、他愛もないな。最後に苦し紛れに何か言ってたが、負け犬の遠吠えだろ」
カノン王は金色の石を拾い上げる。
神の作った異空間は解けて、彼は神殿に戻っていた。
待っていた死の精霊エルルが寄ってくる。
「それが天空神を封じた魔晶石? 私にも見せて」
頼まれてカノン王は「いいぞ」と気軽に彼女に金色の石を渡した。
白い髪の少女は金色の石を撫でる。
「……イツキみたいに逃げてはいないようね。さすがに最高位二体の力を付与した魔法陣は、逃げられないか」
「?」
「ふふふ。ありがとう、キヨハル。これは私がもらうわ」
エルルはにっこり微笑む。
「ちょっと待て、お前にやるとは言ってない……」
文句を言う男の足元で、新たな魔法陣が光り始める。
カノン王はぎょっとした。
「こ、これは何だ?!」
「あらキヨハル、貴方の世界には因果応報という言葉があるそうだけど、自分が封じてるのに封じられる覚悟は持っていなかったの?」
「何故だ! 俺は別にお前の邪魔はしてない……」
さすがに顔色を変えるカノン王の前で、死の精霊は笑った。
「人間は存在自体が邪魔なのよ!」
魔法陣の円が小さくなる。
中央に立ったカノン王は絶叫して身をよじった。
しかし無情にも魔法陣は彼を飲み込んでいく。
「嫌だっ! 石になんかなりたくないーー」
最後の声と共に、神殿の床に拳より小さい紫水晶が転がる。
床に立ったエルルはその石を拾って、そっと手のひらで転がした。
「可哀想なキヨハル……魔晶石の技術はもともと魔族のもの。世界の始まりから存在する、古岩の精霊である私が生み出したものなのよ。その私の方が魔晶石を使いこなせるのは当然じゃない」
エルルは用が済んだとばかり紫水晶を放り出す。
カランと音がして、紫水晶は神殿の床に転がった。
彼女は金色の石を手に持ってかかげる。
「ああ、何百年待ったことか。我が同胞を奪ったにっくき天空神を封じることができた……さあ、この神の力を使って、精霊の楽園を作りましょう」
少女の手の中で金色の石が光り出す。
八枚の光の翅を広げ、死の精霊エルルは宣言した。
「精霊の楽園……邪魔な人間や神がいない世界を!」
エターニアの王都で、神官たちは右往左往していた。
突然、カノン王が神殿を占拠し、神官たちを神殿から追い出したのだ。
神官の一人が異変に気付き、空を見上げる。
「あれは何だ?!」
神殿の上空に黒雲が巻き起こる。
黒雲は範囲を広げてエターニアの王都を飲み込んでいく。
どす黒い雨が王都に降った。
人間の頭上に降ってきた水滴は大きな光の網に変化して、人間を飲み込んだ。光の網は一瞬で小さくなって、人間の姿が消え代わりに宝石が地面に落ちる。
「うわあああああっ」
人々は悲鳴を上げて逃げ惑い、屋根の下に駆け込む。
しかし、屋内にいても魔法の雨は壁をすり抜けて追ってくる。
彼等は抵抗する術なく次々と物言わぬ石になる。
黒雲が広がるエターニアの都は、一時間も掛からずに静かになった。
カノン王は祭壇で天空神に呼び掛ける。
「天空神ラフテルよ」
呼び掛けて少しすると、祭壇に光が満ちた。
神殿の床が雲に、天井が空へと変化する。
金髪に金の瞳の光輪を背負った少年が、何もない空中に現れた。
彼が天空神ラフテルだ。
「……何の用だい、カノウキヨハル。生産チートが欲しいという願いなら、ステータスシステムをこの世界に組み込むのは面倒なので断ったと思うが」
「今日は別件だ」
カノン王はニヤリと笑った。
一見、この空間は元いた神殿と別な場所に見えるが、実は神殿に重なった異空間だ。つまり足元には設置した魔法陣がある。
「自分が神よりも強くなったか試したくてね……」
「異世界人らしい傲慢さだ」
ラフテルは眉をひそめる。
足元の魔法陣は既に起動を始めている。後は合図をするだけだ。
カノン王はパチリと指を鳴らした。
途端に浮かび上がる紫の光で描かれた輪。複雑な紋様が入ったそれは、立体形に立ち上がり天空神ラフテルを囲みこむ。
「これは……神たる私を魔晶石に封じようとするとは!」
「世界一レアなアイテムが欲しくてね」
「なるほど、私は人間の強欲さを見誤ったという訳か。しかし、その傲慢さがお前を滅ぼすだろう」
魔法陣の中で天空神ラフテルは動かない。
いや、動けないのだ。
魔法陣には、光属性の最高位の精霊と、闇の属性の最高位の精霊の力が組み込まれている。さしもの天空神とはいえ、最高位の精霊二体の力は防げない。
魔法陣は小さくなり天空神を飲み込んだ。
後に残ったのは金色の正方形の石。
「……なんだ、他愛もないな。最後に苦し紛れに何か言ってたが、負け犬の遠吠えだろ」
カノン王は金色の石を拾い上げる。
神の作った異空間は解けて、彼は神殿に戻っていた。
待っていた死の精霊エルルが寄ってくる。
「それが天空神を封じた魔晶石? 私にも見せて」
頼まれてカノン王は「いいぞ」と気軽に彼女に金色の石を渡した。
白い髪の少女は金色の石を撫でる。
「……イツキみたいに逃げてはいないようね。さすがに最高位二体の力を付与した魔法陣は、逃げられないか」
「?」
「ふふふ。ありがとう、キヨハル。これは私がもらうわ」
エルルはにっこり微笑む。
「ちょっと待て、お前にやるとは言ってない……」
文句を言う男の足元で、新たな魔法陣が光り始める。
カノン王はぎょっとした。
「こ、これは何だ?!」
「あらキヨハル、貴方の世界には因果応報という言葉があるそうだけど、自分が封じてるのに封じられる覚悟は持っていなかったの?」
「何故だ! 俺は別にお前の邪魔はしてない……」
さすがに顔色を変えるカノン王の前で、死の精霊は笑った。
「人間は存在自体が邪魔なのよ!」
魔法陣の円が小さくなる。
中央に立ったカノン王は絶叫して身をよじった。
しかし無情にも魔法陣は彼を飲み込んでいく。
「嫌だっ! 石になんかなりたくないーー」
最後の声と共に、神殿の床に拳より小さい紫水晶が転がる。
床に立ったエルルはその石を拾って、そっと手のひらで転がした。
「可哀想なキヨハル……魔晶石の技術はもともと魔族のもの。世界の始まりから存在する、古岩の精霊である私が生み出したものなのよ。その私の方が魔晶石を使いこなせるのは当然じゃない」
エルルは用が済んだとばかり紫水晶を放り出す。
カランと音がして、紫水晶は神殿の床に転がった。
彼女は金色の石を手に持ってかかげる。
「ああ、何百年待ったことか。我が同胞を奪ったにっくき天空神を封じることができた……さあ、この神の力を使って、精霊の楽園を作りましょう」
少女の手の中で金色の石が光り出す。
八枚の光の翅を広げ、死の精霊エルルは宣言した。
「精霊の楽園……邪魔な人間や神がいない世界を!」
エターニアの王都で、神官たちは右往左往していた。
突然、カノン王が神殿を占拠し、神官たちを神殿から追い出したのだ。
神官の一人が異変に気付き、空を見上げる。
「あれは何だ?!」
神殿の上空に黒雲が巻き起こる。
黒雲は範囲を広げてエターニアの王都を飲み込んでいく。
どす黒い雨が王都に降った。
人間の頭上に降ってきた水滴は大きな光の網に変化して、人間を飲み込んだ。光の網は一瞬で小さくなって、人間の姿が消え代わりに宝石が地面に落ちる。
「うわあああああっ」
人々は悲鳴を上げて逃げ惑い、屋根の下に駆け込む。
しかし、屋内にいても魔法の雨は壁をすり抜けて追ってくる。
彼等は抵抗する術なく次々と物言わぬ石になる。
黒雲が広がるエターニアの都は、一時間も掛からずに静かになった。
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