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相葉悠一 編

第13話「オレの昼食」

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 四時間目が終ってすぐに、オレは昼食確保のために、購買部にダッシュした。理科室は購買部から遠いのだ。が、その頑張りが裏目に出て、廊下の突き当たりで、英語の久保田ババアと衝突してしまった。

 そのまま廊下でこってり絞られた。こんなことをしている場合じゃないのにっ。早くしないとオレの昼食が、他の誰かのものになってしまうっ。
  
***
  
 購買部に着いたころには、案の定、目当ての弁当も調理パンも菓子パンも、なにも残っておらず、空腹がさらにオレを追い詰めた。

 絶望だ。
 
 分けてくれる、気前のいい男友達が思い浮かばない。やつらが、昼飯を買いっぱぐれたオレを、あざ笑う様子がありありと目に浮かぶ。

 クラスの女は……聞く気になれなかった。女どもはメシを食うとき、こぞってつるんでる。
 
 あの輪に、話しかける勇気などない。

 そんな勇気があったら、今年の夏休みには脱童貞だっただろう。せめて、飲み物で腹を膨らまそうと、オレは自動販売機に小銭を入れた。
  
 なににしよう。

 やっぱりここは、腹の膨れそうな炭酸か。いやせめて、固形物の入ったコーンポタージュ? 待て待て。血糖値を上げるために、甘い飲み物がいいかもしれない。しかし、眠気もある。ここはやはり、カフェインたっぷりのブラックコーヒーか。あ、でもカフェインの含有量って、紅茶の方が多いって聞いたことがある。

 ううん。どうすべきか。
  
「早くしてくれない?」

 最近よく聞く声だった。

「渡辺っ」
「飲み物一つで、優柔不断ね」

 むっ。渡辺、おまえはオレの気持ちを逆撫でる天才だよ。

「うるせーよ。ちょっと待ってろっ」

 オレは自販機も見ずに、ボタンを押してしまった。出て来たのは、イチゴミルクだった。

 そんなの男子も飲むのね、はいどいてっと、どうでもよさげに渡辺は、自販機に小銭を入れた。ごろんと爽健美茶が出て来たと同時に、オレの腹の音が鳴った。
 
 渡辺は、ぎょっとこちらに振り向いた。その顔が、踏みつぶされたカエルのようで、少し可笑しかった。
 

つづく
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