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挙式のあとで
第十話
しおりを挟むこれは余談。
どうして結婚祝いの品に雑貨を選ばず、ぼくのコートを基睦さんは買ったのか。それは後で伊織さんが教えてくれた。
雑貨など記念になる物を選べば、ぼくだけでなく伊織さんにも使われてしまう。
それだけは避けたかった基睦さんは、思案の末ぼくが身につける物を贈ろうとした。貴金属や時計などの類は、伊織さんがつき返してしまうかも知れない。
そこで、それほど高価ではなく、けれどぼくだけがつかえる衣類に目をつけた。しかもコートであれば、自分がぼくを温めている気分に浸れる、そう伊織さんは表現する。
けれどいくらなんでも、それは考えすぎではないか――と言い切れないのが怖い。
基睦さんがぼくにと選んでくれたのは、キャメルのダッフルコート。ダークブラウンのロープに、濃い瑠璃色のトグルがアクセントになった、とてもお洒落なものだ。
それを忌々しそうに眺めながら、伊織さんがひと言「返品してもいいからね」だって。その表情と口ぶりが可笑しくて、少しだけ笑ってしまった。
ありがとうございます。基睦さん――――――
挙式のあとに / END
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