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12 そして明かされた事実
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「――というわけで、私とパーティに行ってくれませんか?」
「……………………はぃい!?」
目の前の実に麗しい男が告げた一言に、私は素っ頓狂な声を上げた。
いや、ちょっと待って欲しい。
何が「というわけで」になるのか。
それ以前に前後の繋がりが無さすぎる。何故パーティに招待されなければならないのか。そしてなぜ用意周到に手紙が用意されているのか。
ツッコミどころが多すぎて何処から切り出せばいいのか言葉に迷う私に、目の前の男――ジェインスはにっこりと微笑みを絶やさずにさらに爆弾を落とす。
「まぁ、これまでのお話は全てついでで、こちらが本題なのですが」
「こっちが本題!?」
もう何が何やら訳が分からない。
この魔術師団長の真意が掴めなくてさらに困惑が増すばかり。
さっきまで真面目に話をしていたではないか。麻薬がどうとか。怪しい動きをしている香夜会とか。陛下の実質的な王命まで出ているというのに、こちらが本題じゃなかったのか。
頭がこんがらがって思考がまとまらなくなった私に、ジェインスはただ微笑むばかり。
しかしその実に面白くて仕方ないといった様子が、私に冷静さの欠片を与えた。
そうだった。この男はさっきから私の反応を楽しんでいる節がある。この混乱状態も、彼の手の平で転がされている可能性がある。その証拠に彼はとても楽しそうにこちらを見ているもの。
――冷静になるのよ。私。
居住まいを但し、コホンとわざとらしく咳をして、私はジェインスに向き直った。
「私をからかって遊んでいるのですか? 結局何が目的なんです?」
警戒心を剥き出しにして黄金の瞳をジトリと細めて問えば、彼は同じ色の瞳を嬉しそうに細めて、
「貴女にもう一度お会いしたかったのです」
そんなことを言い出した。先程とは打って変わって、からかいが微塵も感じられない物凄くストレートな言葉と真剣な視線に、思わず胸が高鳴った。
密かに胸を抑える私に構わず、ジェインスはこちらを真っ直ぐに見つめると、ジリジリと詰め寄ってきた。
「昨日の夜会でお会いした時から、ずっと貴女のことが頭から離れません。あの一夜の出来事を忘れられないのです。髪と眼の色を変え、仮面で顔を隠していらしたが、貴女がかのフェイルリーナ嬢であったことはすぐ分かりました。だからこうして会いに来たのですよ」
言葉を紡がれる間にもジリジリと彼は迫ってきていて、気づけば世に二つとない絶世の美貌が目の前に迫っていた。真剣そのものの黄金の瞳に至近距離から見つめられ、心臓の鼓動がとてつもなくうるさい。
――ち、近い! これはダメええ!!
悲しいことに異性に迫られたことのない私はただ乙女のように頬を染めて、ジェインスから必死に離れようとした。しかし彼に素早く手を掴まれて、逃げる機会を失った。
高鳴る胸を抑えてこの状況に耐えきれず目を瞑った私は、次の瞬間大いに驚くことになる。
「――あの日、貴女は初めてだったのでしょう? ですから私は最後まで貴女に触れてはいません。貴女は未だ生娘のままだ」
「えっ……?」
――今なんて言いました?
ぱちくり。
瞬きをして、ジェインスと目が合う。
彼は、私と目が合って嬉しそうにはにかむと、再び同じ文言を繰り返した。
まるで私を安心させるように、肩に手を置いて。
「ですからあの日、私は貴女に最後まではしていません。貴女はまだ処女を失っていないのですよ」
だから安心してください。
そうにこやかに告げるジェインスを目の前に、私は自分の計画が失敗したことを悟った。
つまり――私はまだ、処女のままなのだと。
「……………………はぃい!?」
目の前の実に麗しい男が告げた一言に、私は素っ頓狂な声を上げた。
いや、ちょっと待って欲しい。
何が「というわけで」になるのか。
それ以前に前後の繋がりが無さすぎる。何故パーティに招待されなければならないのか。そしてなぜ用意周到に手紙が用意されているのか。
ツッコミどころが多すぎて何処から切り出せばいいのか言葉に迷う私に、目の前の男――ジェインスはにっこりと微笑みを絶やさずにさらに爆弾を落とす。
「まぁ、これまでのお話は全てついでで、こちらが本題なのですが」
「こっちが本題!?」
もう何が何やら訳が分からない。
この魔術師団長の真意が掴めなくてさらに困惑が増すばかり。
さっきまで真面目に話をしていたではないか。麻薬がどうとか。怪しい動きをしている香夜会とか。陛下の実質的な王命まで出ているというのに、こちらが本題じゃなかったのか。
頭がこんがらがって思考がまとまらなくなった私に、ジェインスはただ微笑むばかり。
しかしその実に面白くて仕方ないといった様子が、私に冷静さの欠片を与えた。
そうだった。この男はさっきから私の反応を楽しんでいる節がある。この混乱状態も、彼の手の平で転がされている可能性がある。その証拠に彼はとても楽しそうにこちらを見ているもの。
――冷静になるのよ。私。
居住まいを但し、コホンとわざとらしく咳をして、私はジェインスに向き直った。
「私をからかって遊んでいるのですか? 結局何が目的なんです?」
警戒心を剥き出しにして黄金の瞳をジトリと細めて問えば、彼は同じ色の瞳を嬉しそうに細めて、
「貴女にもう一度お会いしたかったのです」
そんなことを言い出した。先程とは打って変わって、からかいが微塵も感じられない物凄くストレートな言葉と真剣な視線に、思わず胸が高鳴った。
密かに胸を抑える私に構わず、ジェインスはこちらを真っ直ぐに見つめると、ジリジリと詰め寄ってきた。
「昨日の夜会でお会いした時から、ずっと貴女のことが頭から離れません。あの一夜の出来事を忘れられないのです。髪と眼の色を変え、仮面で顔を隠していらしたが、貴女がかのフェイルリーナ嬢であったことはすぐ分かりました。だからこうして会いに来たのですよ」
言葉を紡がれる間にもジリジリと彼は迫ってきていて、気づけば世に二つとない絶世の美貌が目の前に迫っていた。真剣そのものの黄金の瞳に至近距離から見つめられ、心臓の鼓動がとてつもなくうるさい。
――ち、近い! これはダメええ!!
悲しいことに異性に迫られたことのない私はただ乙女のように頬を染めて、ジェインスから必死に離れようとした。しかし彼に素早く手を掴まれて、逃げる機会を失った。
高鳴る胸を抑えてこの状況に耐えきれず目を瞑った私は、次の瞬間大いに驚くことになる。
「――あの日、貴女は初めてだったのでしょう? ですから私は最後まで貴女に触れてはいません。貴女は未だ生娘のままだ」
「えっ……?」
――今なんて言いました?
ぱちくり。
瞬きをして、ジェインスと目が合う。
彼は、私と目が合って嬉しそうにはにかむと、再び同じ文言を繰り返した。
まるで私を安心させるように、肩に手を置いて。
「ですからあの日、私は貴女に最後まではしていません。貴女はまだ処女を失っていないのですよ」
だから安心してください。
そうにこやかに告げるジェインスを目の前に、私は自分の計画が失敗したことを悟った。
つまり――私はまだ、処女のままなのだと。
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