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6. ストーリー強制力
しおりを挟むなんやかんやで聖女が身分を隠して転入してきてからというもの、リューイの行動はストーリー強制力に翻弄され続けていた。
「ゲームのストーリー強制力、エグすぎない? さすがの僕も泣いちゃいそう」
リューイはベッドで丸まりながら、弱音を吐いた。
学園卒業の十八歳までこれが続くのかと思うと、憂鬱を通り越して絶望しそうになる。
だって、リューイが何もないところで転べば手に持っていた本がびっくりするくらい吹っ飛んでいって、偶然にも階段下にいた聖女にあわやぶつかりそうになるのだ。
護衛役の騎士べイントンがとっさに聖女を守って回避してくれたけれども、謝る僕の言葉なんて耳に届いていないようで、すごい目で睨まれてしまった。
こうなったら物理的に距離を置こうとリューイが逃げれば、逃げた先で攻略者と一緒にいる聖女ルルンと鉢合わせるのだ。
イイ感じの雰囲気だったのに邪魔してごめんなさいという気持ちでいっぱいになる。
他にも、リューイが飲み物を手にすれば聖女の服にぶちまける。聖女の紛失物は何故だかリューイの荷物から出てくる。喋ったこともないのに、聖女の攻略対象者(男性)にリューイが横恋慕していると噂になる。
一体どういうことだろう。
こうなったらいっそ聖女と仲良くなろうと笑顔を作れば、聖女を嘲笑していただの、平民出を馬鹿にしていただの言われるのだ。
竜士も覚えている悪役令息エピソードが次々に襲いかかってきて、回避しようと悪戦苦闘するものの連戦連敗。
リューイは胃痛からますます痩せていき、目つきばかり鋭くなっていった。ただの心労なのだけども。
それでもふと鏡を見れば、鏡に映る不健康そうな顔は、たしかに前世でやり込んでいた『恋する聖女・ルクラント学園』に登場した悪役令息リューイそのものなのだ。
「本当に処刑コースもありうるかも……」
リューイは怖くなった。
それでもリューイが部屋に引きこもれば、何も悪くない侍女が責任を取らされるのだ。体調が悪いと訴えることも同様に、健康管理不足で侍女が罰せられる。
後でこっそり吐いてでも食事を取らなければ、シェフの責任問題になる。
リューイの出来ることなど限られていて、より慎重に学園生活を過ごすしかなかった。
そんなリューイを嘲笑うかのように、ストーリー強制力はゲームの終盤に向けてますます苛烈になっていった。
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