追放からはじまる異世界終末キャンプライフ

第一章

第二十八話 焔の力とキャンプ飯

　焔の杯を手に入れた直後、ぼくたち一行は、杯の効果を詳しく知るために試しに使ってみることにした。キャンプを張った夜、焚き火のそばに座って、ぼくは焔の杯を取り出した。

「さあ、みんなでこの焔の杯の効果を確かめてみよう」

　リリア、アルフ、フェンも興味津々で焔の杯を見つめている。ぼくは杯に水を注ぎ、その水が焔の杯の力でどう変わるのかを観察した。

　すると、杯の中の水が徐々に赤く変化し、ほんのりと温かさを感じるようになった。その色はまるで炎を思わせるかのようだった。

「飲んでみよう」

「大丈夫なの？」

　リリアが心配そうにぼくの顔をうかがう。

「大丈夫だよ。神器って言うぐらいだし」

　それに……ぼくは人間やモンスターだけでなく、アイテムのステータスも確認することができる。

　それによれば……。

「この水には、炎に関するスキルや魔法が強化される力が宿っているみたいだ」

　ごくごくと杯のなかの水を飲み干し、ぼくは炎の魔法を試しに詠唱してみた。

「炎の魔法が以前よりも強力になってる！」

　フェンの火の息吹のスキルも強化されていることを確認した。

　ぼくはその効果を確認し、心が躍った。

「この焔の杯は、炎の力を操る者たちにとって、大いに役立つだろうね。」

　焔の杯の力を確かめた後、ぼくたちはその夜のキャンプ飯に、炎属性のモンスターを使った料理を作ることにした。ぼく焔の杯に入れた赤く変化した水を使い、その炎の力を最大限に引き出す工夫を凝らした。

　まずは炎属性のモンスター、ブレイズワイバーンの肉を調達。炎の魔法を用いて、肉の表面に香ばしい焼き目をつけた。その後、アリシアは焔の杯の水とブレイズワイバーンの肉を煮込むことで、炎の力が染み込んだ煮込み料理を作り上げた。

　アルフはサイドディッシュとして、炎属性の野菜、ファイアカボチャを使ったスープを作成。焔の杯の水でファイアカボチャを煮込むことで、さらに炎の力が強化されたスープが完成した。

　最後にフェンも参加し、火の息吹を使って焼いた炎の味付けが施されたポテトを作った。

　焔の杯を使った炎属性の料理がそろったところで、ぼくたちは焚き火を囲んで夕食を楽しみはじめた。

　炎の力で強化された料理は、体を芯から温めてくれるような優れた効果があり、冷え切った体に活力が戻ってくるのが実感できた。

　最初に、炎の力が染み込んだブレイズワイバーンの煮込み料理を口に運んだ瞬間、ぼくたちの舌の上で炎の力が弾け、口の中がぽかぽかと温かくなった。

「これはすごい！肉が柔らかくて、炎の力がじわじわと広がっていく。こんな料理は初めてだね！それに、すごくおいしい！！」

　リリアが興奮気味に言った。

　次にアルフが作ったファイアカボチャのスープを飲んでみると、スープが喉を通り抜けるたびに、身体の中心から熱が伝わり、身体が温まっていくのが感じられた。フェンも興味津々でスープを舐めてみて、満足そうに頷いた。

「このスープも、本当に美味しい！体が温まって元気が湧いてくる気がする」

　アルフがニッコリと笑った。

　最後にフェンが作った焔の杯の力を感じる焼きポテトを食べると、外はカリッとしていて中はふんわりと柔らかく、炎の味付けが絶妙に効いていた。ポテトをかじりながら、ぼくたちはその美味しさにうなってしまった。焔の杯の力を感じるポテトは、いつもの焼きポテトとは一味違った美味しさだ。

「フェン、これはすごく美味しいよ。君も料理上手だね！」

　ぼくがフェンに感謝の言葉を述べると、フェンはうれしそうに尾を振った。

　みんなはおいしい料理を堪能しながら、今後の冒険での焔の杯の活用法を語り合い、さらなる強化を目指すことを誓った。